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『史上最強の内閣』

『史上最強の内閣』
室積光
小学館文庫、2013/3/6、¥650(L)

北朝鮮が日本に向けてミサイル発射準備に入った。自由民権党の浅尾総理は自らの限界を悟り、京都にある影の内閣にすべてを委任する。

北朝鮮のシンジャンナムがディズニーランドに行こうとしてつかまり、日本のテレビ局に引っ張りだこになったり、工作員がアイドルとして売り出されたり、影の内閣の二条首相が北朝鮮に乗り込み謝罪と賠償を要求したり、と今の日本のパロディを繰り広げる。何でも反日の朝地新聞を嗤うかのように書かれているが、このあたり非常にうまく書いている。また、北朝鮮に残置諜者として残った通称「太郎」が、北朝鮮高官として日本に情報を流し、最後に粛清される下りは、戦争で戦った多くの日本人の姿を思い起こさせる。概ね、大多数の日本人が感じていることをうまく小説にして書いた、という感じで大変面白く読んだ。

ただ、文庫版の解説を書いている落語家が、安倍総理のことを「ポンポン痛いの」が原因で政権を放り出した、と既に当該難病を持つ患者団体等の抗議によって否定された言辞を弄して本書の価値を貶めているのは大変残念。

●高杉総務大臣は言う。
「『サザエさん』はのう。昭和二十一年から新聞連載が始まったんじゃ。終戦の翌年じゃのう」[略]
「サザエさんの家には彼女のお父さんと弟、夫と息子がおる。これはのう、あの戦争で日本の多くの女性が失ったものなんじゃ」[略]
「サザエさんは当時の日本女性が失った者すべてに囲まれちょる幸せな人なんじゃ。人々には彼女の幸福が眩しかったに違いない。そして現在でもサザエさん一家は愛されちょる。わしが言いたいのはこういうことじゃ、一部の人々は今にもこの国が軍国主義国家に逆戻りするような寝言を、海外にまで広めようとしちょる。じゃがのう、憲法九条がのうても、サザエさんが日本人に親しまれるかぎり、この国は戦争の道を選びやせん。『サザエさんの幸福』を日本人が手放すはずはない。わしはそう確信しちょる。それほど深く反戦の思いは日本人の心に刻まれておるんじゃ。理屈じゃないけえ」(pp.296-297)

☆サザエさんが当時の女性にとってもっとも幸せな姿だった、という見方は新しい発見。

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