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『残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法』

『残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法』
橘 玲

自己啓発で能力は開発できる、という言説は必ずしも正しくない。どれほど努力してもできない人はできない。では、どうすればよいか。資本主義は比較優位の世界であり、絶対的能力はAさんがBさんより勝っていても、Aさんがより得意な分野に特化し、Bさんが得意な分野(ただしAさんよりは劣る)によってAさんとのwinwinの関係を作っていくしかない。したがって、結論としては自分の得意なことを仕事にするしかない。また、ロングテールの時代において、どれほどマイナーな分野もロングテールの構造をしており、自分がショートテールになれるところまで分野をブレークダウンして、そこで生きていこう、という趣旨の本。

「伽藍からバザールへ」というのは、伽藍=会社構造、バザール=ショートテールで参入退出が自由、と置き換えて会社にこだわらず自分の好きな仕事で生きて行く道を見つけようというキャッチフレーズ。

ほとんど救いになっていないような解決法が提示されているが、これこそ表題にある「残酷な世界」での処方箋だ、と言われれば一理あるだろう。

⚫️[無限回繰り返す囚人のジレンマのゲームをコンピュータプログラムに置き換えて競ったゲームにおいて] この競技を制したのは全プログラムのなかでもっとも短い「しっぺ返し戦略」と名付けられた単純な規則だった。しっぺ返し戦略は、次の二つの規則からなっている。
1. 最初は協力する
2. それ以降は、相手が前の回に取った行動を選択する (p.134)

☆実際のビジネスでも同様。

⚫️かつてのお金持ちは、お城のような建物の最上階の奥まった部屋に潜み、超越的な権威で周囲を畏怖させ、組織を睥睨し支配する権力者だった(西武鉄道グループのオーナーだった堤義明みたいに。それが今では、世界中を飛び回り、ひととひと、ビジネスとビジネスを結びつけることで富を生み出している(ソフトバンクの孫正義がその典型だ)。彼らは権力ゲームの勝者ではなく、貨幣空間のトリックスターだ。(p.144)

☆著者の分析では、世界は愛情空間と友人空間からなる政治空間から貨幣によって繋がれる貨幣空間に移行しているという。

⚫️地縁や血縁の強い絆で結ばれた政治空間(安心社会)では、社会的な地位はコネによって決まる。その一方で、ひととひととが弱い絆でつながる貨幣空間にも、紹介という"人脈拡張機能"が備わっている。そして面白いことに、困った時に本当に役に立つのは強い絆の「コネ」ではなく、弱い絆の「紹介」なのだ。(p.152)

⚫️[様々な調査の結果] アメリカの労働者の方が日本のサラリーマンよりもはるかに仕事に充実感を持ち、会社を愛し、貢献したいと思っていたのだ。「日本的経営は社員を幸福にする」という、誰もが信じて疑わない「常識」はでたらめだった。日本人は、むかしから会社が大嫌いだった--。驚天動地とは、まさにこのことだ。(p.241)

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