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『スターバックス再生物語 つながりを育む経営』

『スターバックス再生物語 つながりを育む経営』
ハワード・シュルツ (著)、ジョアンヌ・ゴードン (著)、月沢 李歌子 (翻訳)
徳間書店、2011/4/30、¥1,785(BO¥900)

業績が下落し始め、経営方針が瞑想し始めた2008年1月に創業者である著者がCEOに復帰し、創業精神を取り戻し、各種経営改革を実行して業績が回復軌道に乗った2010年末までの経緯とその中での著者の思いを語った本。

会社内部の乱れとリーマンショックが重なったことで、非常に厳しい状況に追い込まれながら、創業者として再度経営の最前線に立ち、原点回帰ほ果たした過程が克明に描かれている。もちろん著者の経営者としての才能がなせる技ではあって簡単に真似できることではないが、「経営者・創業者の思い」というものがいかに重要かについて大変勉強になった。

●商人が成功するかどうかは、物語をいかに語ることができるかにかかっている。売り場に足を踏み入れたときに見たり、聞いたり、嗅ぎ取ったりするものが感情を導き、商品を素晴らしいと思わせる。わたしはずっと直感的にそれを理解していた。だからこそ、2006年と2007年は、わたしたちのコーヒーの良さが感じられず、スターバックスの店舗を訪れるたびに心が沈んだのだ。お客様にはもっと素晴らしい体験をしてほしかった。(p.52)

☆スターバックスの中核価値はExperienceにあることの説明。

●「[ブランドとして重要な] 唯一のフィルターは、わたしたちが誇りに思うことができるか。お客様の体験がより良いものになるか。お客様がスターバックスをより良く理解し、これまで以上に好きになってくれるかということです」(p.101)

☆自分達が誇りに思い、お客様のためになることだけをすることの重要性。

●CEOに復帰してわたしがもらった最も重要な助言の一つ[として]、[略] [コストコ] CEOであるジム・セネガルがこう言ったのである。
「中核となるお客様を守り、維持しなければならない」。彼を招いたマーケティングチームの前で話をしてもらったときのことだった。「中核のお客様を失い、景気後退時に取り戻すのは、お客様に投資をし、維持するのよりずっと費用がかかる」(p.173)

☆既存のお客様と取引を続けることの重要性。

●こうした[短期的に収益を改善する] 提案を無視したわけではなかった。しかし、どんなブランドも、妥協をすれば、たとえ短期の収益が良くても固有の趣を失ってしまう。スターバックスの価値を守り、わたしたちを成功に導いたものに投資し、全力を注がなければならない。すぐに効く薬はないのだ。わたしたちが本物であれば、正しい道を進み続ければ、改革は成功すると信じなければならない。(p.224)

☆ブランド価値、企業中核価値を守るには、安易な手法に頼らないこと。

●取締役会の役割は会社を経営することではない。会社の経営が確実にうまくいくようにすることだ。(p.281)

☆混同しがちなのでしっかりと区分すること。

●わたしは、リーダーとして成功する決まった方法があると考えたことはない。しかし、優れたリーダーには二つの関連する要素があると思っている。自分の組織が正しいことを目指しているという揺るぎなき自信と、人々を率いる能力だ。(p.331)

☆前者は意識すればある程度できるだろうが、後者は多分に才能による。そのあたりが経営者の能力の差になるのではないか。

●わたしがよく言うように、イノベーションとは商品を見直すことではなく、関係について考え直すことだ。(p.342)

☆単なる技術の問題ではない、というのはドラッカーに通じる考え方。

●取締役のメロディ・ホブソンはハリエット・ビーチャー・ストウ夫人の言葉を引用して送ってくれた。彼女の鋭い視点はわたしに何度も力を与えてくれている。
 「進退きわまって四方八方敵だらけとなり、もう一刻も持ちこたえられないという気持ちになっても、決してそこであきらめてはいけない。情勢が一変するのは、まさにそれからなのだから」(p.383)

☆よい励ましの言葉。

●わたしは、リーダーの能力とは、他の人に自信を与えることだと思っている。(p.392)

☆叱るより褒めること、社員や仲間に後押しする言葉を与えること。

●良いときもあれば、悪いときもあり、ふたたび良いときがやってくる。大切にするものを手放すことなく、失った夢を取り戻し、さらに大きな夢を見て、変化し続ける複雑な世界で成功することは可能なのだ。スターバックスが最も大切にしているのは、従うべき指針とその実現を可能にする文化である。
 わたしたちは、創造性と規律、起業家精神とプロセス、さらに徹底した技術革新(イノベーション)が健全なバランスを保つ文化を取り戻した。しかし、この二年間で一番重要なことは、困難に直面しても、わたしたちの価値を守り抜いたという自信である。激動の中にあってもわたしたちの価値とわたしたちのやり方を忘れずにいることで、パートナーたちはこれからも誇りを失わず、絆を確かなものにしながら成長していくだろう。(p.400)

☆企業としての中核価値=企業理念の重要性。

●成長は戦略ではない。戦術である。それをわたしたちは十分に学んだ。規律のない成長を戦略としたために、スターバックスは道を見失ってしまったのだ。しかし、過去の過ちはもう繰り返さない。(p.401)

☆「成長は戦略ではない、戦術である」というのは言われてみればその通りだが、今まで思ったこともなかった。大変驚き感動した言葉。


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