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『海賊とよばれた男 上・下』

『海賊とよばれた男 上・下』
百田尚樹
講談社、2012/7/12、¥1,680/¥1,680(丸善日本橋)

安倍総理のFBで推薦されていたので購入。

出光興産の創業者・出光佐三がイギリス海軍の封鎖を突破してイラン原油を輸入した「日章丸事件」をモデルにした小説。

国岡鐵造は、まだ石炭全盛で石油の使い道が見いだされていなかった頃から石油の将来性を見抜き、小売りから始めて元売りとなり、日本有数の石油会社に成長させた。その間の様々な冒険を生き生きと描いている。色々なところで推薦されるだけあり、大変面白く読んだ。

●それまで [昭和16年] 日本政府も軍部も米英との戦争はなんとしても避けたいと考えていたが、米国が石油の全面禁輸をおこなったことにより、事態は急展開した。日本は石油を確保するために、連合国のオランダ領dえあるボルネオとスマトラの油田を奪わなければならなくなった。つまり日本は石油のために大東亜戦争を始めたのだった。(上p.26)

☆開戦に至るまでの筋道は様々だろうが、最後のボタンを押したのは石油禁輸だったということ。

●GHQの最大の目的は、日本の軍事力を解体し、アメリカにとって都合のいい国に作り変えることだった。占領直後は、日本の工業力を根こそぎつぶし、農業国にしてアメリカ製品の市場にするという計画であったが、これは後に方向転換された。ただし石油に関してだけは一貫して厳しい態度を見せた。石油の供給はほぼ完全にストップしていた。すなわちこれは石油が最重要な戦略物資であり、同時に経済の根幹をなすものだったからだ。(上p.38)

☆石油の重要性。これは今も変わらない。

●「国岡商店のモットーのひとつは『黄金の奴隷たる勿れ』だ。仕事は金で選ぶものではない」(上p.78)

☆経営理念。戦後のタンク底に残る石油をさらう仕事について決断する場面で。

●聯合艦隊が輸送船を護衛することはほとんどなく、防御手段をもたない速度の遅い輸送船はアメリカの潜水艦に発見されれば、なすすべもなく沈められた。(上p.373)

☆本書中日本軍首脳の無能が繰り返し指摘されるが、ただでさえアメリカの700分の一しか持たなかった石油の重要性に基づいた政策決定をしなかったことは負け戦をさらに確実なものにした。

●白人たちに植民地にされたフィリピンもベトナムもインドネシアもマレーも悲惨だった。彼らはいっさいの工業力を与えられず、ただ資源を搾取され、そしてその奪われた資源で作られた製品を買わされるという二重の搾取をされていた。白人たちはそうやって百年も彼らを支配し、ネジひとつ作ることのできない国にしてきたのだ。
 鐵造がそれを言うと、武知 [陸軍中野学校出身] は「そのとおりです」と言った。
「アメリカは日本が朝鮮半島や満州を侵略したと糾弾しますが、日本は挑戦においても満州においても台湾においても、おびただしい資本を投入して、さまざまな施設を作り、法を整備しました。ダムを作り、発電所を作り、学校を作りました。おそらく朝鮮も満州も台湾も、この投資を基にこれから大いに発展するでしょう」(下pp.14-15)

☆日本の植民地支配の一面。

●「聯合艦隊はアメリカ海軍に多くの海戦で敗れましたが、この敗因のいくつかは石油が足りなかったからです」[略] 鐵造は黙ってうなずきながら、一国の命運を握っているのは石油であるという信念をあらためて強くした。(下pp.79-80)

☆石油があればもっとよい勝負ができたとはいっても、現実に石油がなかった以上どうしようもなかった部分もあるのではないか。

●参考図書:「マルクスが日本に生まれていたら」出光佐三(下p.353)

●[1954年] CIAの画策による[イラン] クーデターが起きなければ、イランと日本の関係は大きく変わっていたに違いない。国岡商店のその後もまったく別のものになっていただろう。しかし、それが良かったのか悪かったのかは誰にもわからない。ただ一つ言えることは、イランのアメリカに対する憎しみは永久に消えないということだ。アメリカは石油の利権を得るためにイランを踏みにじった。このことはおそらく将来にわたって大きな禍根を残すことになるだろう。(下p.358)

☆現在のアメリカイランの対立につながる話。

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