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『京都寺町三条のホームズ(12)-祗園探偵の事件手帖』

『京都寺町三条のホームズ(12)-祗園探偵の事件手帖』
望月 麻衣
双葉文庫、2019/7/11、¥700(有隣堂亀戸)

小松探偵事務所で修行することになった清貴は、円生を柳原先生のところから借りて鑑定の見習いをさせようとする。京都に幽霊騒ぎとストーカー事件が起きる中、記憶喪失となった資産家の男から20年前に記憶喪失となる前に誰が自分を殺そうとしたか調べるよう依頼される。事件を調査するうちに無関係と思われたそれらの事件が繋がっていたことがわかる。

12巻になると最初の頃はどうだったか記憶が曖昧になってくる。本巻は葵はほとんど登場せず、清貴と円生の掛け合いが中心になるがそれはそれで面白く読んだ。

 

 

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『羊と鋼の森』

『羊と鋼の森』
宮下 奈都
文春文庫、2018/2/9、¥702(BO473)

北海道の高校の体育館で板鳥がピアノの調律をするのを聞いた外村は調律師を目指す。専門学校を卒業して地元に戻った外村は板鳥のいるピアノ店に勤める。様々な経験を積む中で、双子の姉妹のピアノを調律した外村は、姉妹のピアノへの思いや挫折を知る。

北海道の旭川が舞台の小説だが、桜木紫乃や探偵はバーにいるなどに比べて北海道の匂いが薄い気がした。蜜蜂と遠雷を読んだ後だったのでピアノの音色を支える調律師の小説を楽しく読めた。

●「明るく静かに澄んで懐かしい文体、少しは甘えているようでありながら、きびしく深いものを湛えている文体、夢のように美しいが現実のようにたしかな文体」「原民喜が、こんな文体に憧れている、と書いているのですが、しびれました。私の理想とする音をそのまま表してくれていると感じました」(板鳥、p.65)

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『鍵のかかった部屋』

『鍵のかかった部屋』
貴志祐介
角川文庫、2012/4/25、¥734(借)

青砥純子榎本径コンビ第三弾。以下四編。

ガンで余命いくばくもない葬儀会社社長が密室となった別荘で死んでいるのを発見される。顧問司法書士は殺人を疑い純子に依頼する。遺言を巡って疑いのかかる専務はアリバイがあるが、榎本は謎を解く。
熟練のピッキング専門犯の男が出所して亡姉の家を訪れると、夫の理科教師が応対するが長女の姪が学校から帰ってきて二階の弟を呼びにいくと密室の中で練炭自殺していた。甥の自殺を信じられない男は、榎本に相談し純子と姪に会って謎を解明する。
学校教師の男が新婚生活のために親戚の夫の工務店に頼んで建てた家は施工不良だった。純子に施工不良の弁護を頼む一方で男は拉致のあかないやり取りに業を煮やし工務店の男を殺す。密室を作って完全犯罪を目論んでいた男はしかし純子を連れて訪れた施工不良の自宅で警察と榎本を発見する。
松本さやかの劇団のナンセンス演劇に呼ばれた純子と榎本は、劇の最中に行われた密室殺人の謎を成り行きで解くことになる。

全て密室殺人でトリックの説明がやや複雑だが面白く読んだ。純子の扱いがますます雑になっている。

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『狐火の家』

『狐火の家』
貴志祐介
角川文庫、2011/9/23、¥720(借)

青砥純子、榎本径コンビ第二弾。以下四篇。

長野の農村で父親が家に帰ると長女が殺されていた。休暇で長野に来ていた純子が呼ばれるが密室の謎を解けないため榎本を呼ぶ。謎の解明にめどがつきつつあったところに失踪した長男のアパートで第二の殺人が起こる。
蜘蛛をペットにしていた男が蜘蛛を飼うために借りていたアパートで毒蜘蛛に刺されて死ぬ。男の友人が純子に蜘蛛を譲る手伝いを依頼する。アパートで妻と友人に挟まれ純子は殺人を疑い榎本にアドバイスを求める。妻と友人と話すうち、純子はトリックに気づく。
将棋の棋士がホテルで殺される。しかしチェーンがかけられた部屋は密室になっていた。榎本は被害者の彼女の話を聞く。
「硝子のハンマー」で社長秘書をしていた松本さやかは、所属する劇団の役者が自宅で殺された密室殺人事件の解決を純子に依頼する。お手上げの純子は榎本を呼ぶ。

いずれも密室殺人事件を純子榎本コンビが解決する。純子の扱いがだんだん雑になっていく。

 

 

 

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『硝子のハンマー』

『硝子のハンマー』
貴志祐介
角川文庫、2007/10/11、¥950(借)

日曜日の昼下がり、介護サービス会社のビル最上階で社長の撲殺死体が発見される。犯人として逮捕された専務の依頼で弁護士青砥純子が真相を探るが、密室の謎が解けないため事務所は心神喪失を主張しようとする。納得のできない純子は裏稼業が本職のセキュリティ専門家榎本に密室の謎解明を依頼する。

前半は事件発生から謎を解くために榎本が調査を進めるが、中盤から犯人の視点で事件が描かれて少し意表を突かれた。犯人にも事件を起こすに至る人生があるという描き方は丁寧で良いが少し長かった。トリックも専門家でなければできないもので、実際にできるかどうかは少し疑問が残るが一息に読むことができた。

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『新記号論 脳とメディアが出会うとき』

『新記号論 脳とメディアが出会うとき』
石田英敬、東浩紀
ゲンロン叢書、 2019/3/4、¥3,024(くまざわ書店錦糸町)

アナログメディアからデジタルメディアに時代が変わり、従来の記号論が通用しない今、どのように強度を持った記号論を再構築するか、その問題意識によって石田と東が講義形式で語った内容を書籍化したもの。
難しすぎて玉砕した。世界の文字は全て同じ構造で出来ている、ということがわかっただけでよかったとしたい。

 

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『天国はまだ遠く』

『天国はまだ遠く』
瀬尾まいこ
新潮文庫、2006/10/30、¥464(借)

瀬尾まいこファンに借りた。

保険営業の仕事がうまくいかず自殺を決意した千鶴は、たどり着いた山奥の民宿で、田村さんにもてなされ、散策したり規則正しい生活をするうちに心が落ちつき、前に進む勇気を取りもどす。

それだけの小説だが、瀬尾まいこにしては変なひねりがなく、とても前向きな小説なので読んでいて心地よかった。小川糸の「食堂かたつむり」に少し似ているかも。

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『優しい音楽』

『優しい音楽』
瀬尾まいこ
双葉文庫、2008/4/10、¥514(借)

瀬尾まいこファンに借りた。

(優しい音楽)駅でいきなり千波に声をかけられ付き合うことになるタケル。実は亡くなった兄にそっくりだったというだけで千波に声をかけられていた。それでも千波の家族と仲良く前に進むことを決意するタケル。
(タイムラグ)愛人が旅行に行くため娘佐菜を預かることになった深雪。今まで訪ねたことのない佐菜の祖父の家に二人で行き、愛人夫婦の結婚を許してもらおうとする。
(がらくた効果)ある日公園でホームレスをしていた佐々木さんを同棲している家に連れてきてしまうはな子。章太郎は戸惑うが、三人で暮らすうちに大学の教授だった佐々木さんの知識や振る舞いに影響されてしっかりした生活をするようになる。そしてある日佐々木さんが新しい道に進むためいなくなり、二人もそれまで億劫がっていたそれぞれの家族へ挨拶に行くことを決める。

どれも荒唐無稽な設定から家族とは何か、人と人の繋がりの不思議さが描かれる。がらくた効果は少し「センセイの鞄」に似た雰囲気があったように思った。瀬尾ワールドが「優しさに満ち溢れた」と表現される意味はわかるが、自分はそれを優しさよりも厳しさと受け止めるような気がする。

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『僕の明日を照らして』

『僕の明日を照らして』
瀬尾まいこ
ちくま文庫、2014/2/6、¥626(借)

瀬尾まいこファンに借りた。

中学二年生の隼太は、シングルマザーの母が町で人気の歯医者優ちゃんと結婚し、夜は二人で過ごすことが多い。しかし優ちゃんは時々ひどい暴力を隼太にふるい、自分では抑制できない。一人の寂しい夜を過ごしたくない隼太は、優ちゃんと協力してなんとか暴力をコントロールしよとする。次第にうまくいくようになり、それまでつけていた日記を処分しようとしてそれを母に見つかり母は離婚することになる。

DVの小説は自分では選ばない。読んでいて悲しくなった。暴力を振るいたくなくても衝動に抗えない優ちゃん、暴力を受けても一人が嫌だと離婚を許さない隼太、何もわかっていない母親、それぞれがそれぞれに苦しみながら家族を成り立たせようと努力する。その先にハッピーエンドがあればまだ良いが本作は決してハッピーな結末ではない。普段自分が見ないようにしているところを突きつけられるような気がして読んでいて辛いが、良作なのは間違いないだろう。

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『温室デイズ』

『温室デイズ』
瀬尾まいこ
角川文庫、2009/6/25、¥518(借)

瀬尾まいこファンに借りた。

みちると優子は中学3年生。学級崩壊が進み、女子からいじめを受けた優子は学びの部屋に避難する。一方みちるもいじめを受けるが、逃げずに立ち向かう。スクールサポーターとして着任した吉川も不良グループのターゲットとなり、東校舎の片隅でみちると吉川は昼休みを過ごす。パシリとしていじめを逃れていた齋藤は密かに同級生に仲間を作り、中庭に花壇を作る。吉川はそれを守ろうとするが、切れると手に負えない伊佐がナイフを手に迫る。その時みちるはレンガを自分の頭にぶつけ、伊佐の気勢をを削ぐことで花壇を守る。

学校のいじめは解決されないし、先生は無責任でいじめられっ子を助けない。救いのない展開の中、花壇を守ることが最後の抵抗拠点として描かれる。如何しようもない状況にどのように立ち向かうか三者三様の姿を描いて読んでいて辛かった。多分自分では選ばない小説。

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『僕らのごはんは明日で待ってる』

『僕らのごはんは明日で待ってる』 瀬尾まいこ
幻冬舎文庫、2016/2/24、¥540(借)

瀬尾まいこファンに借りて。高校生の亮太は兄の死後人との交わりを拒絶してきたが、同級生の小春と体育祭で協力したことで付き合い始める。やがて結婚し、まだみぬ子供にも名前をつけて幸せな時間を過ごすが、小春に子宮筋腫が見つかり、摘出を勧められる。子供を諦められない小春は拒否するが、亮太の説得で手術を受けることにする小春。しかし二人はこれからも同じ時間を幸せに生きていく。

「君の膵臓を食べたい」に似た展開だが、死ななくてよかった。家族には色々な形があって、幸せならそれで良いというメッセージが伝わる。

 

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『戸村飯店 青春100連発』

『戸村飯店 青春100連発』
瀬尾まいこ
文春文庫、2012/1/4、¥702(借)

瀬尾まいこファンに勧められて。大阪の庶民的中華料理店の二人息子兄ヘイスケと弟コウスケ。ヘイスケは要領がよく、小説の専門学校に通うといって東京に飛び出すが、一ヶ月でそこをやめ、講師のアリさんと付き合うようになる。一方コウスケは幼い頃から店を手伝い、将来も進学せず店を継ぐつもりだったが父親に追い出され、ヘイスケにどうしたら良いか相談する。お互いがお互いにコンプレックスを持ちながら、お互いを大事に思う兄弟が、ヘイスケは店の手伝い、コウスケは大学進学と当初思っていたのとは違う道を歩むことになる家族の物語。

間宮兄弟に少し似てるかとも思ったが、モテない兄弟の話ではないし最後は一応ハッピーエンド。瀬尾まいこはどの小説を読んでも家族をテーマにしていることがわかってきた。

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『春、戻る』

『春、戻る』
瀬尾まいこ
集英社文庫、2017/2/17、¥497(BO310)

結婚を控えたさくらの前に、兄を名乗る男が突然現れる。見覚えのないその男はさくらよりも年下でなぜ兄を名乗るのかわからない。しかし彼の気さくな雰囲気にさくらが納得いかないまま婚約者も婚約者の両親も普通に接して生活に溶け込んでいく。そのうちにさくらは以前一年だけ教師をした時の苦い記憶を思い出し、兄を名乗る彼が何者だったかに気づく。

突拍子もない設定だが、読んでいくうちに自分が大事なことを忘れていないか、誰かに親切にされたことを忘れていないか、と問われるような小説。

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『カラフル』

『カラフル』 森絵都
文春文庫、2007/9/10、¥670(BO108)

 

自分が誰かわからないまま再挑戦と称して現世に戻されたぼく。自殺を図った少年真の体を借りて生前の自分の罪を見つけることになる。思っていたのと違う家族の真相が明らかになるうち、ぼくが犯した罪を思い出す。

 

最後の種明かしはなるほどとも思ったし拍子抜けもしたが、自分の目に見える他人の姿は本当にごく一部だという教訓を得ることができる小説。

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