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『1Q84〈BOOK3〉10月‐12月〈後編〉』

『1Q84〈BOOK3〉10月‐12月〈後編〉』
村上春樹
新潮文庫、2012/5/28、¥680(BO108)

青豆は牛河が周辺を探索していることを知る。それを知らされたタマルは、牛河から天吾の居場所を聞き出すと牛河を殺す。

天吾は、千葉の療養所で父を看取り、同時に不審なNHKの集金人も姿を消す。タマルから青豆の伝言を受けとった天吾は、公園で青豆に出会い、二つの月を見る。

青豆と天吾は、首都高池尻の高架下から非常階段を登り、月が一つしかないことを確かめて、偶然通りがかったタクシーに乗り込む。

本編で一応の結末が見られ、天吾と青豆は出会っておそらく1984年に戻ったことになる。しかし「さきがけ」についてはどのように決着したか不明だし、ふかえりも重要な役回りをこなした割に最後には全く出てこない。青豆の子供は一体どうなるのかについても何ら示唆されずに終わる。大きくみれば、1984から1Q84に行って戻って来る物語ということになるが、冒頭タクシーの運転手による「見かけに騙されるな」というセリフを真に受ければ、天吾と青豆は1984のままでも会っていたような気もする。いつもの村上春樹らしく、読んでいる最中は物語に没入するが、終わると何だったかよくわからない話だった。

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『1Q84〈BOOK3〉10月‐12月〈前編〉』

『1Q84〈BOOK3〉10月‐12月〈前編〉』
村上春樹
新潮文庫、2012/5/28、¥680(BO360)

青豆はリーダー殺害後老婦人に用意されたセーフハウスにこもる。目の前の公園に現れた天吾が再び現れるのを辛抱強く待つ。NHK集金人を名乗る不審な人物が定期的に戸を叩く。そして青豆は自分が妊娠していることを知る。

天吾は、千葉の療養所へ父を見舞いに行き、そこでしばらく滞在する。「猫の国」と天吾とふかえりが呼んだ療養所で、父が昏睡しながら実は意識はどこかでNHKの集金人を続けているのではないかと疑う。看護婦と関係を持った翌日、天吾は東京に戻るが、ふかえりはすでに家を出ていた。小松から呼び出された天吾は、彼が監禁されていたことを知る。

ふかえりの書いた「空気さなぎ」が現実になるという世界で、天吾は自らの置かれた境遇に戸惑う。青豆も同様に「空気さなぎ」に導かれ、天吾を探す。そして「さきがけ」から依頼を受けた追跡者牛河は、着々と青豆・天吾・老婦人に迫っていく。

パラレルワールド小説の一種だが、展開が早く理解が追いつく前に事態が動いていく。大変面白く読んだ。結末がどうなるか楽しみ。いつもの村上春樹だったら投げっぱなしになるだろうけど。

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『起終点駅(ターミナル)』

『起終点駅(ターミナル)』
桜木紫乃
小学館文庫、2015/3/6、¥648(BO360)

北海道を舞台にした短編6編。印象に残ったのは

かたちないもの: 化粧品会社で店をまとめる真理子は、かつて上司だった竹原の葬儀に呼ばれ、函館に行く。会社で幹部を約束された竹原は、母の介護を理由に会社を辞め、函館に戻って孤独な生活を送っていた。真理子は竹原の思いを受け止める。

それ以外の短編も、著者らしいキレの良さがあり、人間の孤独を主題にした短編集としてよくできている。

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『1Q84 BOOK2〈7月‐9月〉後編』

『1Q84 BOOK2〈7月‐9月〉後編』
村上春樹
新潮文庫、2012/4/27、¥594(BO360)

小学校の時に天吾と同級生だった青豆は、天吾をただ一人の人と定めていた。リーダーに自分を殺して天吾を救う代わりに「さきがけ」に殺される道を選ぶか、、リーダーを殺さず青豆も死なない代わりに天吾が「さきがけ」に殺されるか選ぶよう迫られ、リーダーを殺害する。再び池尻をタクシーで訪れた青豆は、そこにすでに非常階段はなく、1984に戻る道が閉ざされていることを知る。そして最後に天吾を思いながら銃口を自分の口に入れる。

天吾は、青豆のことを思いながら、再び千葉の療養所を訪れ、自分が小説家を目指すつもりであることを父に告げる。

本巻で、青豆は象徴的な父を殺し、自らも命を絶とうとする。一方天吾は、父に別れを告げ新しい道を歩む。結局本作は、対照的な二人の道を通じて父との対決を描いた小説ということができるのではないか。

相変わらず、小説の筋としては伏線は回収されず、リトルピープルが結局何者であるかはわからず、「さきがけ」についてもその正体は完全には明かされない。それでも引き込まれて読んでしまうところが村上春樹の小説というものだろう。

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『1Q84 BOOK2〈7月‐9月〉前編』

『1Q84 BOOK2〈7月‐9月〉前編』
村上春樹
新潮文庫、2012/4/27、¥637(BO360)

青豆は、リーダーの殺害に向け準備を整える。しかし友人となったあゆみが何者かに殺害されたことにより、「さきがけ」の手が伸びていることを知る。リーダーに対面した青豆は、すでに彼が青豆のことをよく知っており、リトルピープルの支配から逃れるために殺害されることを望んでいることを知る。

天吾は、ある団体から奨学金の申し出を受けるが、それが「さきがけ」からの警告であることを知る。天吾は、千葉の療養所にいる父に会いに行き、認知症になっている父に向かって過去のわだかまりを全て吐き出し、過去を清算する。

本巻では、天吾と父の対決、青豆とリーダーの対決という対照的な二つのストーリーに彩られる。物語は急展開し、目を離せない。

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『1Q84 BOOK1〈4月‐6月〉後編』

『1Q84 BOOK1〈4月‐6月〉後編』
村上春樹
新潮文庫、2012/3/28、¥637(BO360)

青豆がなぜ殺人者の道を選んだかが語られる。スポーツクラブでインストラクターをしていた青豆は、ある老婦人に個人レッスンをするうちに、彼女がDVを受けた女性たちをかくまうセーフハウスを営むことを知る。合法的な手段ではどうしても解決できない事案について彼女が対象の男を葬っていることを知り、青豆は彼女に手をかすことを決意する。そして青豆は「さきがけ」から逃げてきた少女を暴行していたリーダーの殺害を依頼される。

天吾が書き直した「空気さなぎ」は、新人賞を受賞し、好調な売れ行きを記録する。しかしそんな中ふかえりが行方不明になる。

青豆と天吾、ふかえりとの関係が「さきがけ」を中心として回り始める。とても惹きつけられ、あっという間に読み終わった。

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『1Q84 BOOK1〈4月‐6月〉前編』

『1Q84 BOOK1〈4月‐6月〉前編』
村上 春樹
新潮文庫、2012/3/28、¥637(BO360)

青豆はある事情から殺人を請け負っている。首都高池尻の渋滞で予定時刻に遅れそうになった青豆は、タクシーを降り、非常階段から地上に降りる。その時から時間の流れが1984年から1Q84年に変わり、月が二つになった。一方、天吾は、ふかえりの書いた小説「空気さなぎ」を書き直すことと編集者の小松に依頼される。

青豆は、身に覚えのない山梨県内で起きた警察と過激派の闘争について新聞で確認し、自営コミューン「さきがけ」と、そこから分派した革命的「あけぼの」についての経緯を知る。天吾は、ふかえりが「さきがけ」から脱出してきたことを現在の保護者戎野先生に聞く。

青豆と天吾の視点から、物語が交互に描かれる。最初は別々に進むが次第に距離を狭めていく感じが『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』に似ている。

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『もういちど村上春樹にご用心』

『もういちど村上春樹にご用心』
内田 樹
文春文庫、2014/12/4、¥724(博文堂信濃町)

『無花果とムーン』のあとがきで言及されていたので買ってみた。村上春樹の小説に通底する主題を鮮やかに解説し、同時にどのように読むべきか、そして時代によってどのように変遷してきたか、がわかる。

著者は、村上春樹の特徴は、常に邪悪なものに危険にさらされる日常生活を守る為に雪かきをするがごとく、小さな力で小さな秩序を取り戻そうとするセンチネル(歩哨)を主人公にしていること、そして父の不在が主題になっている、と説く。そして1Q84で父の不在は解消され、父の支配をどのように逃れるかが一つの主題となる。

今までなんとなく読んでいた村上春樹の小説に、明確な補助線を引くことができて、大変面白く読んだ。

▲『冬のソナタ』と『羊をめぐる冒険』の説話論的構造は、複式夢幻能を元にしたもの。(p.116)

●(内田)サリンジャーはさすがにそのとき読まなkッタですけど、『ギャツビー』はグイグイきましたね。チャンドラーはどの本を開いても、傷ついた男のメンタリティに本当に寄り添ってくる。世の中に多少投げやりな気持ちになって、価値のあるものなんか何もないと思っても、最後に踏みとどまって、「生きていけば少しはいいことがあるかもしれない」っていう一筋の期待を持って強がりながら生きていく、みたいな。(p.151)

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『硝子の葦』

『硝子の葦』
桜木 紫乃
新潮文庫、 2014/5/28、¥594(借)

釧路でホテルローヤルを営む幸田喜一郎が交通事故で意識不明の重体になった。看病を続ける妻節子は、偶然から短歌仲間の佐野倫子と娘が夫に虐待されていることを知る。倫子の夫殺害計画に加担した節子は、実母で喜一郎の元愛人律子を殺害し、逃亡を図るが、税理士の不手際で逃げ切れない。

せっかく運命から逃げ切ろうとしている節子を、税理士の澤木が空気を読めずに台無しにするところがなんともやりきれない。そこは黙って見送るところだろう、という不満が残った。

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『無花果とムーン』

『無花果とムーン』
桜庭 一樹
角川文庫、2016/1/23、¥691(博文堂信濃町)

18歳の女子高生月夜は、血の繋がらない次兄奈落をアレルギーで亡くなるところを見て動転する。周りが気を使う中、月夜は奈落をあの世から呼び戻し、外からやってきた青年の体を借りた彼と一夏の不思議な経験をする。

この小説は、あとがきに書かれた本書の発想についての解説が面白かった。本書は内田樹の「もう一度村上春樹にご用心」に書かれた腹式夢幻能を下敷きに書かれていて、それは「正しい壮麗を受けていない死者が吹く模写の任に当たるべき聖者の元を繰り返し訪れるという話題は人類の発生と同じだけ古い。だから、あらゆる文学作品の中にその話型は繰り返される」という引用によって明らかにされている。

本書は内容も面白かったが、形式を意識して読むと一層面白さがわかる小説と言える。

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『氷平線』

『氷平線』
桜木紫乃
文春文庫、2012/4/10、¥637(博文堂信濃町)

北海道を舞台にした短編集。特に印象に残ったのは、

「雪虫」 フィリピンから嫁をとった達郎は、すでに人妻となった幼馴染の四季子と不倫をしていたが、健気な嫁マリーと暮らすうち、彼女を嫁として大事にすることを決心する。

「霧繭」 着物の仕立てを生業とする真紀は、師匠の千代野から看板を譲られる。市内の大手呉服店の女将ひな子は、ひな子は、真紀がかつて関係を持ったことのある呉服店の部長山本との関係を復活されるために一計を案じる。

「水の棺」 西出歯科クリニックで働く歯科医師良子は、院長の西出との関係を清算し、僻地の歯科医院へ赴任する。西出はその経営方針を誹謗中傷され、閉院を余儀なくされる。良子は、脳梗塞で倒れた西出を引き取ることを決意する。

●結婚と離婚を経て四十を目前にしてみると、困った時に一人で切り抜ける覚悟さえしておけば、案外困難などは訪れないものだということもわかってきた。厄災は、人に頼る気持ちが引き寄せる。今頃になって、それが母の口癖だったことを思い出した。(「霧繭」p.70)

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『誰もいない夜に咲く』

『誰もいない夜に咲く』
桜木 紫乃
角川文庫、2013/1/25、¥562(借)

北海道を舞台にした短編集7編。特に印象に残ったのは、

「波に咲く」 牧畜を営み、中国人花嫁花海を迎えた秀一は、子供がなかなかできないことで両親から責められていた。ある日、青年会の集会に出かけて戻れなくなった秀一は、父が花海に手を出したのではないかと不安になる。花海は日本語ができない振りをしていたが、ひょんなことから日本語ができることがわかり、秀一は花海に問いただす。今まで決心がつかなかった秀一は、花海と街へ出る決心をする。

「フィナーレ」 風俗誌の記者をしていた潤一は、ある日ストリップ劇場の取材で見た志おりに惹かれる。志おりの引退を機に心を改め、地方テレビ局のリポーターの仕事を得た潤一は、しばらくして地方の取材に行った際、たまたま入った喫茶店で志おりを見つけるが、声をかけられない。

「絹日和」 奈々子は、師匠の珠希に頼まれ、息子の結婚式で嫁の着付けを頼まれる。一ヶ月毎日練習して勘を取り戻した奈々子は、夫の孝弘との離婚を決意する。結婚式の着付けを無事に終えた奈々子は、珠希の元へ戻ることを決める。

桜木紫乃の作品は、ダメ男と毅然とした女、というのが一つのパターンになっているが、行き所を失った女性が新しい生き方を求める過程が非常に精緻に描かれ、説得力がある。

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『ビジネスマンのための最新「数字力」養成講座』

『ビジネスマンのための最新「数字力」養成講座』
小宮 一慶
ディスカヴァー携書、2016/6/16、¥1,080(有隣堂亀戸)

「数字力養成講座」に最新の数字を加えて改訂した本。基本的には以前のものと同様な内容だが、東京電力や九州新幹線の決算書を説明したり、国立競技場の2500億を「たった」と評価する根拠などについて述べている。

数字の読み方を考えるのに良い本。

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『本音で生きる 一秒も後悔しない強い生き方』

『本音で生きる 一秒も後悔しない強い生き方』
堀江 貴文
SB新書、2015/12/5、¥864(有隣堂亀戸)

タイトル通り、いかに本音で生きるかを説いた本。賛否はあろうが、堀江の本は非常に積極的で、心が前向きになる。

▲自分の得意(コアバリュー)に時間を使い、不得手・無駄な時間はそれが得意な人に外注する。(p.130)

▲大量にアウトプットし、「自分で考える」ことを繰り返す
 大量の情報が脳に定着し、何らかのきっかけで情報同士の結びつきが生まれる。このプロセスを最大限効果的に行うには、アウトプットすることと、自分で考えることの繰り返しが欠かせない。
 アウトプットは、手帳に書き込むのでも人に話すのでもいいが、今ならtwitterやFacebookといったSNSやブログが一番手っ取り早いだろう。大上段に構えて、無理に長文を書こうとしなくてもいい。僕はニュースキュレーションアプリで興味を持ったニュースについては、自分のサイト「HORIEMON.COM」で短いコメントを書き込むようにしている。[略]
 自分の意見をうまくアウトプットできないと悩む人もいるが、それは単にインプットしている情報量が足りていないだけだ。インプットの量とスピードを増やせば、自然とアウトプットの量やスピードも増え、自分なりの考察が自然と湧き出てくるようになる。頭を使うべきは、自分の考察をどうひねり出すかではなく、インプットの量とスピードをいかにして向上させるかなのだ。(p.158-159)

●大事なのは"Give, Give, Give" (p.174)


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『「暗黒・中国」からの脱出 逃亡・逮捕・拷問・脱獄』

『「暗黒・中国」からの脱出 逃亡・逮捕・拷問・脱獄』
顔 伯鈞 (著), 安田 峰俊 (翻訳)
文春新書、2016/6/20、¥842(有隣堂亀戸)

ある共産党員が、民主活動をしたために当局から迫害を受け、それを逃れるために中国国内を転々とした挙句、タイヘ逃亡するまでの話を、『和僑』の著者が聞き取って書籍にしたもの。

昔の梁山泊や任侠物でも読んでいるような気にさせられる逃亡記で、中国は現代になっても王朝時代と政府も人も性格が変わっていないことがはっきりわかるドキュメンタリーで、中国人の心根がよく理解できた。面白く読んだ。

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