『HBR 2011年 06月号 マイケル E. ポーター 戦略と競争優位』

『ハーバード・ビジネス・レビュー 2011年 06月号』
ダイヤモンド社、2011/5/10、¥2,200(L)

ポーターの論文を集めた特集号。本号用に書き下ろされた論文はCSV(Creating Shared Value)についてで、これからはCSRではなくCSVの時代だ、というもの。それ以外は過去の論文で、まだ有効性はあるが、ITに関する1985の論文はかなり時代遅れな感じ。
ポーターの中核となる主張は、業務効果と戦略は違う、一貫した戦略を持て、ITは業務効果を改善するが戦略ポジションがしっかりしていれば脅威とならない、といった点に集約される。

●業務効果とは、類似の活動を競合他社より優れて実行することである。[略] 対照的に、戦略ポジショニングは、競合他社とは「異なる」活動を行う、あるいは類似の活動を「異なる方法で」行うことである。(p.62)

●競争戦略とは、他社と異なる存在になることである。あえて異なる活動を選択することで、価値を独自に組み合わせ、これを提供できる。(p.66)

☆異なる存在になるためには、自社の守備範囲となる顧客像をしっかりと持つことが重要。本誌ではサウスウェスト航空とイケアが戦略ポジショニングの例としてあげられ、それぞれがターゲットとする顧客像をしっかりつかんでいることが述べられている。

●この低価格のポジションは、顧客のセルフサービスに負うところが大きいが、その一方でイケアは、他社が提供しないサービスを提供している。その一つが店内の託児所で、遅くまで営業している。これらのサービスは、同社の顧客固有のニーズに応えたものである。彼ら彼女らはまだ若く、また裕福でもなく、しかも幼い子供を抱えている可能性が高く、生活のために働いているため、遅い時間に買い物をする必要がある。(p.69)

●戦略の本質とは、「何をやらないか」を選択することである。トレード・オフがなければ、選択する必要はなく、したがって戦略も無用である。(p.76)

☆トレード・オフがない場合は純粋に業務効果の勝負になる。

●成長を追求する中で、妥協し、一貫性が損なわれると、自社独自の製品や対象顧客によって気づいてきた競争優位が崩れてしまう。さまざまな方法を並行させて競争しようとすると、混乱を招き、組織内のモチベーションと基軸が失われる。(p.86)

●戦略は「何をすべきか」のみならず、これと同じくらい重要である「何をするべきでないか」を示す。実際、制約を設けることはリーダーの役割の一つである。どの顧客グループに向けて、どの製品を提供し、どのニーズに対応するかを決めるのが、戦略立案の基本である。しかし、それ以外の顧客やニーズには対応しない、ある種類の特徴またはサービスは不要であると決定することも戦略の基本である。それゆえ戦略には、明確な規律とコミュニケーションが要求される。(pp.86/59)

●業務効果と戦略は、明確に区別されなければならない。どちらも重要だが、そもそも別物である。業務効果においてやるべきことは、トレード・オフが存在しないところでは、もれなく継続的改善を推進することである。[略] 一方、戦略においては、独自のポジションを定義し、まごうかたなきトレード・オフを作りだし、適合性を強化することが正しい。そのためには、自社のポジションを強化・拡大する方法をたえず模索する必要がある。戦略には、規律と継続性が求められる。そして、排除すべきはよそ見と妥協である。(pp.86-88)

●戦略ポジショニングの六原則
 第一に、まず「正しい目標」、すなわち「長期的に高いROI」から考えなければならない。
 第二に、企業の戦略は、「バリュー・プロポジション」(提供価値)、すなわちライバルが提供するものとは異なる便益を顧客に提供するものでなければならない。
 第三に、戦略は「独自のバリューチェーン」に反映されなければならない。
 第四に、揺るぎない戦略には「トレード・オフ」がある。ライバルと一線を画するには、製品特性やサービス、活動のなかで何かを諦める、あるいは何かを切り捨てる必要がある。つまり、製品やバリューチェーンにおいて、このようなトレード・オフが存在するからこそ、際だった存在になれる。
 第五に戦略は、「適合性(フィット)」、つまり企業内の要素すべてがどのように適合しているのかを定義する。
 そして最後に、戦略には方向の「継続性」すなわち、進むべき方向を守り続ける必要がある。企業は、みずからの拠り所となる独自のバリュー・プロポジションを定義しなければならない。たとえそれによって何らかのチャンスを逃すことになっても、である。(略あり、pp.116-117)

●業界分析入門(p.58)
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☆自社の業界分析をする際に見直すとよい。

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「言霊の祈り」(日経新聞2011/3/24、p.32)

小池真理子が日経新聞の「文化」欄に書いた小論。
震災を受けて作家として考えたこと、被災地の友人からのメールに書かれていたこと。

なぜ私たちは本を読むのか、そのメールを読んで深く考えさせられる。
本、それも紙の本を読むことが人間の証となる瞬間がある。
人は本を読む。どんなときでも、そこに本がある限り。

震災後、やっと連絡がとれるようになった仙台の友から、私の携帯に長いメールがきた。想いの丈を吐き出すようなメールだった。 『電子書籍って何だろうね。停電してたら何の役にも立たないじゃない。やっと電気が通じたけど、テレビは怖くて、これ以上、観たくない。本が読みたい。紙に印刷されたものが読みたい。お願い、本屋さんをなくさないようにして!このうえ、私たちから本まで奪わないで!』 彼女は読書家で、常に本を読みあさっている。震災で出版関係の機能も滞っている、という私からのメールに対する返信だった。(日経新聞2011/3/24、p.32)

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Berkshire Hathaway Shareholder Letter 2010

Berkshire Hathaway Shareholder Letters 2010

2010年のハイライトはBurlington Northern Santa Fe (BNSF)の買収。
鉄道は環境に優しく、社会に利益をもたらす。。

When traffic travels by rail, society benefits.

2011年は80億ドルを資本支出(買収)に使う予定、うち20億ドルはアメリカ。
不確実性という言葉に惑わされるな。

The prophets of doom have overlooked the all-important factor that is certain: Human potential
is far from exhausted, and the American system for unleashing that potential – a system that has worked wonders for over two centuries despite frequent interruptions for recessions and even a Civil War – remains alive and effective.

Berkshireの本質的価値を構成する3要素
1. 株・債券・現金同等物への投資
2. 投資・保険引受以外の収益:Berkshireの株価は長期的に投資と収益に比例する。

Over time, you can expect our stock price to move in rough tandem with Berkshire’s investments and earnings. Market price and intrinsic value often follow very different paths – sometimes for extended periods – but eventually they meet.

3. 留保収益が将来生む利益(留保1ドルあたり収益)

Berkshireはプロセスより人を信じる。

Our trust is in people rather than process. A “hire well, manage little” code suits both them and me.

会社の文化は自己増殖する。常に注意を怠らないこと。

Cultures self-propagate. Winston Churchill once said, “You shape your houses and then they shape you.” That wisdom applies to businesses as well. Bureaucratic procedures beget more bureaucracy, and imperial corporate palaces induce imperious behavior. (As one wag put it, “You know you’re no longer CEO when you get in the back seat of your car and it doesn’t move.”) At Berkshire’s “World Headquarters” our annual rent is $270,212. Moreover, the home-office investment in furniture, art, Coke dispenser, lunch room, high-tech equipment – you name it – totals $301,363. As long as Charlie and I treat your money as if it were our own, Berkshire’s managers are likely to be careful with it as well.

「資産の半分を失ったのに、妻がまだ残っている」というジョークが流行った。

As one investor said in 2009: “This is worse than divorce. I’ve lost half my net worth – and I still have my wife.”

2010年にput売で$647milプレミアムを受け取り、反対売買で$425mil支払った。結果$222milの利益を実現し、かつ金利のかからない$647milを3年間使うことができる。

「純利益」はBerkshireには意味がない。

it is almost always meaningless at Berkshire.
Regardless of how our businesses might be doing, Charlie and I could – quite legally – cause net income in any given period to be almost any number we would like.

ブラックショールズ式はオプションに不適当な価格をつける。本当の価格はBS式より安いはず。

As a p.s., I can’t resist pointing out just how capricious reported net income can be. Had our equity puts had atermination date of June 30, 2010, we would have been required to pay $6.4 billion to our counterparties at that date. Security prices then generally rose in the next quarter, a move that brought the corresponding figure down to $5.8 billion on September 30th. Yet the Black-Scholes formula that we use in valuing these contracts required us to increase our balance-sheet liability during this period from $8.9 billion to $9.6 billion, a change that, after the effect of tax accruals, reduced our net income for the quarter by $455 million.
Both Charlie and I believe that Black-Scholes produces wildly inappropriate values when applied to long-dated options. We set out one absurd example in these pages two years ago. More tangibly, we put our money where our mouth was by entering into our equity put contracts. By doing so, we implicitly asserted that the Black-Scholes calculations used by our counterparties or their customers were faulty.
We continue, nevertheless, to use that formula in presenting our financial statements. Black-Scholes is the accepted standard for option valuation – almost all leading business schools teach it – and we would be accused of shoddy accounting if we deviated from it. Moreover, we would present our auditors with an insurmountable problem were we to do that: They have clients who are our counterparties and who use Black-Scholes values for the same contracts we hold. It would be impossible for our auditors to attest to the accuracy of both their values and ours were the two far apart.
Part of the appeal of Black-Scholes to auditors and regulators is that it produces a precise number. Charlie and I can’t supply one of those. We believe the true liability of our contracts to be far lower than that calculated by Black-Scholes, but we can’t come up with an exact figure – anymore than we can come up with a precise value for GEICO, BNSF, or for Berkshire Hathaway itself. Our inability to pinpoint a number doesn’t bother us: We would rather be approximately right than precisely wrong.

企業の生き残りのためには流動性を確保すること。

[My grandfather] Ernest never went to business school – he never in fact finished high school – but he understood the importance of liquidity as a condition for assured survival.

「みんなやっている」は理由にならない。

Sometimes your associates will say “Everybody else is doing it.” This rationale is almost always a bad one if it is the main justification for a business action. It is totally unacceptable when evaluating a moral decision. Whenever somebody offers that phrase as a rationale, in effect they are saying that they can’t come up with a good reason. If anyone gives this explanation, tell them to try using it with a reporter or a judge and see how far it gets them.

規則よりも、マネジメントがどのように振る舞うかが、事業の発展に大きく影響する。

Your attitude on such matters, expressed by behavior as well as words, will be the most important factor in how the culture of your business develops. Culture, more than rule books, determines how an organization behaves.

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早稲田文学フリーペーパー vol.017

早稲田文学フリーペーパー vol.017

本屋に行った帰り、フリーペーパーの棚に置いてあった。普通はこういうのを手に取らないのだが、表紙が東浩紀とその娘だったので、つい手が伸びた。
東浩紀って新人賞の編集委員みたいなこともやるんだ、というのが第一感。その後『ニッポンの思想』で東浩紀の最近のパフォーマンスについて読んだので、なるほど、と思ったが。
娘もいつのまにか大きくなって、とてもこまっしゃくれた、いや、頭の良さそうな感じに育ってきたようだ。お父様も将来が楽しみでしょう。

早稲田文学というだけあって、フリーペーパーながら読むところは結構あった。村田沙耶香「透明な手」は、自分だけにしか見えない空想上の友達「ソラオ」の話で、2ページしかないが、読ませた。

定期購読しようとまでは思わないが、本屋に行った時にあれば、またもらいたい。

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ヘッジファンド(再読)

ヘッジファンド
幸田真音
講談社文庫、1999.3.15

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ユリイカ 攻殻機動隊特集

ユリイカ 2006.10

特集 攻殻機動隊 Stand Alone Complex
神山健治と東浩紀の対談とか、神山と押井守の師弟対談とか、神山と上野徒俊哉のカルスタ対談とか、大澤真幸の小論とか。

偶然指導教授の連載最終回だったり。

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現代思想について

現代思想について―講義・質疑応答 新潮カセット文庫 小林秀雄講演 別巻
小林秀雄
新潮社、1987.7.20

昭和36年に長崎で行われた小林秀雄の講演を録音したもの。

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微笑む女/最後の嘘

微笑む女/最後の嘘
乃南アサ
横浜カセット文庫

表題小説の朗読テープ。

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ディベートの良さ

 「エッジモント高校は、ディベート界の慣行に従い、自主的に情報開示をしている。つまり、次の試合でどのような論理展開をするか、対戦チームが問い合わせてくれば喜んで教えるということだ。裁判の法廷と違い、相手に奇襲をかけるのが目的ではない。なるべく実体のあるエビデンスを集め、厳密なディベートを実現しようという発想だ。
 ミシガン州立大学のディベートチームの副コーチ、ジョシュア・ゴンザレスによれば、ディベートの良さはまさにこうした点にある。
『ディベートの試合では、扇動的な議論が飛び交うことはあまりなく、中身のある討論がされています。左派勢力は、ディベーターたちに見習い、右派勢力の扇動的なレトリックに惑わされないようにするべきです。左派が支持している政策には、かなりの根拠があり、それらは米国の大多数に受け入れられるようなものだと思います。現政権や保守勢力、それにフォックス・ニュースがどれだけ憤慨と激情を煽ろうと、長い目で見れば、優れた思想が生き残るんです。熱心で、能力があり、堅実な支持者さえいれば。少なくとも、私はそう願っています。私たちは、そういう能力のある人材を育成したいとおもっているんです』」
─「政界の大物を生む『高校ディベート』の世界」『クーリエ・ジャポン』2006.12.21、p.40

これがディベートの理想の姿ですね。

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論理思考には限界がある

プレジデント2007.3.5号

論理思考の限界として次の四つが挙げられる。
1.前提条件が変わると使えない。[昨今のビジネスの世界のように、ゲームのルールが頻繁に大きく変わる環境では]、前提条件やルールが変わる可能性を常に論理の中に組み込んでいかないと、まったく間違った答えを出してしまう危険性がある。
2.差別化ができない。前提条件やルールが変わらない環境で、ある問いを論理思考で突き詰めていくと、当然のことながらどの企業も最終的には同じような答えにたどり着いてしまう。...論理思考で違いを出すには、問いの設定自体を変えなければいけないが、そのためにはクリエイティビティ、つまり創造力が必要になる。
3.「正しい」だけでは人は動かない。
4. 調査依存症になる。(p.32-33要約)

Wiiの成功は脱ロジカルシンキング(p.41)

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