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『社長は少しバカがいい。~乱世を生き抜くリーダーの鉄則』

『社長は少しバカがいい。~乱世を生き抜くリーダーの鉄則』
鈴木喬
WAVE出版、2013/2/14、¥1,470(八重洲BC)

エステー会長による経営論。業界では弱小であるエステーを率いて常に前向きに経営する考え方は参考になる。
色々な経営者の経営論を読んで思うのは、その多くが「運」や「博打」など理屈では測れない何かを信じていること。もちろん全力を尽くした上での話ではあるが、その先にある何か感じているというのは興味深い。

●なぜドイツは敗れたのか?チャーチルの挑発にヒトラーが乗ったからだ。
 イギリスの航空戦力を殲滅する。ドイツの狙いは戦略的に正しかった。[略] [しかし、ドイツのロンドン誤爆に対するチャーチルのベルリン爆撃という挑発に乗って] 航空戦力の殲滅から、イギリスの大都市空爆に作戦を変更したのだ。これが、イギリスを助けた。[略]
 他にも、挑発に乗って戦争に負けたケースはいくらでもある。[略] ビジネスの歴史を振り返っても、価格競争を真に受けた会社はみんなおかしくなってる。これは、世界中どこだって同じだ。(p.59)

●よっぽど自分のとこのコストが安くならない限り、価格競争は続けられない。時間がたてばたつほど、苦しくなる。おかげさまで、今でもウチの防虫剤が圧倒的にシェアトップだ。
 やはり、挑発は「する」ものであって、「乗る」ものではない。それを教えてくれた歴史に感謝している。僕は、あんまり経営書は読まない。役に立つのは歴史だ。特に、戦争の歴史にはヒントがたくさんつまってる。なぜなら、経営のいちばん凝縮した局面というのは、戦争そのものだからだ。
 社長をめざすのなら、歴史を学ぶのがいいと思う。(p.61)

●社長にとって、最後に頼りになるのは自分の直感なんだ。(p.70)

●彼ら[営業部隊] だけには任せておれん。そう思った僕も、[消臭ポット販売のために] 全国の販売店を駆け回った。その間、僕は毎日何万回も自己暗示をかけた。「売れる、売れる、売れる」。仕事で結果を出すために大切なのは、究極のところ熱意に尽きる。どこまで本気で「売れる」と思い込めるか。社長の思いの強さが試されるのだ。(p.76)

●「偉大な事業を起こしてみずからを類稀な模範として示すこと以上に、君主の名声を高めるものはない」。これは、マキャベリの『君主論』の一節だ。まさに、そのとおりだと思う。単に社長という職位に任命されたからと言って、「社長」になれるわけではない。周囲を圧倒するような「結果」を出して、はじめて「社長」になれるのだ。(pp.79-80)

●経営には、常に博打の要素がある。どんなに理屈で考えても決断できない選択を迫られることがある。ここで尻尾を巻いて逃げているようでは「結果」は出せない。必要なのは「博才」だ。
 日本海軍のトップは山本五十六以下、全員がブリッジをやっていた。鄧小平もブリッジ好きで有名だ。今のアメリカの金持ちも年に一回集まってブリッジの大会をやっている。儲けはすべて寄付するそうだ。要するに、成功者というのはだいたい博打ウチだということだ。要所要所で博打に勝った者が、成功者となる。難しい顔をして考えていたって博打には勝てない。いくら本を読んで勉強しても博打には勝てない。むしろ、勉強は身体に悪い。社長に必要なのは、「運」と「勘」と「度胸」なのだ。(p.80)

●僕の座右の書はマキャベリの『君主論』と『韓非子』だ。「権謀術数の書」「人間不信の書」として、世間ではいささか評判が悪いが、リーダーシップについて学ぶには史上最高の本だと思っている。(p.88)

☆論語は綺麗事というのが鈴木の信条。

▲自分の社員にゴマをすったり機嫌を取る必要はない。アゴで使うくらいの気概が必要。経営者になるというのは覚悟がいる。組織を引っ張っていくためには「自分がリーダーである」ということをガツンと示さなければならない。(p.106)
●英国海軍では、兵隊に塹壕を掘らせるときに将校は絶対に手伝わない。一方、陸軍の将校は兵隊と一緒になって塹壕を掘る。なぜか?陸軍は徴兵で、海軍は志願兵だからだ。みずから志願したのだから、命じられた仕事をするのは当然だ。気に食わなければ辞めればいい。そのかわり、リーダーは雨が降ってもコートも着ずに立ち続ける。そして、全体を見ながら大きな指示を出す。社員は志願してその会社で働いているのだから、海軍将校を見習うのが道理だ。社員と一緒になって「頑張れ」などと言ってる場合じゃない。(p.106)

▲営業で重要なのは、準備。お客様を訪問する前に、徹底的にその会社のことを研究する。有価証券報告書、新聞・雑誌の記事などを10年分みっちり読み込んで、相手の困ったことを調査する。その会社の社員よりも、その会社のことに詳しくなるくらいじゃないと通用しない。会ってくれる相手のことも、学歴、職歴、家族、趣味などをとことん調べ尽くす。そして、準備万端整えてから面会に向かう。
 営業はしゃべっちゃダメだ。立て板に水のように話す営業マンで成功している人は見たことがない。相手に気持ちよく話してもらう。これが営業の基本だ。そのために大切なのが「質問力」。ここで、準備が生きる。(pp.137-138)
 そして、最初の勝負は一言で決まる。相手が言ってほしいことを言うのだ。たとえばこんなことがあった。下調べで、相手が剣道4段であることを知った。面談中、その方が業界の問題点について分析を披露したときに、すかさずこう言った。「さすが剣道4段ですな。きっさき鋭い!」
 うれしそうな顔をされて、こっちまでうれしくなった。(p.138)

●社長が現場に出ると大局を誤る
 [東日本大震災の被災状況報告を受け] 僕は淡々と聞きおいた。騒いだところでどうにもならない。起きてしまったことは仕方がない。これからできることだけを考える。それが、それまでの人生で培って来た習慣だった。(p.203)
●バカと言われるかもしれないが、バカじゃなくて大将が務まるものか。心がズタズタでもホラを吹いて笑ってみせる。大将が元気でニコニコして、平気な顔してたら、たいていはうまくいくんだ。(pp.205-206)

●長く生きてきても、やっぱり世の中のことはわからない。意図せざる幸運とめぐり合うことはあるのだ。大切なのは、心意気を胸に行動を起こすこと。[大震災後1ヶ月での消臭力CMは] もしかしたらバッシングを受けていたかもしれない。しかし、他の会社と横並びで何もしなければ、何も起こらなかったことだけは確かだ。
 社長は群れちゃダメだ。海外企業のM&Aだ、アジア進出だ、などと一緒になって騒いでいるようじゃ話にならん。まとめてお陀仏になるのが関の山。だから、僕はいつだって「逆張り」だ。今回は、それが思わぬ幸運を引き寄せたのかもしれない。(p.223)

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