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『活版印刷三日月堂 雲の日記帳』

『活版印刷三日月堂 雲の日記帳』
ほしおさなえ
ポプラ文庫、2018/8/3、¥734(有隣堂亀戸)

三日月堂シリーズ第4巻完結編。

弓子が通う中古書店浮草の店主水上は、お客様へ情報として出していた浮草だよりのあとがき「雲日記」を書いていた。水上の友人で出版社を経営する岩倉が彼を訪ね、雲日記を出版しないかと誘う。過去にわだかまりのある水上は一度は断るが、あることで弓子に過去のことを打ち明けたことで出版を決意する。活版印刷での出版を依頼された弓子は、本町印刷の悠生、バイト女子高生楓、大学の課題で三日月堂と縁のできた女子大生豊島、安西や水上の大学時代の同級生など多くの人の助けで本を完成させる。そして水上の魔法により弓子は悠生と共に生きていくことを決意する。

余韻の残るとてもよい終わり方だった。だからこそ逆に、活版印刷で事業を成り立たせていくことの難しさが浮き立って、印刷屋の自分としてはとても複雑で悲しい気持ちにもさせられた。本町印刷からの発注をあてにして事業がたちゆくのか、機械生産性や出版業の縮小を肌で感じるだけに、悠生や弓子には頑張って欲しいと思う。

●プレーンな文字組なのに、文字ひとつひとつが独特の空気を孕んで並んでいる。こんなに深みのあるものだとは。印刷所に勤めているのに、活版印刷の文字などほとんど目にしたことがなかった。(p.33)

●本とは不思議なものだ。思いが綴られているのに、手紙のように決まった相手に送るのではない。たくさん刷って、ただ頼りなくおずおずと世界に差し出される。
 正しい宛先はない。どこに着いたら正解ということもない。そのまま消えてしまうかもしれないし、知らない誰かの心に住み着くこともある。(p.332)

☆あずまんの「誤配」に対する応答に見える。意識はしていないだろうけど。

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