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『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』

『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』
加藤 陽子
新潮文庫、2016/6/26、¥810(有隣堂亀戸)

明治以来戦った四つの大きな戦争について時系列を追いながらその理由を考える。栄光学園の歴史部部員の中高生に向けて講義したものを書籍化した本。

その時々の日本人の置かれた立場と考え方、世界の流れがよくわかる大変勉強になる本だった。
そして、太平洋戦争に至る最後の分岐点が1933年2月の熱河作戦だったこともわかり、陸軍の頭の悪さ、政治の弱腰がどうしようもなく悲しい。

▲国際連盟は満州国を認めたいなくて、中国の領土だと言っている。だから、日本が「満州国内で軍隊を動かしている」と考えていても、連盟から見ればそうではない。33年2月は連盟が和協案を提議して、日本側に最後の妥協を図っている時だった。その連盟の努力中に、れっきとした中国の土地である熱河地域に日本軍が進行することは、「第15条による約束を無視して戦争に訴えたる」行為、つまり連盟が努力している最中に新しい戦争を始めた行為そのものに該当してしまう。そうなれば、日本はすべての連盟国の敵となってしまい、連盟規約の第16条が定める通商上・金融上の経済制裁を受けることになり、また除名という不名誉な事態も避けられなくなる。(p.366)

▲1938年に駐米国大使となった国民党中国の胡適はものすごく頭の良い人だった。彼が唱えた「日本切腹、中国介錯」論は壮絶である。中国はアメリカソビエトの力を借りなければ救われない。日本は両国の軍備が完成しないうちに中国に決定的打撃を与えるために戦争を仕掛けてくるだろう。つまり日米戦争や日ソ戦争の前に日本は中国と戦争を始める。そこで米ソをこの問題に巻き込むためには中国が日本との戦争をまずは正面から引き受けて、2・3年負けなければならない。
 第1に中国沿岸の港湾や長江の下流域がすべて占領される。そのために敵国は海軍を大動員しなければならない。第2に河北・山東・チャハル・綏遠・山西・河南と言った諸省は陥落し占領される。そのためには敵国は陸軍を大動員しなければならない。第3に長江が封鎖され、財政が崩壊し、天津・上海も占領される。そのためには日本は欧米と直接に衝突しなければならない。これを2・3年耐えることで次の効果が期待できる。
 満州に駐在した日本軍が西方や南方に移動しなければならなくなり、ソ連はつけこむ機会が来たと判断する。世界中の人が中国に同情する。英米及び香港、フィリピンが切迫した脅威を感じ、極東における居留民と利益を守ろうと、英米は軍艦を派遣せざるを得なくなる。太平洋の海戦がそれによって迫ってくる。(pp.379-384)

☆これだけ優秀な人物のいる中国に対して日本側のなんと尊大で無能だったことか。

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