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『「戦国大名」失敗の研究』

『「戦国大名」失敗の研究』
瀧澤 中
PHP文庫、2014/6/4、¥778(丸善日本橋)

武田勝頼、足利義昭、柴田勝家、石田三成、豊臣秀頼などを例にとり、戦国時代に生き残るために必要な資質を「政治力」という観点から論じた本。本書では「政治力」= 「人気と信頼感」の意味で使われている。

それぞれに優秀な資質を持ちながらある者は生き残り、ある者は滅びた。そのわずかな差が、「政治力」という表には見えない力によって致命的なまでに拡大されてしまう、という点は、現代にも通じる教訓になる。

●社会心理学社のジョン・フレンチとバートラム・レイブンは、勢力について興味深い分類をしている(齋藤勇編『社会的勢力と集団組織の真理』)。
1) 報酬勢力 AはBに対して報酬を与える力を持っている、とBが考える。
2) 強制勢力 AはBに対して、罰を与える力を持っている、とBが考える。
3) 政党勢力 AはBの行動を決める正当な権利を持っている、とBが考える。
4) 準拠勢力 BがAに対して魅力を感じ、Aと一体でありたい、と考える。
5) 専門勢力 Aはと特定分野で、専門的な知識や技術を持っている、とBが考える。
これに加え、バートラム・レイブンは
6) 情報勢力 Aの知識や情報の伝達が、集団の外にいるBに影響を及ぼす。
という勢力を加えた。(pp.160-161)

☆家康と光成に関し、1〜3は双方互角、4について家康は各大名に様々な便宜をはかり光成を凌駕していた。5についても、家康は戦歴・経歴の差で光成に大差。6に関しては、「Aはすごいらしいぞ」という評判の意味で、当然「家康はすごいらしいぞ」という勢力の方が強い。以上から、数の上で勝っていても光成の勝利は難しかったというのが著者の分析。現代でもこの分析は的を射ている。

●今も政治力は意識する者に力を与え続けている
 受け継いだ政治力を活かすには、第一に勤勉さが必要である。
 資産や家柄を引き継ぎ、あるいは強大な組織の中にいた者。いずれにしても、歴史は怠惰な者に権力を握らせてはいない
 第二に、現状を正しく認識する謙虚さ。
 第三に、先代は、後継者が人事刷新できるだけの人材を事前に養成しておく。
 第四に、意識して政治力を保持する(人気と信頼の醸成)。
ということは言えそうである。(p.298)

●政治力は、一見自分のためのものと見えるが、正しい政治力は、自分以外のもののために使われる。政治技術として他人への懐柔はあっても、それが主目的ではない。(p.299)

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