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『恋文の技術』

『恋文の技術』
森見登美彦
ポプラ文庫、2011/4/5、¥651(BO¥350)

京都の大学院から能登の研究所に飛ばされた守田一郎は、寂しさを持てあまして知人友人妹に片っ端から手紙を送る。小説家は書簡体小説を一度は書いてみたくなるらしいが自分は夏目漱石の書簡体小説が面白くてまねしようと思っただけ、と著者自身あとがきで述べているように、本書は習作のような感じがする。だからといって、完成度が低いと言うことはなく、読み進める内に森見ワールドにくるくる巻き取られていくような、とても読み心地のよい小説。

大学院の先輩や妹、研究所の先輩になじられながらあこがれの伊吹さんに理想の恋文を書こうとする守田一郎。「森見登美彦」にも助言を求め、逆に愚痴を聞かされる始末。果たして理想の恋文は伊吹さんの心に響くのか。最後までわくわくどきどき、自分の大学時代を思い出して、そんなこともあったな、と羞恥に身もだえしながら楽しく読んだ。

何かと万城目学と比べられ、少しマジックリアリズムの色が濃いため、今まで自分はちょっと苦手だったが、本書はとても楽しく読めて、読了した瞬間、森見登美彦天才、と思わず呟いた。

●もっと根本的な問題に俺は直面しています。
 何遍も何遍も恋文を書いては破き、書いては破いている内に、俺は文章というものが何なのか分からなくなってきました。「文章を書く」という行為には、たくさんの罠がひそんでいる。俺たちは自分の思いを伝えるために文章を書くというように言われます。だがしかし、そこに現れた文字の並びは、本当に俺の思いなのか?そんなことを誰がどうやって保証するのか。書いた当人だって保証できるかどうかわからない。自分の書いた文章に騙されているだけかもしれない。じいっと考えては書き考えては書きしていると、不思議でならなくなってくるのです。自分の想いを文章に託しているのか、それとも書いた文章によって想いを捏造しているのか。(pp.189-190)

☆守田の言葉にのせて、森見自身の思いを吐露しているような部分。

●そのとき、天啓があったのです。
 おっぱいも恋心も、秘すれば花。
 そうなのだ。剥き出しの恋心を書き、書いたものにとらわれて、自分の情念に溺れるから恋文が腐臭を放つのです。つまり、俺が書くべき恋文、真に有効な恋文とは、恋文に見えない恋文ではないのか。俺はようやく発見しました。(p.197)

☆何か森見はおっぱいにこだわりがあるのか?「ペンギン・ハイウェイ」でもおっぱいは重要なキーワードであった。

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