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『超したたか勉強術』

『超したたか勉強術』
佐藤 優
朝日新書、2015/4/13、¥821(吉田書店大島)

イギリスの中等教育で使われる歴史教科書を題材に、物事をいかにとらえ、整理していくかを学ぶ本。

イギリスの歴史教科書は自らの帝国主義を隠すことなく、植民地からの視点ではなく、徹底的に宗主国としての立場から生徒に考えさせ、帝国主義がいかに失敗していったか、そしてそれを将来にどのように活かすか、ということを学ばせる。その中で、教科書は物事を断定せず、必ず両面で考える問いを出すことによって多様な物の見方を培い、イギリスの歴史というものを体得させていく。

イギリス教育におけるディベートが、ディベートとしてでなく、教科を学ばせるために使われるということに、日本の教育の今後の方向性を見ることができる。

●[歴史教科書の] 設問が興味深いのは、「たとえあなた自信がこの考え方に同意しなくても、そのようにしてください」と要求しエチル琴だ。抑圧者、被抑圧者の立場を換えて、双方の論理を追体験させようという構成になっているのだ。
 日本でも大学の専門教育やディベートの授業等では個々人の賛否は留保して上で、それぞれの立場から論証するという方法がとられているが、イギリスでは中等教育の段階から、こうした多角的な思考のトレーニングが行われている。
 こうした訓練を繰り返し行うことで、自分なりの態度や考えを決めるためのプレゼンテーション力が強化され、問題へのアプローチが複数あることを気づかせ、より柔軟で適切な選択ができるようになるのだ。
 日本を生活の基盤にする私たちが学ぶべきは、この教科書に書かれたイギリスの帝国主義の歴史そのものではない。課題設定やディスカッション、演習を通して得られる「思考の技術」なのである。(pp.69-70)

●[シャルリーエブド襲撃犯は、] 投降した上で裁判闘争を展開するつもりだったのではないかと推測できる。しかし、フランス当局は、逮捕して背後関係を解明するメリットよりも、公判をテロリストの宣伝の場にするデメリットの方が大きいと判断したのであろう。治安部隊は現場で犯人を射殺した。死刑制度がない国では現場で超法規的な死刑を行うことがあるが、今回のケースがそれに該当すると見ていい。(pp.221-222)

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