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『悟浄出立』

『悟浄出立』
万城目学
新潮社、2014/7/22、¥1,404(丸善日本橋)

表題作を始め、中国の古典から題材を採った5篇の短編。「人生の見方まで変えてしまう連作集」と帯にある通り、中国古典の脇役から主役を眺める手法で、彼らの心中を生き生きと描き出している。悟浄の話や司馬遷の娘の話は、中島敦を思い出させる。

別の書評に悟浄出立は、中島敦の『わが西遊記』(「悟浄出世」「悟浄歎異」の二編)を思い出させると書いてあって、自分は読んでいないので、これを機に読んでみたい。

収録は次の5篇。それぞれ深く考えさせられる。「悟浄出立」「趙雲西航」「虞姫寂静」「法家孤噴」「父司馬遷」

●「なあ、悟浄よ」八戒はゆっくりとした口調で語りかけた。「いくさの極意とは、何だと思う?」
 およそ考えたこともない類の問いに、俺は言葉に詰まった。
「さあ…俺はただの捲簾大将(けんれんたいしょう)だった男だから、そんな物騒なことは皆目わからない」
「指揮官の精神を討つことさ」
 はっきりそれとわかる皮肉の響きがその言葉の端々に滲み出ていた。
「たとえ十万と十万が対峙して、どれほどの将兵の命が奪われようとも、いくさには何の関係もない。なぜなら、勝敗を決めるのは十万の兵の死ではなく、たった一人の指揮官の精神の死だからだ。もうこれ以上、戦いを続けられない、ただそれだけを相手の大将に思わせるために、二十万の将兵は死にものぐるいになって戦うわけさ[略] 」(pp.30-31)

☆物事の本質を打つことの重要性。

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