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『本当に使える経営戦略・使えない経営戦略』

『本当に使える経営戦略・使えない経営戦略』
山田修
ぱる出版、2013/4/13、¥1,575(有隣堂亀戸)

『エクセレント・カンパニー』や『ビジョナリー・カンパニー』といった経営書は、コンサルが適当に書いた本で実際には使えず、その後の経過を見ても決してエクセレントだったりビジョナリーだったりしない、ということを実証する。その上で、実際に使える経営戦略をたてる方法を提示する。

大変参考になり、一部ぜひ使ってみたいところもある本。

▲2001年12月にFast Companyというアメリカのビジネス誌が『トム・ピータース、真実の告白』というインタビュー記事を掲載し、その中で著者とム・ピータース自身が、
「『エクセレント・カンパニー』の中で我々はデータをねつ造した」と認めてしまった。
「あれはマッキンゼーのゴミ箱から出て来たガラクタで、『ヒップ・ポケット・プロジェクト』、まったくのでっち上げだったんだ」とまで語っている。(p.5)

▲経営セオリーについて:まずひとつは、経営セオリーには流行りがある、ふたつは、いくら流行って人気があるセオリーでも、すべてが正しいとは限らない。(p.5)

●リゾート再生を受託すると、星野社長には定型的な初期の経営ステップがあります。それは次のようなものです。
1. 現場の社員と「個別面談」を行う。
2. そのリゾートに関する徹底的な「市場調査」を行う。
3. そのリゾート個別の「コンセプト」を現場の社員たちにたてさせる。
4. 「コンセプト」を承認した後は「信頼して任せる」。
 これら4つのステップの中で、星野社長が最も重要だと考えているのが実は「コンセプト」作りなのです。だから、星野社長の再生経営術とは、実は「コンセプト経営」と呼ぶことができるのです。(p.47)

●並行して、徹底した「市場調査」を行います。再生するその施設の従来顧客や、見込み顧客を対象として、一連のアンケートや聞き取り調査を行うのです。これには、ホテル経営学MBAとしての星野社長のマーケティング知識が総動員されます。加えて星野社長夫人もマーケティングでは指折りのとある米国経営大学院のMBAで、現在は大手国産自動車メーカー本社で市場調査部門の執行役員を勤めているほどの専門家だという環境があります。市場および顧客調査における星野社長の造詣は日本屈指と言っても過言ではないでしょう。
 しっかりと設計された市場調査を徹底して実施すると、その調査結果を分析すれば、「基本的にどんなことをすればよいのか」、「どんな方向に進んでいけば良いのか」が導き出されます。これを星野社長は「コンセプト」と呼び [略] 「すべてはコンセプトから始まる」と考えています。「コンセプト」とは、「充分に起こりうる可能性」という性質を持ちますから、実はひとつの市場調査からいくつかの可能な「コンセプト」を読み出すことができます。
 星野社長が企業再生に置いて巧みなところは、そのいくつかの「コンセプト」を自分で当該施設の従業員たちに押し付けないこと、なんですね現場の支配人や核となる従業員を何人か選び、グループとしてその事業所の「コンセプト」を考えさせるのです。実施した市場調査のデータや結果を使って状況を分析、討議していくと、マーケティングの専門家でなくとも同じような結論ー「コンセプト」ーに到達するものです。その市場調査が周到に練り上げられたものなら、ますます結論は出しやすい。ましてや、星のリゾート社の練達した社員が参加して討議の方向をファシリテート(舵取り)していきます。[略]
 従業員たちが用意した、その施設の再生のための「コンセプト」について、星野社長は「それは何でもいいんだ」と言っています。「従業員たちが用意し、自分が納得できればいいんだ」とも言っています。それは、例の市場調査であらかじめ導かれていたいくつかの「コンセプト」ーそれは星野社長には事前に見えていますーのどれかに落ちれば良いということです。[略]
 従業員たちはその「コンセプト」を自分たちで討議して考えだしたのですから、納得感があるし、思い入れさえできている。その「コンセプト」に沿って威信腐乱に現場の改善にいそしむ、という構図です。ですから星野経営とは、とても効率の良い「ヒット・アンド・アウェイ経営」だとも言えるのです。(pp.49-51)

☆非常にわかりやすい分析で説得力がある。

●「全員参加型」の戦略立案を推奨したり、そんなことがあり得るかのように書いたものを見かけますが、そんなことは経営現場の実情にそぐわないことです。経営戦略の立案と言うのは、企業の盛衰を決定する重要な行動なので、経営責任者自身あるいは少なくとも経営者を中心とした少数のマネージャーたちによって立案されなければなりません。(p.55)

☆同意。

●ランチェスター戦略の最大の美点は、「弱者の戦略」という考え方を示していることです。(p.70)

☆一点突破、全面展開。

●私自身は[略] 3C分析だけがあれば経営者には十分だと考えます。3Cとはカンパニー、コンペティター、カスタマーの3つです。それぞれのCで重要なことと言えば、(自社の強み)、(競合の強み)、(重要顧客の要望)ということです。これらにより、当社の進むべき大きな方向を決めます。[略]
(重要顧客の要望)では、特に「不」のつく言葉をさがせ、と言っています。顧客の不満、不便、不利益、不合理などを見つけて、それを解消してあげる方向を探していきましょう。(p.163)

☆自社に応用。

●GEの経営技法から日本の会社が学べることはどんなことでしょうか。それは、まずその「進取の姿勢」だと私は思います。いつも自社の現在の状況に満足することなく、次の大きな一手を考える、そしてそれはビジネスの現場での個別な対応策などではなく、経営全般に関わる大きな新技法を取り入れて、次の段階へと昇っていく、こんな経営者の「改革への欲求」という姿勢でしょうか。(p.203)

☆自分に必要なもの。

●ウェルチは「選択と集中」戦略だけでなく、「シックス・シグマ」(品質改善技法)や「ワークアウト」(問題抽出のための社員ミーティング)などの経営技法も積極的に取り入れました。成功する経営者とは、大技・小技を間断なく繰り出すものだということがわかります(p.207)

▲私は、経営者が実行している無数の経営行動の中で、企業の成功のためには特に重要な次の4つの要素があると考えました。
1. 成長戦略
2. 組織効率
3. モチベーション
4. コミュニケーション
このうち、123はかけ算の関係で1×2×3で全体としての結果が出る、4は123のすべてを支える基盤。(p.219)

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