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『ばけもの好む中将 弐 姑獲鳥と牛鬼』

『ばけもの好む中将 弐 姑獲鳥と牛鬼』
瀬川貴次
集英社文庫、2014/2/20、¥562(L)

ばけもの好む中将宣能の怪奇探訪に付き合わされた宗孝は、夜毎泣くと言われる石を探しにでかけた先で、赤子を拾う。成り行きで預かることになった宗孝は、宣能を父と疑い様々に探りを入れるが、姉からの詮索を逃れるために「自分の子」と偽る。そのためさらに騒動は大きくなるが、母が伊勢の斎宮とわかってからさらに話は混迷の度合いを深めていく。

タイトルの言う化け物は出ないが、平安の物語という体裁ながら非常に読み易く、面白く読んだ。

●消えたはずの夢が再びよみがえる。かつて恋した、忘れられぬ彼女がそこにいてくれたからだ。横たわったまま呆然と見上げる安親を、枕元に座した彼女 [四の姉] がおだやかなまなざしで見つめ返している。離れていた分の年月が彼女の上にも流れていった形跡はあったが、それでも、いや、昔以上に彼女は魅力的だった。
「お気づきになられましたのね」
 話しかけられてもいまだ信じられぬ心地で、呆然としたまま安親は応えた。
「夢を…見ておりました」
「まあ、それはどんな?」
「昔の夢です。伊勢に行くのはいやだと、あなたに拒まれたあの日の…」
「ずいぶんと昔の夢ですのね」
 彼女はやわらかく微笑んだ。記憶にあるよりも数段、魅力的な微笑みに安親はうっとりと見とれてしまった。これが夢の続きなら、それでもいい。もっと長く続いてほしい。(pp.229-230)

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