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『プラチナデータ』

『プラチナデータ』
東野圭吾
幻冬舎文庫、2012/7/5、¥760(八重洲BC)

国民の遺伝子情報から犯人を特定する高精度のDNA捜査システム。その開発者の兄妹が殺害される。共同開発していた神楽は、システムが自分を犯人として表示するのを見て愕然とする。なぜシステムが自分を犯人としたか、また真犯人は誰か、浅間警部補に追われながら少しずつ真相に迫る。

[ネタバレ]
本作はミステリーというよりファンタジー。謎解きを期待すると肩すかしをくらう。DNA検索から除外するVIPデータをプラチナデータとし、プラチナデータが犯人として表示される場合には別人を犯人として表示する、というのはありがちではあるが、そういう例外条件は現実的には破綻を来すし、冤罪のおそれもある。その例外条件を解除するプログラムを兄妹が作成していた、ということだが、新たなバグを生じる可能性のあるパッチを当てるよりはプラチナデータを全削除してしまえばすむことだ。

また、神楽の多重人格リュウが謎解きに重要な役回りを演じる。今邑彩『ルームメイト』で安直な多重人格を見せられて以来、この系統には信頼をおいていない。必然性があればよいのだが、安直な謎解きに使われがちで、本作もその例に漏れなかった。多重人格が出てきた瞬間かなりテンションが下がった。

同様に、神楽の逃避行中には謎の少女スズランが彼に同行する。スズランも幻影として現れているが、天童荒太『悼む人』で倖世が殺した夫の朔也の幻影をまといながら静人と旅をし、癒されることで幻影が消える、というプロットを思い出させる。が、『悼む人』に比べ、こちらも必然性があまり感じられない。

着眼点は現代社会の一断面をとらえていて、若干プロットは甘いが一気に読めるので、エンターテイメントとしてはよくできた小説。

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