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『蛍坂』

『蛍坂』
北森 鴻
講談社、2007/9/14、¥535(BO310)

香菜里屋シリーズ第3作。引き続きビアバー香菜里屋のマスター工藤が客の持ち込む謎や悩みを解いていく。夢を追うために女性と別れ海外に渡った写真家が16年ぶりに戻って知った彼女の覚悟を知る表題作のほか、猫の石像に謎の女性の顔が浮かぶという怪談の謎、三軒茶屋再開発に頑強に反対していた画材店の女主人が突然閉店して表面化する当時対立していた男たちの動揺と葛藤、香菜里屋を題材にした殺人事件を書くことで小説家を目指していた友人を発奮させようとする作家、亡くなった従兄が残した「狐拳」という名酒を探しまわる女性の話、など今作も温かさの中にも人生の厳しさを上手く織り交ぜた短編集となっている。

今は時代遅れとなったアナログ製版の話なども出て来て、大変面白く読んだ。

●専門学校を出て十五年、写真製版のレタッチ一筋に関わり、それなりの技術を習得したつもりになっていた。ことに、剃刀一丁手にして写真を輪郭に添って切り抜く「ヌキ」の作業には自信もあったし、周囲の評価も高かった。勤めていた印刷会社が左前になり、早期退職社を募ったときにも、俺にはたとえ会社を辞めても手に職があるから大丈夫。すぐにでも新たな勤め先が見つかるに違いないと高をくくって、辞職願を出した。ところが。(p.140)

☆ちょうど時代の境目でデジタル化が急速に進み、旧世代が取り残されていく様子がよく描かれている。


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