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『紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている』

『紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている』
佐々涼子
早川書房、2014/06/25、¥1,620(丸善日本橋)

日本製紙石巻工場が津波被害を被ってから復興するまでの一年間を描いたノンフィクション。早稲田出身者が真のジャーナリズム魂を発揮した時これほどの本を書けるのか、と認識を新たにした。

●本当に半年で復興できるのか。どんな問題が持ち上がるのか。それをできると信じるのは客観的に見ればギャンブルのようなものだ。
 では、勝率はどれぐらいか?
 トップがどれだけ勝利を強く信じることができるか。そして、勝てると信じる者がどれぐらい多いかで確率は上がる。それが組織だ。(p.121)

☆社長の芳賀が、被災後の石巻工場を視察後工場の立て直しを宣言した際の記述。

●当時、日本製紙はさまざまな国に紙を輸出していた。一番多かったのはオーストラリアの印刷会社向けだ。他にもニュージーランド、インド、東南アジア諸国、台湾、中国にも紙を使ってもらっている。アメリカの週刊誌『TIME』の薄い紙も、ここ日本製紙石巻工場の製品だった。(p.133-134)

●「日本製紙のDNAは出版用紙にあります。我々には、出版社とともに戦前からやってきたという自負がある。出版社と我々には固い絆がある。ここで立ち上げる順番は、どうしても出版社を中心にしたものでなければならなかったのです」(p.135)

☆抄紙機の再稼働の順番を巡り、当初は最新型のN6抄紙機を稼働しようとしたが、出版社・営業部門の要請により出版用紙を作る8号機を最初に再稼働させることに決まった経緯を説明する記述。

●「文庫って言うのはね、みんな色が違うんです。講談社が若干黄色、角川が赤くて、新潮社がめっちゃ赤。普段はざっくり白というイメージしかないかもしれないけど、出版社は文庫の色に『これが俺たちの色だ』っていう強い誇りを持ってるんです。特に角川の赤は特徴的でね、角川オレンジとでも言うんでしょうか」(p.145)

☆文庫出版各社の特徴。今まで知らなかった。

●倉田 [工場長] たち役員が、[8号機} マシンに清めの塩をまき、原料の入っている種箱に神酒を捧げた。紙作りに携わる職人たちはずっと、マシンはただの物体ではなく、そこに魂がこもっていると考えてきた。オペレーターたちは、たとえ破棄する紙であっても、決して靴では上がらない。魂が宿るマシンの製品は踏まないのだ。彼らはどこかで、畏怖と深い愛情をもって、マシンを扱っていたのである。(p.228-229)

●書店を探してみれば、作り手の覚悟が形になったような誇り高い一冊が見つかるはずだ。容易ではないが、見抜くのは読者の持つ役割だ。
 本が手元にあるということはオーストラリアや南米、東北の森林から始まる長いリレーによって運ばれたからだ。製紙会社の職人が丹精をこめて紙を抄き、編集者が磨いた作品は、紙を知り尽くした印刷会社によって印刷される。そして、装幀家が意匠をほどこし、書店に並ぶのだ。手の中にある本は、顔も知らぬ誰かの意地の結晶である。(pp.256-257)

☆本書は誇り高い一冊といってよいだろう。

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