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(日本人)

(日本人)
橘 玲
幻冬舎文庫、2012/5/11、¥788(L)

一般に流布している「日本人は武士道に基づく精神性を持ち、西欧とは違っている」といった言説は、実は事実と異なっており、本来の日本人は徹底して世俗的である、という本。
著者が信奉する進化心理学に基づいた説は身もふたもない(人間は動物であり、生存に有利な遺伝子を持つものが残り、不利な遺伝子を持つものは淘汰される)ものだが、大変説得力があった。

●ヒトは社会的な動物で、集団が亡くなってしまえば生きていけないのだから、アイデンティティというのは集団(共同体)への帰属意識のことだ。「私」とは「奴ら」に対する「俺たち」のことで、「敵」を生み出すのはヒトがヒトであるための定義ともいえる。
 私たちが遠い祖先から受け継いだプログラムは、世界を内側(俺たち)と外側(奴ら)に分け、仲間同士の結束を強め、奴らを殺して貴重な資源(女)を奪うためのものなのだ。(p.109)

▲日本人の特徴と考えられてきたものは、「人間の本性」と「農耕社会の本性」で説明でき、それは世界の農耕社会に似ている。(p.130)

●日本には、「空気=世間」のほかに、「水=世俗」という原理がある。「水を差す」とは、「空気の支配」に対して世俗の原理をぶつけることだ。「そんなことやったって、しょせん損するだけだ」といわれたとき、それまでの盛り上がっていた議論は水を差され、現実(世俗)に引き戻される。(p.170)

●日本では、人間関係は"場"から生まれる。"場"を喪ってしまえば、私たちは孤独に戻っていくしかない。(p.187)

●古代ギリシアの民主政とは、加入も退出も自由なオープンな社会が、共同体の構成員に自らの意志で国家と神への忠誠を誓わせ「富国強兵」を目指す政治=軍事制度だった。これは地中海という特殊な地域にのみ生まれた社会の仕組みで、退出可能性のない農耕社会でデモクラシーや弁論術が育たなかったのは当然なのだ。(p.217)

●グローバル化というのは、ひとびとの欲望や正義感情に寄って、グローバル資本主義とリベラルデモクラシーが世界を覆っていく永久運動のことだ。(p.267)


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