« 『読書する人だけがたどり着ける場所』 | トップページ | 『蜜蜂と遠雷(下)』 »

『蜜蜂と遠雷(上) 』

『蜜蜂と遠雷(上) 』 恩田陸
幻冬舎文庫、2019/4/10、¥788(有隣堂亀戸)

それぞれの事情を抱えながら国際ピアノコンクールに臨むコンテスタント達の姿を描いた小説。
かつて天才少女と言われながら母親の死をきっかけにピアノを弾けなくなった栄伝亜夜。養蜂家の子供として育ちながら天才的な技術を持つ風間塵。圧倒的なスター性を持って登場したマサル。楽器店に勤務しながらピアノを続ける高島明石。彼らの審査をする三枝子やナサニエル。そして彼らをドキュメンタリーに収めようとするプロデューサー雅美。上巻は登場人物の背景と二次予選までの様子を描いている。

ゆっくり読もうと思ったが、引き込まれて一息に読んでしまった。直木賞と本屋大賞を取っただけのことはある。

●[三枝子の] 猪飼真弓は高校時代の友人だが、今は売れっ子のミステリ作家になっている。[略] 今でもたまに一緒に呑むのだが、彼女は会うたび文芸業界とクラシックピアノの世界は似ている、というのである。
 ホラ、似てるじゃない、コンクールの乱立と新人賞の乱立。同じ人が箔をつけるためにあちこちのコンクールや新人賞に応募するのも同じ。どちらも食べていけるのはほんの一握り。自分の本を読ませたい人、自分の演奏を聴かせたい人はうじゃうじゃいるのに、どちらも斜陽産業で、読む人聴く人の数はジリ貧。[略] 
 なのに、ますますコンクールも新人賞も増える一方。いよいよみんな必死に新人を探してる。なぜかっていうと、どちらもそれくらい、続けていくのが難しい商売だからよ。普通にやってたって脱落していく厳しい世界だから、常に裾野を広げ、新しい血を輸血し続けていないとすぐに担い手が減ってしまい、パイそのものも小さくなる。だから、みんながいつも新たなスターを求めているの。(pp.23-24)

☆ 偶然だけれど、昨今の幻冬舎社長の実売部数発言をめぐる出版界の状況を的確に言い表している。

|

« 『読書する人だけがたどり着ける場所』 | トップページ | 『蜜蜂と遠雷(下)』 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 『読書する人だけがたどり着ける場所』 | トップページ | 『蜜蜂と遠雷(下)』 »