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『村上春樹 雑文集』

『村上春樹 雑文集』
村上 春樹
新潮文庫、2015/10/28、¥810(有隣堂亀戸)

デビューの頃から書かれてきた様々な文章を集めた、文字通り雑文集。久しぶりに村上春樹を読むと、その独特のリズムに乗せられるように気持ちよく読めて、文章がうまいなあ、と改めて思う。

●僕がサリンガス事件を扱った『アンダーグラウンド』を書いた時にも思い知らされたことだが、世の中のものごとには多くの場合、結論なんてないのだ。特にそれが重要なものごとであればあるほど、その傾向は強くなってくる。(p.47)

▲安西水丸画伯の不朽の名作『平成版普通の人』(南風社、1993/4)。僕はこの本が大好きで、いく先々でいろんな人に推薦している。(p.52)

●1991年から95年にかけて、アメリカに滞在していて、幾つかの大学で講義を持っていたのですが、そのとき週に一回一時間、「オフィス・アワー」というのがありました。「オフィス・アワー」というのはアメリカの大学特有の制度で、週のうちのある決められた時間には、誰でも先生の件キュ室のドアをノックして、生徒と先生という枠を離れて、なんでも自由に話をすることができます。質問したければ質問をしてもいいし、相談したければ相談をしてもいいし、ただ世間話をしても構いません。とてもカジュアルで自由な時間なのです。(pp.89-90)

☆会社でも同じことができると良い。

●オウム真理教に帰依した何人かの人々にインタビューした時、僕は彼ら全員にひとつ共通の質問をした。「あなたは思春期に小説を熱心に読みましたか?」。答えはだいたい決まっていた。ノーだ。彼らのほとんどは小説に対して興味を持たなかったし、違和感さえ抱いているようだった。人によっては哲学や宗教に深い興味を持っており、そのような種類の本を熱心に読んでいた。アニメーションにのめり込んでいるものも多かった。言い換えれば、彼らの心は主に形而上的思考と視覚的虚構との間をいったりきたりしていたということになるかもしれない(形而上的思考の視覚的虚構化、あるいはその逆)。

☆オウム真理教の信者はフィクションと現実の境を見つけることができなかった。それは小説を読んでいなかったことに起因する。麻原彰晃は分かりやすい世界観を提示することで、フィクションに免疫を持たない人間を取り込んだ、と村上は考えている。


●オウム真理教の信者と話し合った後で、僕は考えるようになりました。小説が基本的に求めているのは、人々の魂の、安全な(少なくとも危険ではない)場所への、自然なソフト・ランディングです。(pp.449-450)

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