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『鴨川食堂まんぷく』

『鴨川食堂まんぷく』
柏井壽
小学館文庫、2019/8/6、¥680(有隣堂亀戸)

鴨川食堂シリーズ第6巻。ピークを過ぎたアイドルが幼馴染が作ってくれたたらこスパゲディを探す話、高名な学者がかつて下宿の大家が作ってくれた焼きおにぎりを探す話、有名な作家が売れない時代なくなった妻が作ってくれたジャガイモと玉ねぎの炒め物を探す話、息子が義祖母の作ってくれた混ぜご飯を食べたいと言って母親が探す話、かつて付き合っていた男と無理やり別れさせられた時に男の母が持たせてくれたカツ弁を探す女性の話、沖縄で暮らしていた時に父親が離婚して家を出て行く最後に作ってくれたお好み焼きを京都に就職する息子が探す話、の6編。

京都を降り立った人物が普通の家と変わらぬ佇まいの鴨川食堂の前に立ち、入ると豪華な食事が出され、こいしが聞いた話を「あんじょうお聞きしたか」「お勘定は食を見つけた時に」「2週間くらいで」と流が客に言い、2週間後再訪した人物の前に探していた食事が出され流が謎解きをする、という判を押したようなフォーマットは本巻も健在。人は皆それぞれの人生を抱えて生きているとわかる味わい深い小説。

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『シャルロットの憂鬱』

『シャルロットの憂鬱』
近藤史恵
光文社文庫、2019/6/12、¥670(有隣堂亀戸)

警察犬を引退した6歳雌のジャーマンシェパードのシャルロットは浩輔・真澄夫婦に引き取られた。元警察犬だけあって賢いシャルロットは家族犬として適度ないい加減さを持ちながらここぞという時には難題を解決する。

サクリファイスシリーズとは違った趣の家庭の謎ジャンルの安心して読める小説だった。

●シャルロとを飼い始める時、犬のしつけについて勉強して知った。吠えずに黙っていたり、おとなしくしていたりする時、褒めてやるのは大事なことだ。人間同士ではそういう「何もしていないこと」を褒めるという習慣がない。ともすれば、悪いことをした時だけしかり、おとなしくしているときは放っておくということになりがちだ。そうすると犬はおとなしくしていることが、いいことだとわからない。悪いことをした時だけ構ってもらえるから、悪戯や吠え癖を悪化させてしまうケースがあるらしい。(p.218)

⭐︎人間も同じで、良いことをした時には褒めることが大事。

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映画『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝』

映画『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝』
TOHOシネマズ錦糸町楽天地

全寮制女学校の生徒イザベラの家庭教師としてヴァイオレットは3ヶ月指導することになる。イザベラには妹がいたが、父親との契約により離れ離れになる。ヴァイオレットは彼女らの手紙のやり取りを手伝う。

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『我らが少女A』

『我らが少女A』
高村薫
毎日新聞出版、2019/7/20、¥1,944(有隣堂亀戸)

池袋で同棲相手の女上田朱美を殺した男が彼女が絵の具を持っていたと供述したことから12年前に野川公園で発生した未解決事件元美術教師栂野節子殺人事件の再捜査が始まる。当時責任者として捜査に当たった合田雄一郎は今は警察大学の教官をしており、朱美の友人だった小野や浅井忍そして節子の孫の真弓、節子の娘の雪子や朱美の母亜沙子など関係者が12年前のことを思い出す。

新聞連載の単行本化と言うことで高村は数ページごとに視点を変える手法をとっている。また鉤括弧を使わず会話も含めてほとんどの文章を地の文で書いていることから小説に独特で重厚な風合いを備えている。久しぶりに合田雄一郎が登場する小説を読んだがだいぶ丸くなったと言う印象と元妻の兄加納といまだに限りなく怪しい関係を続けているのもどう決着をつけるつもりなのか興味深い。最終ページのホームに立つ小野の描写は事件が起こり人が亡くなって多少の感慨はあっても日常は続いていくと言うそれまでの五百数十ページは世の無常を説得力あるものにするための前振りだとでもいうような見事な結末だった。

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『テーマパーク化する地球 』

『テーマパーク化する地球 』
ゲンロン叢書、2019/6/11、¥2,484(丸善日本橋)

複雑な歴史を歩んだ大連を例にとり、慰霊の問題と人工的な都市としてのテーマパークについて語った冒頭論文から、様々なテーマについて語られる。「哲学はそもそも公共的な役割なんてない」(p.221)という東の割り切りは気持ちよく共感できた。

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『現代思想2019年3月臨時増刊号 総特集=ジュディス・バトラー――『ジェンダー・トラブル』から『アセンブリ』へ』

『現代思想2019年3月臨時増刊号 総特集=ジュディス・バトラー――『ジェンダー・トラブル』から『アセンブリ』へ』
青土社、2019/2/15、¥1,944(丸善日本橋)

明治大学で行われたジュディスバトラーの講演を中心にその他の記事を集めたムック。

なんだかさっぱりわからなかったが、学問的と言うよりは左翼的な記事が多く日本の学者が結局バトラーのことがよくわかっていないのに自分の言いたいこと言うためになんとなく使ってるだけ、と言う批判の意味がなんとなくわかる特集だった。

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『いまさら翼といわれても 』

『いまさら翼といわれても 』
米澤穂信
角川文庫、2019/6/14、¥734(有隣堂亀戸)

古典部シリーズ第6巻。総務委員お里志は生徒会長選挙の投票総数が生徒数より多かったことを折木に相談する。中学時代卒業制作で作った鏡の彫刻で折木は一本線を引くだけで出して騒ぎになったがそれはなぜだったのか。中学時代の英語教師がある日山に飛んでいくヘリコプターを見ていたのをあれはなんだったかと原因を探る。学園祭以降雰囲気の悪くなった漫研から摩耶花は先輩と共に退部する。千反田がソロを歌うはずの合唱祭当日に姿を消し折木が探す。

久しぶりの神山高校で楽しく読んだ。千反田のアイデンディティクライシスは今後解消されるのか、次作が出るかどうかわからないが期待したい。

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『僕は君たちに武器を配りたい エッセンシャル版』

『僕は君たちに武器を配りたい エッセンシャル版』
瀧本哲史
講談社文庫、2013/11/15、¥540(BO241)

以前会ったことがある著者が亡くなったと聞いて。

若者にこれからの時代を生き抜く武器を、というキャッチで売れた本。マーケターになれイノベーターになれ、コモディティになるなブランドになれ、というよくある自己啓発の本。リーマンショック後の厳しい時に書かれていて一定の説得力はあるだろうが、今から見ると本書で取り上げられている例でもすでに落ちぶれてしまったものもある。

2年前の日経新聞や日経ビジネス、週刊ダイヤモンドなどに取り上げられた優良企業が今どうなっているか観測すると世の中の流れがわかる、という指摘は参考になった。

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『財務捜査官 岸一真 ヘルメスの相続』

『財務捜査官 岸一真 ヘルメスの相続』
宮城啓
幻冬舎文庫、2019/8/6、¥832(紀伊国屋木場)

金に困っていた岸は前作同様元上司に頼まれてアメリカ人女性の彼氏の人探しを手伝うことになる。なぜかヤクザに狙われたり彼氏が行方不明のまま謎が深まり、戦後混乱期の秘密が明らかになって行く。

前作を超える長編。一家皆殺しや会社乗っ取りを企み70年間君臨し続けるほど才知にたけた男が、実の弟の行動範囲にいた女性や自分の会社の周りで仕事をしていたその息子を見落としていたということがあるかが若干疑問だったが面白くよんだ。

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『財務捜査官 岸一真 マモンの審判』

『財務捜査官 岸一真 マモンの審判』
宮城啓
幻冬舎文庫、2018/10/10、¥648(有隣堂亀戸)

ロンドンのビル爆破事件で親友を目の前で失った公認会計士の岸は生活が荒みフリーのコンサルタントになるも金に困り前の上司の依頼で警察庁のマネーロンダリング事件を追う財務捜査官になる。プライベートバンクの匿名口座からヨーロッパ投資銀行の不正を暴きその過程で親友が不正に手を染めていたことも明らかになる。

プロットは面白かったがもう少し素直な文章だと良かった。


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『移民 棄民 遺民 国と国の境界線に立つ人々』

『移民 棄民 遺民 国と国の境界線に立つ人々』
安田峰俊
角川文庫、2019/4/24、¥907(丸善日本橋)

ベトナム難民として無国籍で日本に暮らす若者たち。中国に弾圧され、日本では支援団体に利用されるウイグル人。日系中国人でありながら日本人としては受け入れられず中国企業に勤める若者たち。上海で飲み屋を経営する老人が実は中華民国時代軍閥の幹部の家系で波乱万丈の人生を送ってきたこと、日本人の思う台湾が幻想であること、など国境人種など境界線で暮らす人々についていつもの著者の精緻な取材に基づく筆致で描いたノンフィクション。

中華民国時代の軍閥の話が一番面白かった。

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