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『不格好経営―チームDeNAの挑戦』

『不格好経営―チームDeNAの挑戦』
南場 智子
日本経済新聞出版社、2013/6/11、¥1,680(有隣堂亀戸)

タイトル通り、DeNAの創業者である著者による、創業から自身の社長退任に至る歴史の回顧録。津田塾大学からマッキンゼーと、エリート路線を突き進む著者と自分との能力差はいかんともしがたいので、多少なりとも参考になる点があればよいと思って購入。

「人」ではなく「事」にフォーカスするなど、今まで気づかなかったことが書かれており、他にも多くの示唆に富む経営論の良書。

●私は、苦しいときにふたつのことを意識する。
 ひとつは、とんでもない苦境ほど、すばらしい立ち直り方を魅せる格好のステージだと思って張り切る事にしている。そしてもうひとつは、必ず後から振り返って、あれがあってよかったね、と言える大きなプラスアルファの拾い物をしようと考える。うまくいかないということは、負けず嫌いの私には堪え難く、単に乗り越えるだけでは気持ちが収まらない。おつりが欲しい、そういうことだ。(p.5)

●ベンチャーですか?何ですか?と面食らう彼[茂岩]に、私たちは1冊の本を渡した。板倉雄一郎氏の『社長失格ーぼくの会社がつぶれた理由』。[略] あろうことか茂岩の心は躍ってしまった。(pp.20-21)

☆いずれ読む。

●[システム詐欺にあったことを夫に報告すると] 旦那は3つのことを言った。
1.諦めるな。その予算規模なら天才が3人いたら1ヶ月でできる。
2.関係者、特にこれから出資しようとしている人たちに、ありのままの事実を速やかに伝える事。決して過小に伝えるな。
3.「システム詐欺」という言葉をやめろ。社長が最大の責任者。加害者だ。なのにあたかも被害者のような言い方をしていたら誰もついてこないぞ。(p.33)

☆すごい旦那さん。

●我が社は声の大きいユーザーに左右されないように、サービス改良の指針としてリピート率や離脱率などの数字を最も重視する事を徹底しているが、インターネットサービスの黎明期、ノウハウが確立していないこの時代に、ユーザーと徹底的に対話することで、サービス業の本質を手探りでつかんでいったことは、その後のDeNAの姿勢の基礎となった気がする。(p.69)

●[ビッダーズの営業先で]「南場さんね、買ってもらえなかったときにどれだけいい笑顔が見せられるかが勝負なんだよ」といった、たくさんの心に沁みるアドバイスもいただいた。(p.83)

●同じ人物でも、モバイルユーザーのときとPCユーザーのときでは利用のパターンがまったく異なる別のユーザー人格となるというこの事実は、単にインターネットサービスの一端末としてモバイルを位置づけるのではなく、特化したサービスを展開する事の重要性を我々に強烈に刷り込み、同時に新しい巨大市場の可能性を示唆したのだった。(pp.102-103)

●社長という立場は一瞬にしてものをつくり出すことはできないが、一瞬にして破壊することはできるので、気をつけなければならない。(p.109)

☆上場最終面接を前にして。真理。

●DeNA内部の清々しさ、気持ちのよさは、川田の人格と仕事へのスタンスがべったり組織に乗り移ったものだと思っている。誰よりも働く、人を責めない、人格を認める、スター社員に嬉々とする、トラブルにも嬉々とする。そして、俺は聞いてない、バイパスするな、などという言葉も概念もいっさいない。とにかく一歩でも、ちょっとでも前に進むことしか考えない。
 その川田の姿勢が、成功やアイデアの帰属よりもチームの成功を優先し、「誰」でなく「何」を重視するDeNAの文化をしっかりと築いた。(p.130)

☆DeNAの文化についての大変重要な記述。川田は創業メンバーの一人でマッキンゼーでの南場の部下。

●人材は多様なほうが強い組織ができると信じている。クリエイティブな人、オペレーションが得意な人、数字に強い人、商売センスのある人、風が読める人、人に心を開かせることができる人、強い人、優しい人、いろいろな特技が必要だし、性格もバラバラなほうがチームは強いし面白い。(pp.135-137)

●社長業は12%全力投球でも足りないのだ。(p.170)

☆耳が痛い。

●検討に巻き込むメンバーは一定人数必要だが、決定したプランを実行チーム全員に話すときは、これしかない、いける、という信念を前面に出した方がよい。本当は迷いだらけだし、そしてとても怖い。でもそれを見せないほうが成功確率は格段に上がる。(p.204)

●事業リーダーにとって、「正しい選択肢を選ぶ」ことは当然重要だが、それと同等以上に「選んだ選択肢を正しくする」ということが重要となる。決めるときも、実行するときも、リーダーに最も求められるのは胆力ではないだろうか。
 ほかの諸々は誰かに補ってもらうことが可能だが、リーダーの胆力はチームの強さにそのまま反映される。(p.205)

☆大変重要な指摘。

●[コンサル人材を採用したときのアドバイスとして]
 ・何でも3点にまとめようと頑張らない。物事が3つにまとまる必然性はない。
 ・重要情報はアタッシュケースではなくアタマに突っ込む
 ・自明なことを図にしない
 ・人の評価を語りながら酒を飲まない
 ・ミーティングに遅刻しない(p.208)

●創業時から一貫して、どんな人手不足のときでも、人材の質には絶対に妥協しないことをポリシーとしてきた。何か深い考えがあったというより、とにかく優秀な人が純粋に好きだったからではないだろうか。便利だからとか必要だからとかではなく、すごい!と思える人、尊敬できる人と一緒にいると自身の気持ちも高揚し、怠惰な自分も最高に頑張れる。それもあって、黒字かのめども立っていない時代からひとりひとり、これでもか、というピカピカの人材を口説き落としてきた。(p.208)

●DeNAが逸材を引っ張り込むのを見て、どうやって口説くのかと訊かれることが多い。が、人を口説くのはノウハウやテクニックではない。「策」の要素を排除し、魂であたらなければならない。きれいごとを言うようで気恥ずかしいが、私が採用にあたって心がけていることは、全力で口説く、誠実に口説く、の2点につきる。
 全力で口説く、というのは、事業への熱い思いや会社への誇り、それから、その人の力がどれだけ必要かを熱心にストレートに伝えるということに他ならない。それはもう、全力であたる。欲しい人材は何年かかってもずっと追いかける。どの経営者もやっていることだと思う。
 そして、相手にとって人生の重大な選択となることを忘れずに、正直に会社の問題や悩み、イケてないところなども話さなければならない。経営者や人事担当者だけではなくなるべく多くの社員に会ってもらって会社の実態を肌で感じてもらうのもそのためだ。(pp.210-211)

●ビジネススクールに行くことで人脈ができるのでは、ともよく訊かれるが、そうも思わない。逃げずに壁に立ち向かう仕事ぶりを見せ合う中で築いた人脈以外は、仕事では役に立たないと痛感している。(p.220)

●DeNAでは、「誰が言ったかではなく何を言ったか」という表現を用いて、「人」ではなく「コト」に意識を集中するように声を掛け合っている。誰かが言ったことが常に正しいと思ったり、誰かに常に同意するようになったら、その人の存在意義がなくなるし、"誰派"的な政治の要素ともなり、組織を極端に弱くする。(pp.221-222)

●"選択"に正しいも誤りもなく、選択を正しかったものにする行動があるかどうかだけだと信じています。この考え方は、DeNAで学んだ多くのことのうちのひとつです。(p.229)

●国内外にかかわらず、あと10年もすれば、組織に属して仕事をするスタイルは主流ではなくなるだろう。目的単位でプロジェクトチームが組成され、また解散するような仕事の仕方に変わっていくはずだ。
 そして多くの場合、国境を超えた人材でフォーメーションが組まれていくことだろう。環境や貧困などの社会の大きな問題の解決にせよ、事業の立ち上げや推進にせよ、国境に閉じてなせることは少なく、世界中のリソースを柔軟に活用できるチームこそ大きな成果を生み出していくことは間違いない。独自の思考と力強い突破力で必ず結果が出せる人材は、言語や文化の境目にかかわらずユニバーサルに求められるだろう。(p.245)

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