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【the Economist 読解】 「言わざる」になる日本のメディア

The media in Japan
Speak no evil (言わ猿、悪を言わず)
The Economist, May. 16, 2015

Discreet interventions by politicians have long been customary. But bullying recently broke into the open when a bureaucrat turned political gadfly, Shigeaki Koga, accused the government on a television show of strong-arming the media by securing his removal from “Hodo Station”, a news show owned by TV Asahi, a liberal broadcaster. The ruling Liberal Democratic Party (LDP) promptly proved Mr Koga’s point by grilling the programme’s producers over the outburst under the auspices of Japan’s broadcast law.

政治家による控えめな干渉は長い間習慣となってきた。しかし、官僚から政治的うるさ型となった古賀茂明が、テレビ番組で、リベラルな放送局であるTV朝日のニュース番組「報道ステーション」からの彼の解任を確保したことによりメディアを脅した、と政府を非難したことにより、脅しが最近急に明るみに出た。

与党自由民主党は、日本の放送法を要して混乱について番組のプロデューサーを問いただすことによって、古賀氏の論点をすぐに証明した。

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『新釈 走れメロス 他四篇』

『新釈 走れメロス 他四篇』
森見 登美彦
祥伝社文庫、2009/10/15、¥607(BO360)

表題の通り「走れメロス」を始めとする日本文学の名作4編を、著者の解釈で構造のみ借受け、新しい設定で物語を構築する。自らを頼むところすこぶるあつい京都のとある大学生齋藤秀太郎が、永遠に完成しない小説を書きながらついに狂う、という「山月記」に始まり、女性を主人公にした自主映画を巡る人間模様を描いた「藪の中」、必ず戻るという約束をいかに守らないかに腐心する主人公を悪役が追跡する「走れメロス」、齋藤に私淑しながら女の言うことを聞いてベストセラー作家になったものの幸せになれない「桜の森の満開の下」、百物語をやると言われて会場に行ったものの主催者は一向に姿を見せない「百物語」、とそれぞれ個性的な作品に仕上がっている。

構造のしっかりした名作を森見風に換骨奪胎するとこのようになる、という味わいのある本。

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『書店ガール』

『書店ガール』
碧野 圭
PHP文芸文庫、2012/3/29、¥741(丸善日本橋)

テレビドラマがいろいろな意味で話題になっていたので買ってみた。

中堅書店チェーンの吉祥寺店副店長の理子。部下でお嬢様の亜紀とそりが合わずぶつかってばかりいる。そんな中前店長が異動になり理子は店長に昇格するが、告げられたのは半年後の閉店までのつなぎという屈辱的な役目だった。損益分岐点まで売上を増加させることを条件に店舗存続を社長に掛け合った理子は、店に残った店員たちと絶望的な戦いを始める。

女性作家ということと著者自身が女性主人公を描きたい、という意向を持っていたためか、途中までは主人公二人を巡る女性特有の人間関係の描写に終始していてあまりうまくテンポに乗れなかった。が、店長に昇格した理子が契約社員店員三田からのきつい一言で目覚め、店舗存続のために立ち上がるあたりから話が流れ始め、最後まで面白く読むことができた。

本書を読んでいて、「どこかで読んだ話だな」という既視感がずっとあったが、舞台が書店というだけで、反目していた主人公二人が協力して、、、という同じようなストーリーの話は色々あるので、そのためかもしれない。テレビドラマ化にあたって、亜紀は一見単純そうで非常に演ずるのが難しい役柄なので、AKBにやらせたのは確かに冒険だったと思う。

●[母親が余命いくばくもなくなり、父親から治療費のため私学進学を諦めるよう言われ、落ち込んだ理子が、近所の一伸堂書店に来ると]
 その日も、店主はいつものように穏やかに迎えてくれた。だけど、いつもと違うのは、珍しく自分から本を薦めてくれたのだ。
『これ、面白かったから、読んでみない?』
 当時、評判になっていた吉本ばななの『キッチン』だった。たぶん、いつもなら買わないタイプの本田。想定が少女趣味な気がしたし、すごく売れているという事実がなんだか嫌だった。若かったこともあって、当時はベストセラーになる本に対して反発を感じていた。ベストセラーになるということは、普段本を買わない人が好む本ということだから、自分のような本好きとは相容れないものだ、と思っていたのだ。
 それでもその本を買って返ったのは、たまたま誕生祝に叔母にもらった図書券五千円分が手つかずで残っていたことと、そんな状況だったから、いろんなことがどうでもいいや、と思えたのだ。おじさんが勧めるんだから、なんでもいい。
 だけど、それを読んで泣いた。
 家族を喪うことの悲しみ、孤独。癒しがたい空白感。絶望と、再生に向かう意志。
 そこに書かれていることは、これから自分に降り掛かることだと思えた。作り話だし、どこか少女漫画のようだと思ったけれど、臆面もなく泣けた。母の病気の話を聞いた時は泣けなかった。ことの深刻さに、ショックで泣くこともできなかったのだ。だが小説なら泣ける。泣いてないて一晩中泣き明かして、そうしてすっきりした。泣いて気持ちを吐き出したことで、前に進める気持ちがわいてきた。(pp.252-253)

☆単行本出版時にはなかった部分らしいが、この部分こそが本作の白眉ではないか。理子の本に対する思い、本が人に語りかける力、癒す力をこれほど雄弁に語るこの部分だけで、本書を読む価値がある。

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『「戦国大名」失敗の研究』

『「戦国大名」失敗の研究』
瀧澤 中
PHP文庫、2014/6/4、¥778(丸善日本橋)

武田勝頼、足利義昭、柴田勝家、石田三成、豊臣秀頼などを例にとり、戦国時代に生き残るために必要な資質を「政治力」という観点から論じた本。本書では「政治力」= 「人気と信頼感」の意味で使われている。

それぞれに優秀な資質を持ちながらある者は生き残り、ある者は滅びた。そのわずかな差が、「政治力」という表には見えない力によって致命的なまでに拡大されてしまう、という点は、現代にも通じる教訓になる。

●社会心理学社のジョン・フレンチとバートラム・レイブンは、勢力について興味深い分類をしている(齋藤勇編『社会的勢力と集団組織の真理』)。
1) 報酬勢力 AはBに対して報酬を与える力を持っている、とBが考える。
2) 強制勢力 AはBに対して、罰を与える力を持っている、とBが考える。
3) 政党勢力 AはBの行動を決める正当な権利を持っている、とBが考える。
4) 準拠勢力 BがAに対して魅力を感じ、Aと一体でありたい、と考える。
5) 専門勢力 Aはと特定分野で、専門的な知識や技術を持っている、とBが考える。
これに加え、バートラム・レイブンは
6) 情報勢力 Aの知識や情報の伝達が、集団の外にいるBに影響を及ぼす。
という勢力を加えた。(pp.160-161)

☆家康と光成に関し、1〜3は双方互角、4について家康は各大名に様々な便宜をはかり光成を凌駕していた。5についても、家康は戦歴・経歴の差で光成に大差。6に関しては、「Aはすごいらしいぞ」という評判の意味で、当然「家康はすごいらしいぞ」という勢力の方が強い。以上から、数の上で勝っていても光成の勝利は難しかったというのが著者の分析。現代でもこの分析は的を射ている。

●今も政治力は意識する者に力を与え続けている
 受け継いだ政治力を活かすには、第一に勤勉さが必要である。
 資産や家柄を引き継ぎ、あるいは強大な組織の中にいた者。いずれにしても、歴史は怠惰な者に権力を握らせてはいない
 第二に、現状を正しく認識する謙虚さ。
 第三に、先代は、後継者が人事刷新できるだけの人材を事前に養成しておく。
 第四に、意識して政治力を保持する(人気と信頼の醸成)。
ということは言えそうである。(p.298)

●政治力は、一見自分のためのものと見えるが、正しい政治力は、自分以外のもののために使われる。政治技術として他人への懐柔はあっても、それが主目的ではない。(p.299)

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『窓から逃げた100歳老人』

『窓から逃げた100歳老人』
ヨナス ヨナソン、柳瀬 尚紀 (翻訳)
西村書店、2014/6/24、¥1,620(L)

書評で好評だったので借りてみた。

100歳の誕生日パーティーを目前に、主人公アランは老人ホームを脱出する。ひょんなことからギャングの金を盗み出し、途中で知り合った連中と珍道中を繰り広げながら逃げ回る。その合間にアランの過去が描かれる。帝政ロシア時代に爆破技術を磨き、フランコ・オッペンハイマー・トルーマン・ジョンソン・スターリン・毛沢東など名だたる世界のリーダーたちに影響を与えてきたことが明かされる。

どうも笑いのツボが違うようで、今ひとつどこが面白いのかよくわからなかったが、スケールが大きな話。一つ残念なのは、恐らく翻訳が練られていないためところどころ読むリズムが詰まってしまったところ。原著が英語でないので正解は不明だが、たとえば「アランは無政治だったので」といった文章はおそらく「ノンポリで」程度の訳の方が適切な気がした。

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『斜め屋敷の犯罪』

『斜め屋敷の犯罪』
島田 荘司
講談社文庫、1992/7/3、¥691(BO350)

宗谷岬の高台に斜めに立つ屋敷に招待客が集められる。吹雪の夜殺人が起こり、密室と思える状況で警察が手詰まりとなったとき、名探偵・御手洗潔が現れて鮮やかに解決する。

とはいえ、斜めに立つ屋敷というところから設定がエキセントリックで、現実感に欠けるきらいがあり、御手洗が登場するまでの前段が非常に長く、若干冗長。ただ、御手洗が登場してからはテンポよく、解決まで一気に読めた。

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『和菓子のアンソロジー 』

『和菓子のアンソロジー 』
坂木 司
光文社文庫、2014/6/12、¥713(BO410)

和菓子をテーマに10人の作家がそれぞれ書いた短編を集めたもの。和菓子そのものをテーマにしたものもあれば、和菓子を人をつなげる鍵にしたものもあり、と多彩な作品を楽しめる。特に、警察官がいきつけの和菓子店で、家族の悩みと姉の妹に対する葛藤を聞かされる話などは、うまいなあ、と思わせられた。

●男に騙されていたと知って妹が悲しむ。それが文子の復讐の筋書きだった。だが予想と反する結果となった。本人だけでなく、夫まで実家に寄生されるかと思ったら、耐えられなくなった。文子は電話で妹に積年の思いを語った。
 そんなこと、とつぜん言われても。だいたい、それってあたしのせい?おじいちゃんとお父さんとお母さんのせいじゃんーー
「そう言い返されるだろうって、思ってました」
 寂しげな声だった。
 文子も判っていたのだ。悪いのは妹ではない。妹を自分と違う育て方をした祖父と両親だ。怒りをぶつけるのなら三人であって、里香ではないと。
「でも里香は何も言わなかった。ごめんねとだけ言って、電話をきりました」(pp.72-73)


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