« 『甘い物は脳に悪い』 | トップページ | 『反ポピュリズム論 』 »

『財務省』

『財務省』
榊原英資
新潮新書、2012/6/20、¥714(有隣堂亀戸)

ミスター円と言われた著者による財務省の解説。おおよその歴史と組織構造に一章ずつあて、ほかの章は著者から見た、財務官僚の人物評。極端に財務省を悪者にする本もどうかと思うが、本書は逆に財務省寄りに過ぎる気がする。

また、本書中に「大物次官」という言葉が頻繁に出てくるが、そもそも何をもって「大物」というのかが説明されていないので、結局言葉だけの話で実態がよくわからない。

結局、財務省について知ろうと思って本書を読んでいるはずなのだが、本書中に出てくる財務省用語をすでに読者がある程度知っていることを前提としているため、なんだかよくわからない部分が多かった。特に歴代の財務官僚への人物評は冗長で、部外者にはほとんど興味が持てず、一般向けの書籍でやるのはあまり親切ではないという印象を持った。

●日本の国民負担率(租税負担プラス社会保険負担の国民所得に対する比率)は2010年度で39.0%と、OECD(経済協力開発機構)29か国のうちメキシコ、スイス、アメリカ、韓国についで五番目の低さです。その意味で、日本はいわゆる「小さな政府」の状態を維持しています。租税負担率は22.7%でアメリカの26%より低い水準です。(p.8)

☆印象論で負担が高いように思っていたが、何ごとも統計や数字で確認することが重要。

●OECDの2007年の推計を基にした調査によると、日本の公務員の総人件費は対GDP比で約6%。これはイギリスやフランスの半分程度で、OECD主要国中では最低です。また公務員の数も人口1000人当たり42.2人とこれもイギリスやフランスの半分以下(2006年の内閣府調査)。この42.2人という数字は、地方公務員や公社・公団・政府系企業職員を含んだ数字で、それらを除く行政機関、議会、司法の分野などで働く国家公務員の数はさらに少なく、人口1000人当たり4人です。これは英国、フランスの10分の1にすぎない上、中央政府の権限が強くない連邦国家のドイツより少ないのです。これ以上公務員、特に国家公務員を削減する必要があるのでしょうか。筆者にはとうていそうは思えません。(p.9)

☆政治家は公務員人件費削減を叫ぶが、やはり実際の数字に基づいた根拠に乏しい。

●実は、日本が先進国中で飛び抜けて高いのが、議員の歳費です。国会議員の歳費は年間2000万延を超え、アメリカ等を上回り世界のトップクラス。さらに問題なのは地方議員です。「構想日本」が2006年に発表した調査では、都道府県議会議員の平均年収は2119万円。これはアメリカの州議会議員の5倍以上です。イギリスとフランスにいたては、地方議員の歳費はそれぞれ73万円、数十万円にすぎません。連邦制をとるスイスでは大半が無報酬です。ヨーロッパでは地方議員はパートタイムの職業とされ、ボランティア的に務めている人が多いからです。(p.9)

☆政治家の歳費こそが問題。

●公務員天国は、スウェーデンやノルウェーなどの北欧諸国です。対GDP比の公務員の規模は双方とも30%弱と日本の5倍近くになっています。厚い社会福祉を維持するために多くの公務員が必要なのです。日本では北欧諸国が好きな人たちが少なくありませんが、北欧こそ公務員天国だということにも留意する必要があるでしょう。(p.72)

☆高福祉には多くの公務員が必要という当たり前の話。

●[野田政権では] 党と政府の主要な役職には、松下政経塾の出身者が就いています。行政の経験もなければ民間企業での勤務の経験もほとんどない彼らは、演説はうまいし政治のプロでもあるのですが、行政や経済については素人です。また、経済界や行政に人脈もありません。政治主導をうたったところで、それを実現するメカニズムがないのです。[略]
 特に昨今、松下政経塾の悪影響等のために、多くの政治家達の経験や知識のレベルは下ってきています。それぞれの分野の専門家であり、かつ「エリート」である官僚達が彼らを巧みに補佐し誘導しなければ、日本の政治・行政はおかしくなってしまいます。(pp.188-189)

☆確かにその通りなのだろうが、ずいぶん松下政経塾に厳しい見方をしている。

|

« 『甘い物は脳に悪い』 | トップページ | 『反ポピュリズム論 』 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/40886/55743235

この記事へのトラックバック一覧です: 『財務省』:

« 『甘い物は脳に悪い』 | トップページ | 『反ポピュリズム論 』 »