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『日米開戦の真実 大川周明著『米英東亜侵略史』を読み解く』

『日米開戦の真実 大川周明著『米英東亜侵略史』を読み解く』
佐藤優
小学館、2006/4/22、¥1,728(Amazon)

真珠湾直後にNHKラジオで放送され、ベストセラー書にもなった大川周明の"開戦理由"全文を掲載し、佐藤の解釈を加えて解説した本。現在との類似性を見いだし、将来への戒めとする、という佐藤の意図がよくわかる。

●当時の日本は、多年にわたる鎖国政策のために、一般国民は日本の外に国あるを知らず、[略] 海外の事情に無関心だったのであります。従って文化年中にロシア人が北海道に来て乱暴を働こうとしたことは、日本にとってまさしく青天の霹靂であり、徳川幕府は甚だしく狼狽したのであります。幕府はとにもかくにもあらん限りの力を尽くして防備の方法を講じましたが、その後はしばらく影を見せなかったので、文化・天保年中になりますと、かえってその反動が起こり、海防のために力を注いだ松平楽翁公などを、臆病者と笑うような始末でありました。騒ぐときには血眼になって騒ぐが、止めればまるで忘れ果てて、外国船などはこないもののように思う、これは今も昔も変わらぬ日本人の性分であります。そのようなその後の数十年というものは、日本はあるときは外国の侵略を恐れ、あるときはまったく国難を忘れ去りながら、その日その日を過ごしてきたのであります。(p.21)

☆現在の対中国問題、集団的自衛権、原発問題への対応にも同様の性分が見られ、大変興味深い。

▲イスラームには世界を動かす原動力となることが見えていた。世界征服を実際に果たす力がイスラームにあることを多くの日本人が気づいていない。イスラームの内在的論理を尻、その力を過小評価せずに、イスラームの世界支配という野望に対峙する状況が到来するまでに日本国家と日本人が生き残る方策を考えよと警鐘を鳴らし、同時に大川自身がその知的基礎作業に従事したのである。(pp.94-95)

☆イスラム圏の拡大が現実のものとなっている現代に、ますます重要性を増す分析。

●歴史的常識ではC級戦犯の罪が最も重い。(p.98)

●国民が政府・軍閥にだまされて勝つ見込みのない戦争に追いやられたというのは、戦後になってから作られた神話である。この神話が作られる中で、日本人がもっていた中国を含むアジア諸国を欧米の植民地支配から解放するという大義は、日本の支配欲を隠す嘘だという"物語"が押し付けられ、その呪縛から未だにわれわはは逃れられずにいるのである。(pp.106-107)

☆アメリカによって行われた巧妙な戦後教育と洗脳の成果。

●当時の史実に照らしてみると、国民は相当のことを知らされていた。また、少し努力して真実を素人するならば、正確な情報を入手することはそれほど難しくなかったのである。例えば、戦前・戦中に内閣情報部(1940年に情報局に昇格)が発行していた週報は、誰でも購入することができたが、当時の国際情勢について正確な情報が記されている。(p.112)

●「真相箱」に代表される戦後アメリカの宣伝技法は実に巧みで優秀だった。重大な失敗を犯した時、誰も自らに責任があることを認めたくないという真理が働く。「誰かに自分がだまされていた」というフィクションで、自分の責任から逃れようとする、その隙間をアメリカは衝いて、新しい神話を作った。そして日本人は自らその神話を受け入れていくのである。神話と実証的情勢分析は同居できない。日米開戦の真実について、大川が『米英東亜侵略史』で解明した実証的な分析は成語、GHQとそれに協力した日本人放送作家が作り上げた「真相箱」という神話に回収されていってしまうのである。それとともに大川周明という知識人の存在自体が日本人の記憶から薄れていくのである。(p.114)


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