« 2018年10月 | トップページ | 2018年12月 »

『鴨川食堂いつもの』

『鴨川食堂いつもの』
柏井 壽
小学館文庫、2016/1/4、¥616(丸善日本橋)

東本願寺前の目立たない鴨川食堂シリーズ第三弾。もう完全にパターン化した展開で水戸黄門を見ているように読める。目立たない鴨川食堂にたどり着いた依頼人は、最初に依頼に至った思いを振り返りながら料理を食べ、こいしに話をする。流が「ようけ話をお聞きしたか」と聞き、「二週間後においでください」と結ぶ。二週間後に再度来店した依頼人は、流から料理を出され、それをまた思い出に浸りながら堪能し、流からどのように見つけたかを聞くうちに(それがどのようなものであれ)心を決めて新たな一歩を踏み出す。
このパターンが繰り返されるので、エピソードごとの状況は異なっていても、安心して読める。

能楽師の父の後を継がず、ダンサーになった男が、説得を諦めた父に最後に食べさせられた蕎麦。
反対を押し切って作家になれない男と夫婦になり、男を守るために人をはずみで殺した娘が、最後に結婚の説得に訪れた時に作ってくれたカレー。
初めての恋にピアニストとしての将来を捨てても良いと、自分の手を傷つけてしまった女が、その時に恋人に作ってもらっていた焼きそば。
二股をかけていた男が、振った女の両親に謝りに行った時に食べさせてもらった餃子。
勉強のできない同級生に教えに行っていたが、同級生が大学に合格し、自分は落ちたことで人生が狂ったと思っている。その男が同級生の母親に作ってもらっていたオムライス。
母子家庭で育った文学賞受賞間近の女性作家が、幼い頃貧しさから近所のコロッケ屋から盗んで食べていたコロッケ。

それぞれ趣のある話が並び、面白く読めた。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

『わが家は祇園の拝み屋さん9 星の導きと今昔の都』

『わが家は祇園の拝み屋さん9 星の導きと今昔の都』
望月麻衣
角川文庫、2018/10/24、¥648(有隣堂亀戸)

審神者頭となった澪人は、東京で起こる異変に対応するため東京に出張する。宗次朗は浅草の師匠が倒れたと聞き東京へ行く。小春も夏休みを利用して東京へ帰省する。二人の恋の行方と東京の異変という新しい話が動き始める。

ホームズにしろお祓い本舗にしろ、イケメンと少しさえない女の子の恋というパターンは一貫しており、著者はよほどそういうのが好きなんだなと感じる。物語自体は軽く読むことができる。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

『終電の神様』

『終電の神様』
阿川大樹
実業之日本社文庫、2017/2/3、¥640(有隣堂亀戸)

それぞれの事情を抱えながら日々を過ごす登場人物が、人身事故などによる電車の急停止によってお人生を変える出来事が起こる。

危篤になった床屋の父親のいる病院に急ぐサラリーマン、33年前に命を助けられた男性を見つけるためずっとキオスクに勤める女性、の二編がもっとも心に残った。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

『鴨川食堂おかわり』

『鴨川食堂おかわり』
柏井 壽
小学館文庫、2015/11/6、¥616(有隣堂亀戸)

京都東本願寺前にひっそりと佇む鴨川流こいしが営む食堂。雑誌『料理春秋』の一行広告に導かれ思い出の食を求めて様々な人がやってくる。

シリーズ第2巻。思い出の食を再現してもらうためにやってくる様々な人々。こいしが聞き取り、流が再現する。形式はワンパターンだがそれぞれに事情が違うためそれぞれに違う情緒を醸し出す。ゆったりとした時間を楽しめる小説。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

『英語の神様』

『英語の神様』
小野七夏
Amazon Services International, Inc.、¥0(Kindle)

Primeで無料だったので。

外人上司がやってきて、英語ができずにメンタルを病んだサラリーマンが、インドに英語の神様がいるという噂に導かれてインドに行って、怪しいシンガポーリアンに英語の教えを乞い、エロ本速読、絵本チャンツ、音読千回、少女の世話をして泥縄イングリッシュを身につけ、日本に戻って外人上司をやっつける、という小説。

英語を話すネイティブは4億、公用語14億、第二外国語40億だから、多少インチキ英語でもいいというのはその通りだが、本書は結局英語公用語国のインドで数ヶ月英語漬けになるメソッドでサバイバルイングリッシュを身につけることはできる、と海外語学留学と同じことをすればいいという結論に見える。
これだとブロークンOKであまりいい英語は身につかないと思うけど、目指すところがそこならいいんじゃないの、という感想。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

『鴨川食堂』

『鴨川食堂』
柏井 壽
小学館文庫、2015/5/8、¥616(有隣堂亀戸)

京都の東本願寺近くで鴨川流と娘のこいしがひっそりと営む鴨川食堂。雑誌『料理春秋』に掲載される一行広告に導かれ、昔食べた食の味を探してもらいに客がやってくる。こいしが客の思い出を聞き取り、流が作る。それぞれ思い入れのある客のために作られる思い出の料理は客の心に響く。

あまり深刻にならずに気楽に安心して読める料理+探偵物。いずれも見つけづらそうな料理をうまく探し出すところは御都合主義といえば言えるが、それも本作の味になっているので良い。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

『A Gentleman in Moscow』

A Gentleman in Moscow
Amor Towles
Windmill Books、2017/11/2、¥790(Kindle)

洋書ファンクラブ で勧められていたので。ケネスブラナーが本作の映画を撮るとのことなので楽しみ。

19世紀末に生まれたアレクサンダーロストフ伯爵はロシア革命でメトロポールホテルでの生涯軟禁の身となる。ホテルのスタッフ、ホテルの客などとの出会いと別れを繰り返し、自殺寸前のところでふとした偶然で思いとどまった伯爵は、ホテルのスタッフとして働くことにする。ホテルで少女の時に出会ったNinaが大人になり、再び現れた時すぐに戻ると言ってその娘Sophiaを伯爵に預けた。収容所送りとなった夫の後を追ったNinaはしかしそのまま戻らなかった。ロシアの有名女優Annaとの関わりを持った伯爵は、その後のレストランBoyalskyのウェイターとして働きながら裁縫室のMarinaやAnnaの助けを得ながらSophiaを立派に育てる。ピアノの才能を見出されたSophiaは楽団のParis公演に行くことになり、以前伯爵がスパイにならないかと誘われたRichardの助けを得てSophiaは亡命する。伯爵はもともとうまくいっていなかった総支配人に亡命の企みを見抜かれ、彼を地下室に閉じ込めて自らも数十年暮らしたホテルを脱出する。Sophiaのピアノ講師Victorの助けを得て伯爵は追手を逃れ、故郷の町でAnnaと落ち合う。

ロシア革命の激動を生き抜いた伯爵の一生を描いた小説で、昔の貴族というのはこういうものだということが垣間見られる。最後のオチは少し詰めが甘いと思うが、それを上回る圧倒的な物語でとても面白く読んだ。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2018年10月 | トップページ | 2018年12月 »