« 『レインツリーの国』 | トップページ | 『泣き虫弱虫諸葛孔明 第参部』 »

『ワーキング・ホリデー』

『ワーキング・ホリデー』
坂木 司
文春文庫、 2010/1/8、¥670(BO360)

売れないホストをしていた沖田大和の元に突然息子を名乗る小学生・進が現れる。客を殴ったことでクビになった大和は、オーナーのジャスミンの計らいで宅配便の配達員に転職する。家に上がり込んだ進は料理屋掃除など何でもこなすできた少年だった。不思議な同居生活を始めた二人は夏休みの間に様々な経験を通じ親子の絆を深めていく。

ホストをしているような男がいきなり現れた小学生を本書のように自然に受け入れるかどうか。また、別れて10年も経ち連絡も取らなかった妻由希子が、どのような気持ちで息子を父の元に送ったのか。少し現実味が乏しいとも言えるが、ある種のおとぎ話として楽しく読んだ。本書の登場人物のようにお互いをいたわれる人達ばかりであればもっといい世界になっていただろう、としみじみした。

▲「あたしと仕事と、どっちが大切なの!』
女はこの台詞が意味なんかなさないことを最初から知っている。けれど、それでも口に出さずにはいられない時があるのだ。それは。
「…寂しいんだよね。会えなくてつらくって、高らあえてすっごく嬉しいのに文句言っちゃうんだ。それでいっつも喧嘩になっちゃう」
 そうしてこんなに寂しい思いをさせるの。あなたが好きだからこんなに辛いんだよ?月じゃなきゃこんなに怒らないんだからね?そこんとこ、わかってるの?
「ただ、ごめんねって抱きしめてほしかっただけなの…」(pp.234-235)

▲あいつが背中を向けて去った後、俺はただ落ち葉の舞い散る路上に呆然と立ち尽くしていた。
 ホストのヤマトから言わせてもらうと、これは典型的な馬鹿男の行動だ。苗zなら、この時点で彼女の心はまだ取り返しがついたから。自分のために馬鹿をやる男に絶望し、別れを告げる。それは、例の痴話喧嘩と同じで、翻訳が必要な女の言葉だ。
 どうしてこんなに辛い思いをさせるの。あなたが好きだからこそ、あなたが怪我したら私も辛いんだよ?好きじゃなきゃこんなに辛くないんだからね?そこんとこ、わかってるの?
(ごめん、って抱きしめればよかっただけなのに)
 あの時、すぐに追いかけていれば。どんなに怒られても謝っていれば。しかし正解を知らない俺は、自分の感情に溺れるだけ溺れて由希子を置き去りにした。まさかその腹のなかに、俺たちのガキがいるなんて考えもせず。(pp.239-240)

☆自分を省みて、あのときああしていれば、と思い出すことが少し。

|

« 『レインツリーの国』 | トップページ | 『泣き虫弱虫諸葛孔明 第参部』 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/40886/63613978

この記事へのトラックバック一覧です: 『ワーキング・ホリデー』:

« 『レインツリーの国』 | トップページ | 『泣き虫弱虫諸葛孔明 第参部』 »