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『火花』

『火花』
又吉 直樹
文藝春秋、2015/3/11、¥1,296(BO760)

芥川賞受賞作。売れない漫才師徳永が、熱海の花火会場のイベントで出会った同じく売れない漫才師の神谷を師匠と思い定める。自分の才能を信じきれないまま神谷の異常とも言える漫才への執着に付き従い、彼の生活の破綻をそばで眺める。徳永のコンビはそれなりに売れたものの、相方の結婚を機に解消され、徳永も漫才をやめる。神谷は借金とりに追われながらも自分が信じる笑いへの執着を捨てられない。最後に二人は共に再び熱海の花火会場へ赴く。

まず、「火花」というタイトルが内容に合致していない。「火花」というほどの「火花」が作中で散っていない。徳永と神谷、徳永と相方、いずれも中途半端なぶつかり合いであり、命をかけ、命を削るほどの火花は見当たらない。次に、文章が練られておらず、非常に読みづらい。もう少し読者のことを考えて読みやすくすることを編集者は考えても良かったのではないか。第三に、ストーリー展開に深みやうねりがなく、ひたすら単調で、登場人物の心理の深淵を覗くことができない。特に神谷の異常行動については納得のいく説明がなく、ちょっとおかしな売れない芸人がやさぐれているだけにしか見えないのが残念。第四に装丁の意味がわからない。装丁家インタビューでは、表題は「イマスカ」で、中に人がいるのかいないのかが分からない曖昧部分を表現したとあるが、誰が、何が「いるのかいないのか」ストーリーとの関連が不明。

綿矢りさの『蹴りたい背中』を読んだ時は、一行目で痺れたが、本書にはそのような輝きはなく、ただ単調なストーリーを追っていくだけの内容で、それも読みづらい文章のためストーリーを追うのが一部困難だった。また、自分が読んだ小説の中では、命を削り、最後に受賞できないことを悲観して自ら命を絶った佐藤泰志の『海炭市叙景』の方が、人間の絶望感や深みをよく表現し、よほど受賞にふさわしい内容だと思った。最近の芥川賞はやはり読むに値しない作品が受賞している、という評価を否定できない。

「人生で大切なことはすべて書店で買える」に、普段読まない本を読め、と書いてあり、芥川賞受賞ということもあって買ってみたが、自分には合わない小説だった。

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