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『30歳で400億円の負債を抱えた僕が、もう一度、起業を決意した理由』

『30歳で400億円の負債を抱えた僕が、もう一度、起業を決意した理由』
杉本 宏之
ダイヤモンド社、2014/7/18、¥1,620(有隣堂亀戸)

著者がエスグランドを創業し、上場し、倒産し、再起する間の回顧録。藤田晋のブログで推薦されていたので購入。

再起した理由については最後の数ページにしか書かれていないので内容とタイトルは一致していないが、著者が経営者として経験した様々なことはかなり真に迫って書かれているので勉強になった。もちろん、それでも全ては書いていないだろうけれど。

あと、ベンチャー企業経営者によくあることだが、藤田・堀江などの諸氏との交友が多く描かれていて、彼らへの感謝に多くページが割かれている。これについては、幻冬舎の社長のように交友を否定する経営者もいるので、賛否があるだろうが、どん底のときに精神面で支えてくれる友人がいるというのはよいことだと思った。

いずれにしても、会社を預かる人間は倒産させてはいけないということを最優先に考えて経営にあたるべきだ、ということを再認識させられた一冊。

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『ヘンな本あります―ぼくはオンライン古本屋のおやじさん2』

『ヘンな本あります―ぼくはオンライン古本屋のおやじさん2』
北尾トロ
風塵社、2003/5/7、¥1,620(L)

『ぼくはオンライン古本屋のおやじさん』の続編。ネット古本事業は年240万程度だが、本書内で色々なイベントへの出店による売上を含めて年400万程度の売上に伸びている。ある程度成功と言ってよいのだろう。

本書の内容は2000年から数年の話だが、その後事業環境は激変しているので、現在では杉並北尾堂も休業状態のようだ。その代わり、現在は長野県伊那市高遠で、「本の町プロジェクト」として古本事業を継続しているらしい。

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『古本屋開業入門―古本商売ウラオモテ』

『古本屋開業入門―古本商売ウラオモテ』
喜多村 拓
燃焼社、2007/05/16、¥1,944(L)

青森で古本屋を営む著者による解説書。解説とはいいながら、非常に厳しい内容で、7年前にすでに低落傾向に会った書籍売上に並行して古本業も厳しいということが切々と述べられる。その上で、それを承知した上で古本業に参入しようとする覚悟のある若い人に期待してあえて厳しく書いてある。

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『本屋さんのアンソロジー』

『本屋さんのアンソロジー』
大崎 梢
光文社文庫、2014/8/7、¥713(有隣堂亀戸)

十人の作家が書いた、書店を巡る短編集。それぞれほっとする小品で、心を鎮めるのにちょうどよい。


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『乱世を勝ち抜く参謀学―秀吉を天下人にした半兵衛と官兵衛』

『乱世を勝ち抜く参謀学―秀吉を天下人にした半兵衛と官兵衛』
加来 耕三
二見書房、1999/02/25、¥1,836(L)

「秀吉を天下人にした」とあるように、ニ兵衛がいかに秀吉を支えたかを伝説ではなく歴史的事実から説きおこす。「半兵衛は国人の調略、官兵衛は天下の調略」とその大きさの違いを的確に指摘した著者の説に納得する。それぞれの段階に応じた参謀を得ることの重要性がわかる。

●要は勢いを創り、それに乗り切ること(p.124)

☆信長が多少無理を重ねても上洛を目指した意味を解説した部分。上洛によって天下の人心が信長に服するという点を見越して、多少身の丈を上回る目標でもしゃにむに達成したことのプラス面を指摘している。

▲「六韜」の人物鑑定法
1.言葉で質問し、その応答振りや回答の内容を観察する。
2.矢継ぎ早に質問を浴びせて、その反応と変化を観察する。
3.密かに日常生活を追跡し、仔細に調査して、その誠実さを観察する。
4.機密を打ち明けて、その人物を観察する。
5.金銭を扱わせて、その廉潔さを観察する。
6.女性を近づけ、その貞潔さを観察する。
7.困難な仕事を与えてみて、その勇気のほどを観察する。
8.酒を飲ませて酔わせ、その酔態を監査sつする。(p.237)

☆現代にも応用できる人の見方。


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『エンジェルフライト 国際霊柩送還士』

『エンジェルフライト 国際霊柩送還士』
佐々涼子
集英社、2012/11/26、¥1,620(有隣堂亀戸)

『紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている』がよかったので、同じ著者の前作を購入。国境を越える遺体の搬送を専門に行う会社エアハースのスタッフに取材してその実態を描いたノンフィクション。

生と死を巡る話で、非常に力の入った本になっているが、『紙つなげ!』に比べまだ著者の筆力が成長途上だったためか、「私が」という著者自身の存在がかなり前面に出ていて、ノンフィクションとしては若干完成度に不足があるような気がする。しかし、国際遺体搬送というなかなか表からはわからない世界に光を当てた本作は、その欠点を補ってあまりある価値のある著作になっている。

書名のエンジェルフライトは、Angel Flightではなく、Angel Freight。

● [社長の] 木村利恵は出社すると背筋をしゃんと伸ばし神棚の前に立ち、パン、パンとふたつ大きな柏手を打つ。毎朝ここできちんと手を合わせると、気持ちが静まりリセットされるのだそうだ。ご利益はあると木村利恵は思っている。心を整えているおかげで今までエアハースではひとつも事故がないのだという。(p.36)

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『ぼくはオンライン古本屋のおやじさん』

『ぼくはオンライン古本屋のおやじさん』
北尾トロ
風塵社、2000/9/25、¥1,404(L)

蟲文庫の本を読んで、古本屋に興味を持ったので、借りてみた。『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』シリーズの著者ということで、それなりに面白く書かれている。

著者が自宅にある本の処分をどうするか悩んだ末、オンライン古本屋の開業を決意してから、実際に開業し、経験した問題やその解決などを体験記として書いた体裁になっている。発行が2000年とネット通販黎明期の話なので、ホームページに目録べた打ちとかページミルを使って、などすでに陳腐化した話もある。

杉並北尾堂開業から10ヶ月の経緯として、業績が一覧で書かれているが、概ね月売上15万、仕入れ5万、経費3万、利益7万で、利益率50%弱という、そこそこの数字になっていた。ただ、詳しくは書かれていないが、相当長時間この仕事(趣味)に使っている記述があるので、効率としてはどうなのか疑問がのこった。

素人がオンライン古本屋を立ち上げるプロセスを知ることができた楽しく読んだ。

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『かもめ食堂』

『かもめ食堂』
群ようこ
幻冬舎文庫、2008/08、¥494(借)

ヘルシンキで食堂をやることになったサチエのもとに、色々な事情を抱える日本女性二人が加わり、地元の人に食堂が受け入れられるまでのあれこれを淡々としたタッチで描く小説。

映画で見ていたので、原作を読んでみようと思ったので。

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『夢を売る男』

『夢を売る男』
百田 尚樹
太田出版、2013/2/15、¥1,512(丸善日本橋)

出版直後に購入したが、なかなか気が進まず1年以上寝かせていた本。

自費出版(ジョイント・プレス)を業務とする丸栄社の編集長牛河原は、日々自己表現したい素人に金を払わせて出版させている。大手出版社の編集長をしていた彼は、プロの作家といえども素人とほとんど変わらないとうそぶきながら仕事をする。

後半新興ライバルの狼煙舎の殴り込みで営業成績にかげりが見えた丸栄社は、自費文庫の発行、ブログ出版営業など新機軸で対抗するが芳しくない。そこで、狼煙舎にスパイを潜り込ませて内情を探り、その顧客に訴訟を起こさせる。

フィクションとはいいながら、実際にあった大手自費出版3社の争いをなぞったような内容になっている。また、牛河原の文芸界への批判も的を射ていて気持ちがいい。

●「現代には、映像やゲームに勝てるほどの小説なんて滅多にないんだ」と牛河原が言った。「これはどんな世界にでも言えることだが、才能とは金のある世界に集まるんだ。現代ではクリエイティブな才能は漫画やテレビ、音楽や映像、ゲームに集まっている。小説の世界に入ってくるのは、一番才能のない奴だ。金が稼げない世界に才能ある奴らが集まってくるはずはないんだ」(p.164)

●「小説家の仕事というのはぶっちゃけて言えば、『面白い話を聞かせるから、金をくれ』という奇妙奇天烈な職業だ。だから、その話は聞く者を楽しませるためにする、というのが基本のはずだ」(p.183)

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『悟浄出立』

『悟浄出立』
万城目学
新潮社、2014/7/22、¥1,404(丸善日本橋)

表題作を始め、中国の古典から題材を採った5篇の短編。「人生の見方まで変えてしまう連作集」と帯にある通り、中国古典の脇役から主役を眺める手法で、彼らの心中を生き生きと描き出している。悟浄の話や司馬遷の娘の話は、中島敦を思い出させる。

別の書評に悟浄出立は、中島敦の『わが西遊記』(「悟浄出世」「悟浄歎異」の二編)を思い出させると書いてあって、自分は読んでいないので、これを機に読んでみたい。

収録は次の5篇。それぞれ深く考えさせられる。「悟浄出立」「趙雲西航」「虞姫寂静」「法家孤噴」「父司馬遷」

●「なあ、悟浄よ」八戒はゆっくりとした口調で語りかけた。「いくさの極意とは、何だと思う?」
 およそ考えたこともない類の問いに、俺は言葉に詰まった。
「さあ…俺はただの捲簾大将(けんれんたいしょう)だった男だから、そんな物騒なことは皆目わからない」
「指揮官の精神を討つことさ」
 はっきりそれとわかる皮肉の響きがその言葉の端々に滲み出ていた。
「たとえ十万と十万が対峙して、どれほどの将兵の命が奪われようとも、いくさには何の関係もない。なぜなら、勝敗を決めるのは十万の兵の死ではなく、たった一人の指揮官の精神の死だからだ。もうこれ以上、戦いを続けられない、ただそれだけを相手の大将に思わせるために、二十万の将兵は死にものぐるいになって戦うわけさ[略] 」(pp.30-31)

☆物事の本質を打つことの重要性。

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『乱読のセレンディピティ』

『乱読のセレンディピティ』
外山 滋比古
扶桑社、2014/4/5、¥994(丸善日本橋)

『思考の整理学』の著者による読書論。タイトル通り、乱読の効用について書かれている。いろいろな本を同時に読むこと、ゆっくりではなくある程度スピードを出すことでリズムが出てわかることがあること、古典になるには時間が必要なことなど読んでいてなるほどと思うことが多い。

●イギリスの有力書評誌、「タイムズ文芸批評」がかつて、二十五年前の誌面を再現して見せたことがある。
 たった二十五年であるのに、もとの書評のほとんどが正当を欠いていることが明らかにされた。二十五年でさえ、同時代批評は乗り越えることができないのである。
 近いということは、ものごとを正しく見定めるには不都合なのである。近いものほどよくわかるように考えるのは、一般的な思い込みである。自分のことがいちばんわかると思っているが、実は、もっともわからない。近いからわかっているように考えているが、やはり、本当のことは見えない。
 書評にしても同時代批評は近すぎるために見ちがえをする。目がくもっていて、本当のことがよく見えないのであろう。さきの「タイムズ文芸批評」は勇気ある企画によって、二十五年たつと、批評が質的に変化することを見せつけることができる。
 私の試考では、二十五年では少し足りない。三十年くらいたつと、文化的状況が一変する。十年ひと昔というが、まだ、充分に遠くない、二十年、二十五年も前の時代の影響が残っている。一世代、三十年たつと、知的風土がほぼ完全に刷新される。
 この三十年後の関所を越えたものが古典として永い生命をもつ。文学史の中に入り、よほどのことがない限り消えることはない。
 古典とはそういうように生まれる。つまり作品そのものを作るのは作家であるが、その価値、歴史的評価が決まるのは、作品、作者から三十年以上たったときからである。古典は原作が生まれて、三十年以上たたないと、古典になることができない。(pp.149-151)

☆少し長いが、古典とはどのように生まれるかについて書かれた部分。以前、楠木健が「十年前の日経ビジネスをよく読む」と言っていた。少し意味は違うけれど、当時と今でどのように評価や状況が変わったかを知るのにある程度の時間は必要だと言うことでは通じるものがある。


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『ノーベル文学賞 ――「文芸共和国」をめざして』

『ノーベル文学賞 ――「文芸共和国」をめざして』
柏倉 康夫
吉田書店、2012/9/27、¥2,376(受贈)

恩師の著書。ノーベル文学賞の歴史と、授賞基準とその移り変わり、受賞者の経歴・受賞作について書かれた本。

外側からではわかりづらい、それぞれの時代で選考委員会が何を考え、何を基準に選考したかが詳しく書かれていて勉強になる。

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『神社が語る 古代12氏族の正体』

『神社が語る 古代12氏族の正体』
関裕二
祥伝社新書、2014/7/10、¥907(有隣堂亀戸)

神社の成り立ちを著者の推理を交えて解き明かす。
通説と著者の見解が交互に出てくるのはいいが、どこまでが通説で、どこからが著者の見解かが見極めづらい。また、根拠のある話と単なる推理との違いもはっきりしないため、どこまで信じられる話なのかがよくわからなかった。

藤原氏の祖である藤原不比等が、百済の渡来王子で、日本の氏族を蹂躙して権力を簒奪した、という推理や、秦氏が中国の秦を逃れて新羅を通じて日本に渡来し稲荷神社を建てた、という花足は興味深かった。

読者としての対象が、古代史に興味があり、氏族や神社についてかなりの知識がある人、といった感じで、一般向けの新書としては説明が不親切に感じた。十二氏族を扱うより、たとえば藤原氏に関するところだけを深く掘り下げて一冊にしたほうがもっと面白く書けたのではないかと思った。

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『わたしの小さな古本屋~倉敷「蟲文庫」に流れるやさしい時間』

『わたしの小さな古本屋~倉敷「蟲文庫」に流れるやさしい時間』
田中 美穂
洋泉社、2012/1/31、¥1,512(L)

岡山県倉敷市で古本屋を開いている著者によるエッセイ。

高卒後勤めた会社を辞めた後、ふと思い立ってまったくの素人状態で古本屋を始める。当初は古本屋というわりに本以外のものの方が多く陳列されたりして、お客から何の店か不思議がられるほどだった。

お店にゆったりした時間が流れているのがよくわかるゆるい本。著者は苔観察が趣味で、書店HPにも苔のことが書かれている。

いつか行ってみたい。

蟲文庫HP
http://homepage3.nifty.com/mushi-b/

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『覚えるだけの勉強をやめれば劇的に頭がよくなる 大人のアウトプット勉強法』

『覚えるだけの勉強をやめれば劇的に頭がよくなる 大人のアウトプット勉強法』
小川 仁志
PHP新書、2014/4/1、¥821(丸善日本橋)

哲学者が教える勉強法。ただ覚えるだけではなく、考えること、アウトプットをすることで勉強の質が上がると説く。

勉強に役立つ5つの哲学的思考法:
 1疑う、2削ぎ落す、3批判的に考える、4根源的に考える、5まとめる
一番はかどる勉強法:
 1勉強のスケジュールを立てる 2情報を入手する 3情報を整理する
 4情報を分析する 5図示する 6記憶する

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『秀吉家臣団の内幕 天下人をめぐる群像劇』

『秀吉家臣団の内幕 天下人をめぐる群像劇』
滝沢 弘康
ソフトバンク新書、2013/9/25、¥821(丸善日本橋)

表題の通り、秀吉がまだ一人の頃からいかに家臣を集め、彼らが秀吉を天下人に押し上げていったかを時期と地域という視点から俯瞰した本。

秀吉が一門、譜代の家臣を持たなかったため、最後までその欠落を埋めることができずに政権が崩壊したこと。石田三成等近江衆と加藤清正ら尾張衆の確執がかなり初期からあったこと。結局豊臣政権は秀吉商店であり、秀吉以外の人間には動かせなかったこと。

など断片的に知っていた知識をまとめて見せてくれたという意味で大変面白く読んだ。


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『2025年の世界予測--歴史から読み解く日本人の未来』

『2025年の世界予測--歴史から読み解く日本人の未来』
中原 圭介
ダイヤモンド社、2014/7/4、¥1,620(丸善日本橋)

主にエネルギーと人件費の観点からの近未来予測。

 アメリカのシェールガス革命と、水素エネルギーの実用化により、アメリカがエネルギー輸出国となる。日本はそのエネルギーから取り出した安価な水素を利用することで、電気代が半分になり、水素自動車が普及する。
 新興国の人件費の高騰により企業は先進国に回帰する。日本にも良質な雇用が生まれ、少子高齢化の進行でもそれほど悪くない未来となる。

 自動翻訳機の進化により語学勉強の必要がなくなる、という予測は、語学を趣味としてやってきた自分にはあまり実現してほしくない。


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『道をひらく』

『道をひらく』
松下幸之助
PHP、1968/5/1、¥940(有隣堂亀戸)

経営書の古典。一度ではわからない。理屈抜きでわかるまで何度も読む本。

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『売れるもマーケ 当たるもマーケ―マーケティング22の法則』

『売れるもマーケ 当たるもマーケ―マーケティング22の法則』
アル ライズ (著), ジャック トラウト (著), 新井 喜美夫 (翻訳)
東急エージェンシー出版部、1994/01/15、¥1,572(アマゾン)

マーケティングの古典。ポジショニングの重要性を説いている。

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『紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている』

『紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている』
佐々涼子
早川書房、2014/06/25、¥1,620(丸善日本橋)

日本製紙石巻工場が津波被害を被ってから復興するまでの一年間を描いたノンフィクション。早稲田出身者が真のジャーナリズム魂を発揮した時これほどの本を書けるのか、と認識を新たにした。

●本当に半年で復興できるのか。どんな問題が持ち上がるのか。それをできると信じるのは客観的に見ればギャンブルのようなものだ。
 では、勝率はどれぐらいか?
 トップがどれだけ勝利を強く信じることができるか。そして、勝てると信じる者がどれぐらい多いかで確率は上がる。それが組織だ。(p.121)

☆社長の芳賀が、被災後の石巻工場を視察後工場の立て直しを宣言した際の記述。

●当時、日本製紙はさまざまな国に紙を輸出していた。一番多かったのはオーストラリアの印刷会社向けだ。他にもニュージーランド、インド、東南アジア諸国、台湾、中国にも紙を使ってもらっている。アメリカの週刊誌『TIME』の薄い紙も、ここ日本製紙石巻工場の製品だった。(p.133-134)

●「日本製紙のDNAは出版用紙にあります。我々には、出版社とともに戦前からやってきたという自負がある。出版社と我々には固い絆がある。ここで立ち上げる順番は、どうしても出版社を中心にしたものでなければならなかったのです」(p.135)

☆抄紙機の再稼働の順番を巡り、当初は最新型のN6抄紙機を稼働しようとしたが、出版社・営業部門の要請により出版用紙を作る8号機を最初に再稼働させることに決まった経緯を説明する記述。

●「文庫って言うのはね、みんな色が違うんです。講談社が若干黄色、角川が赤くて、新潮社がめっちゃ赤。普段はざっくり白というイメージしかないかもしれないけど、出版社は文庫の色に『これが俺たちの色だ』っていう強い誇りを持ってるんです。特に角川の赤は特徴的でね、角川オレンジとでも言うんでしょうか」(p.145)

☆文庫出版各社の特徴。今まで知らなかった。

●倉田 [工場長] たち役員が、[8号機} マシンに清めの塩をまき、原料の入っている種箱に神酒を捧げた。紙作りに携わる職人たちはずっと、マシンはただの物体ではなく、そこに魂がこもっていると考えてきた。オペレーターたちは、たとえ破棄する紙であっても、決して靴では上がらない。魂が宿るマシンの製品は踏まないのだ。彼らはどこかで、畏怖と深い愛情をもって、マシンを扱っていたのである。(p.228-229)

●書店を探してみれば、作り手の覚悟が形になったような誇り高い一冊が見つかるはずだ。容易ではないが、見抜くのは読者の持つ役割だ。
 本が手元にあるということはオーストラリアや南米、東北の森林から始まる長いリレーによって運ばれたからだ。製紙会社の職人が丹精をこめて紙を抄き、編集者が磨いた作品は、紙を知り尽くした印刷会社によって印刷される。そして、装幀家が意匠をほどこし、書店に並ぶのだ。手の中にある本は、顔も知らぬ誰かの意地の結晶である。(pp.256-257)

☆本書は誇り高い一冊といってよいだろう。

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『献身 遺伝病FAP (家族性アミロイドポリニューロパシー)患者と志多田正子たちのたたかい』

『献身 遺伝病FAP (家族性アミロイドポリニューロパシー)患者と志多田正子たちのたたかい』
大久保 真紀
高文研、2014/2/19、¥3,240(L)

朝日新聞記者の著者が、FAPという神経難病について、膨大な取材ノートをもとに、主にその患者を支えてきた志多田正子の視点から描いたノンフィクション。

自分の病気と重ね合わせて様々なことを考えさせられた一冊。

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『1秒でわかる!印刷業界ハンドブック』

『1秒でわかる!印刷業界ハンドブック』
山名 一郎、印刷出版文化研究会
東洋経済新報社、2012/07/12、¥1,080(丸善日本橋)

印刷業界の概要と今後の展望について一通り書かれた本。印刷組合等が出している将来推計に基づいて書かれているので、新しい知見はあまりなかったが、知識の整理という意味で一読の価値はあった。

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