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『帝国ホテルの不思議』

『帝国ホテルの不思議』
村松友視
日本経済新聞出版社、2010/11/10、¥2,520(丸善日本橋)

帝国ホテルについて、上から見るのではなく、そこで働く人を描くことによってその全体像を浮かび上がらせることを目的として書かれた本。

さすがに最高級ホテルだけあって、従業員のプライドや職人技に感心する。少しでも真似ができればよいと思う。

また、村松の本は初めてだと思うが、変な癖のない素直な文章で非常に読みやすかった。

●多様なカテゴリのお客が存在し、[略] それらの人々が、それぞれのレベルの期待をもって帝国ホテルを訪れている。その全員に同じサービスをすることよりも、それぞれの人の期待値を、まず見抜いて対処するべきだ、と [デューティマネジャーの] 菅野さんは言う。
「それで、それに紙一枚を乗せたサービスをしなさいと」
紙一枚乗せなさい…これは見事な言葉だと感服した。(p.93)

☆いい表現。

●[シューシャイン] キンチャン:チャーチ [の靴] はブリティッシュですね。好みがありますけど、僕らの感覚では紳士物はイギリスがベストです。布地(クロース)でもそうです、素材(マテリアル)もそうです。靴もナンバーワンです。(p.268)

☆一度帝国ホテルのシューシャインに行きたくなる章。

●キンチャン:欧米、とくにアメリカのビジネスマンは、うすいゴムでできたオーバーシューズというのをロッカーに用意して、雨の時はこれを靴の上からすっぽりかぶせて、カバーリングをするという。彼らは洋服民族ですから、靴にこだわりがあるんです。雨の日に靴が傷まないように、そういうものを。(p.269)

☆日本では稀だが、やるとよいとのこと。

●午前六時から十一時までの着信は「おはようございます、帝国ホテルでございます」、十一時から午後六時までは「ありがとうございます、帝国ホテルでございます」という言葉で迎える。また、三秒(一コール)待たせたら「お待たせいたしました」、十秒待たせたら「大変お待たせいたしました」と言葉遣いを区別する。(pp.301-302)

☆電話の受け方。

●[施設・情報システム担当役員] 椎名行弥:新しいものを考えると、新しい問題が三つ起きるんだから、その三つも解決しなさいと若い人にも言うんですけど、それをずっと実戦してやってきた。ですからやっぱり、使いにくいこと、困ったことが何か引っかかって、新しいものが生まれていくんですね。(p.338)

☆手動で動く電動カーテンレールや、くねくね型読書灯、ひものない電話交換機、など前例のない設備を自らで開発してきた。自給自足の帝国ホテルならではの話。

●椎名:私が二十七歳の時企画室に引っ張ってくれた、本館改修を担当した企画室長で山野寿雄って言う人がいたんです。その人が「二十代はがむしゃらに生きろ、三十代は選んで生きろ、四十代は図々しく生きろ」と言って、四十四歳で亡くなっちゃったんで、その先の生き方を効いていない。それで自分で考えて「五十代はこだわりと好奇心で生きましょう」と。ですから、遊びの免許は五十代で相当取りました。[略] 私は五十代で死ぬと思っていたので、貯金する必要はない。もうインカム(収入)は全部使っちまえと。いまだに貯金ゼロなんです(笑)。で、六十五まで生き残っちゃったので、「六十代は義理と人情で生きようと」。

☆年代ごとの指針として参考になる。


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