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『深夜特急〈1〉香港・マカオ』

『深夜特急〈1〉香港・マカオ』
沢木 耕太郎
新潮文庫、1994/3/25、¥452(BO¥250)

出版当初、読んだ者がみな旅人になったという伝説のルポルタージュ。著者が、26歳のときにデリー・ロンドン間をバスで旅する、と思い立つ。インド航空のチケットで2箇所のストップオーバーができることから、香港にちょっと立ち寄るつもりで降りたら、思わず長居をしてしまい、マカオでは大小にハマる、という話。まだデリーのスタート地点にも立っていない。結局15年かけて書き上げたそうだが、たぶん第一巻が記憶も鮮やかで感情移入もされているのではないか。

1947年の典型的な団塊世代の著者が、20代後半で未知の土地をガイドブックなしで(当時はそんなものはなかったけれど)冒険をする、という仕立てなので、たぶん同世代には圧倒的に受けたのだろう。自分も若いときに読んでいれば、また違った感想で旅人になっていたかも知れない。が、今読んでも世界の状況も変わっているし、旅人になりたいと思うほどの感情移入はしなかったが、当時の空気を知ると言う意味で興味深く読んだ。

●山口[文憲] そのころ、香港についてのまともな紀行なんて一つもなかったですね。沢木さんが書いたのを読むまで、きっと私の中には、香港の「絵」がなかったんじゃないかな。(p.225)

☆「地球の歩き方」などなく、地図があるかないか程度の時代なので、今に比べると海外旅行の冒険感はそうとう大きかっただろうし、同世代のあこがれを誘ったのも理解できる。

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『スターバックス再生物語 つながりを育む経営』

『スターバックス再生物語 つながりを育む経営』
ハワード・シュルツ (著)、ジョアンヌ・ゴードン (著)、月沢 李歌子 (翻訳)
徳間書店、2011/4/30、¥1,785(BO¥900)

業績が下落し始め、経営方針が瞑想し始めた2008年1月に創業者である著者がCEOに復帰し、創業精神を取り戻し、各種経営改革を実行して業績が回復軌道に乗った2010年末までの経緯とその中での著者の思いを語った本。

会社内部の乱れとリーマンショックが重なったことで、非常に厳しい状況に追い込まれながら、創業者として再度経営の最前線に立ち、原点回帰ほ果たした過程が克明に描かれている。もちろん著者の経営者としての才能がなせる技ではあって簡単に真似できることではないが、「経営者・創業者の思い」というものがいかに重要かについて大変勉強になった。

●商人が成功するかどうかは、物語をいかに語ることができるかにかかっている。売り場に足を踏み入れたときに見たり、聞いたり、嗅ぎ取ったりするものが感情を導き、商品を素晴らしいと思わせる。わたしはずっと直感的にそれを理解していた。だからこそ、2006年と2007年は、わたしたちのコーヒーの良さが感じられず、スターバックスの店舗を訪れるたびに心が沈んだのだ。お客様にはもっと素晴らしい体験をしてほしかった。(p.52)

☆スターバックスの中核価値はExperienceにあることの説明。

●「[ブランドとして重要な] 唯一のフィルターは、わたしたちが誇りに思うことができるか。お客様の体験がより良いものになるか。お客様がスターバックスをより良く理解し、これまで以上に好きになってくれるかということです」(p.101)

☆自分達が誇りに思い、お客様のためになることだけをすることの重要性。

●CEOに復帰してわたしがもらった最も重要な助言の一つ[として]、[略] [コストコ] CEOであるジム・セネガルがこう言ったのである。
「中核となるお客様を守り、維持しなければならない」。彼を招いたマーケティングチームの前で話をしてもらったときのことだった。「中核のお客様を失い、景気後退時に取り戻すのは、お客様に投資をし、維持するのよりずっと費用がかかる」(p.173)

☆既存のお客様と取引を続けることの重要性。

●こうした[短期的に収益を改善する] 提案を無視したわけではなかった。しかし、どんなブランドも、妥協をすれば、たとえ短期の収益が良くても固有の趣を失ってしまう。スターバックスの価値を守り、わたしたちを成功に導いたものに投資し、全力を注がなければならない。すぐに効く薬はないのだ。わたしたちが本物であれば、正しい道を進み続ければ、改革は成功すると信じなければならない。(p.224)

☆ブランド価値、企業中核価値を守るには、安易な手法に頼らないこと。

●取締役会の役割は会社を経営することではない。会社の経営が確実にうまくいくようにすることだ。(p.281)

☆混同しがちなのでしっかりと区分すること。

●わたしは、リーダーとして成功する決まった方法があると考えたことはない。しかし、優れたリーダーには二つの関連する要素があると思っている。自分の組織が正しいことを目指しているという揺るぎなき自信と、人々を率いる能力だ。(p.331)

☆前者は意識すればある程度できるだろうが、後者は多分に才能による。そのあたりが経営者の能力の差になるのではないか。

●わたしがよく言うように、イノベーションとは商品を見直すことではなく、関係について考え直すことだ。(p.342)

☆単なる技術の問題ではない、というのはドラッカーに通じる考え方。

●取締役のメロディ・ホブソンはハリエット・ビーチャー・ストウ夫人の言葉を引用して送ってくれた。彼女の鋭い視点はわたしに何度も力を与えてくれている。
 「進退きわまって四方八方敵だらけとなり、もう一刻も持ちこたえられないという気持ちになっても、決してそこであきらめてはいけない。情勢が一変するのは、まさにそれからなのだから」(p.383)

☆よい励ましの言葉。

●わたしは、リーダーの能力とは、他の人に自信を与えることだと思っている。(p.392)

☆叱るより褒めること、社員や仲間に後押しする言葉を与えること。

●良いときもあれば、悪いときもあり、ふたたび良いときがやってくる。大切にするものを手放すことなく、失った夢を取り戻し、さらに大きな夢を見て、変化し続ける複雑な世界で成功することは可能なのだ。スターバックスが最も大切にしているのは、従うべき指針とその実現を可能にする文化である。
 わたしたちは、創造性と規律、起業家精神とプロセス、さらに徹底した技術革新(イノベーション)が健全なバランスを保つ文化を取り戻した。しかし、この二年間で一番重要なことは、困難に直面しても、わたしたちの価値を守り抜いたという自信である。激動の中にあってもわたしたちの価値とわたしたちのやり方を忘れずにいることで、パートナーたちはこれからも誇りを失わず、絆を確かなものにしながら成長していくだろう。(p.400)

☆企業としての中核価値=企業理念の重要性。

●成長は戦略ではない。戦術である。それをわたしたちは十分に学んだ。規律のない成長を戦略としたために、スターバックスは道を見失ってしまったのだ。しかし、過去の過ちはもう繰り返さない。(p.401)

☆「成長は戦略ではない、戦術である」というのは言われてみればその通りだが、今まで思ったこともなかった。大変驚き感動した言葉。


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『反ポピュリズム論 』

『反ポピュリズム論 』
渡邉恒雄
新潮新書、2012/7/20、¥735(有隣堂亀戸)

食わず嫌いもよくないと思い、手に取った。ナベツネ氏による小泉・橋下現象への批判本。
大衆迎合は戦前の近衛文麿、イギリスのロイド=ジョージなど、なんども繰り返されてきて、危険は方向へ政治を誘導する。それを防ぐため、新聞は衆愚政治と戦わなければならない、という主張。

読売新聞は常に会議によって社論を決めているから一人の独裁ではない、という意味のことを書いているが、その部分は色々なことを想像して面白く読んだ。また、新聞記者や報道関係者は自分がいかに政治家と親しく、政治に影響を及ぼしたかを吹聴したがる傾向があるが、著者もその例に漏れず、さまざまな場面や自民党の歴代連立政権の成立に裏側で関わったことを滔滔と述べているのが残念。

相続税免除の代わりにマイナス利子国債を購入させることで、30兆円程度のタンス預金を流通させようという試案は面白かった。


●[1997年の消費税] 5%引き上げが日本に不況をもたらしたという説がある。しかし実際は[略] タイのバーツ危機に端を発したアジア通貨危機から金融収縮の波が日本にも押し寄せ、消費税率引き上げのタイミングと運悪く重なったためであって、消費税のために不況になったと断定するのは誤りだ。(pp.170-171)

☆一つの見方として興味深いが、数字による分析が必要。現に1989年3%導入以降景気は低迷した。

●厚生労働省所管の医療経済研究機構が2004年にまとめた報告書も示唆に富んだ内容である。
 医療、介護、社会福祉の各分野に投資した場合の経済効果を試算したもので、原材料の購入や従業員の給与増などが日本経済全体に需要拡大をもたらし、一億円の投入で、いずれも4億4千万円前後の生産誘発効果が生じるとしている。公共事業の効果(約4億1500万円)よりも高い数字だ。同様に雇用を誘発する効果も、介護で26人、社会福祉では20人にのぼり、公共事業(10人)より多いという結果が出た。
 国民の医療・介護・福祉を守るためにも、日本経済を活性化するためにも、社会保障分野で必要な投資を惜しむべきではない。(p.180)

☆社会福祉分野の経済効果が結構大きく、意外に感じた。

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『財務省』

『財務省』
榊原英資
新潮新書、2012/6/20、¥714(有隣堂亀戸)

ミスター円と言われた著者による財務省の解説。おおよその歴史と組織構造に一章ずつあて、ほかの章は著者から見た、財務官僚の人物評。極端に財務省を悪者にする本もどうかと思うが、本書は逆に財務省寄りに過ぎる気がする。

また、本書中に「大物次官」という言葉が頻繁に出てくるが、そもそも何をもって「大物」というのかが説明されていないので、結局言葉だけの話で実態がよくわからない。

結局、財務省について知ろうと思って本書を読んでいるはずなのだが、本書中に出てくる財務省用語をすでに読者がある程度知っていることを前提としているため、なんだかよくわからない部分が多かった。特に歴代の財務官僚への人物評は冗長で、部外者にはほとんど興味が持てず、一般向けの書籍でやるのはあまり親切ではないという印象を持った。

●日本の国民負担率(租税負担プラス社会保険負担の国民所得に対する比率)は2010年度で39.0%と、OECD(経済協力開発機構)29か国のうちメキシコ、スイス、アメリカ、韓国についで五番目の低さです。その意味で、日本はいわゆる「小さな政府」の状態を維持しています。租税負担率は22.7%でアメリカの26%より低い水準です。(p.8)

☆印象論で負担が高いように思っていたが、何ごとも統計や数字で確認することが重要。

●OECDの2007年の推計を基にした調査によると、日本の公務員の総人件費は対GDP比で約6%。これはイギリスやフランスの半分程度で、OECD主要国中では最低です。また公務員の数も人口1000人当たり42.2人とこれもイギリスやフランスの半分以下(2006年の内閣府調査)。この42.2人という数字は、地方公務員や公社・公団・政府系企業職員を含んだ数字で、それらを除く行政機関、議会、司法の分野などで働く国家公務員の数はさらに少なく、人口1000人当たり4人です。これは英国、フランスの10分の1にすぎない上、中央政府の権限が強くない連邦国家のドイツより少ないのです。これ以上公務員、特に国家公務員を削減する必要があるのでしょうか。筆者にはとうていそうは思えません。(p.9)

☆政治家は公務員人件費削減を叫ぶが、やはり実際の数字に基づいた根拠に乏しい。

●実は、日本が先進国中で飛び抜けて高いのが、議員の歳費です。国会議員の歳費は年間2000万延を超え、アメリカ等を上回り世界のトップクラス。さらに問題なのは地方議員です。「構想日本」が2006年に発表した調査では、都道府県議会議員の平均年収は2119万円。これはアメリカの州議会議員の5倍以上です。イギリスとフランスにいたては、地方議員の歳費はそれぞれ73万円、数十万円にすぎません。連邦制をとるスイスでは大半が無報酬です。ヨーロッパでは地方議員はパートタイムの職業とされ、ボランティア的に務めている人が多いからです。(p.9)

☆政治家の歳費こそが問題。

●公務員天国は、スウェーデンやノルウェーなどの北欧諸国です。対GDP比の公務員の規模は双方とも30%弱と日本の5倍近くになっています。厚い社会福祉を維持するために多くの公務員が必要なのです。日本では北欧諸国が好きな人たちが少なくありませんが、北欧こそ公務員天国だということにも留意する必要があるでしょう。(p.72)

☆高福祉には多くの公務員が必要という当たり前の話。

●[野田政権では] 党と政府の主要な役職には、松下政経塾の出身者が就いています。行政の経験もなければ民間企業での勤務の経験もほとんどない彼らは、演説はうまいし政治のプロでもあるのですが、行政や経済については素人です。また、経済界や行政に人脈もありません。政治主導をうたったところで、それを実現するメカニズムがないのです。[略]
 特に昨今、松下政経塾の悪影響等のために、多くの政治家達の経験や知識のレベルは下ってきています。それぞれの分野の専門家であり、かつ「エリート」である官僚達が彼らを巧みに補佐し誘導しなければ、日本の政治・行政はおかしくなってしまいます。(pp.188-189)

☆確かにその通りなのだろうが、ずいぶん松下政経塾に厳しい見方をしている。

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『甘い物は脳に悪い』

『甘い物は脳に悪い』
笠井 奈津子
幻冬舎、2011/9/29、¥777(有隣堂亀戸)

甘い物を食べると体に悪い、というタイトルではあるが、内容は普通にバランスよく食べましょう的なもの。アマゾンの評価は結構厳しいが、入口として食べ物の概要を知るにはよいのではないか。

●脳の酸欠は、激しい運動によらなくても、ヘモグロビンの材料となる鉄分が不足すれば怒ります。たとえば、立ちくらみや貧血も、脳の酸欠が引き起こしています。鉄分を多く含む食材は、ほうれん草、ひじき、貝類、牛や鳥のレバーなどですが、現代人の食卓にはなかなかこうした食材が上がる機会がありません。そのため、大勢の人が鉄分不足による慢性的な脳の酸欠状態を起こしているのではないかと思います。(P.99)

☆たしかにあまり食べてない。

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『中国古典の名言200』

『中国古典の名言200』
守屋淳
日経BP社、2011/6/2、¥1,575(L)

「名経営者を救った」と副題にある名言集。中国古典の言葉は多くあるが、そこから自分の腑に落ちるものを探して使えばよいので、あまり深く考えずにさらっと目を通した。

●苟(まこと)に日に新たに、日日に新たに、また日に新たに
 一日を新たな気持ちで、日々を新たな気持ちで、また一日を新たな気持ちで。『大学』伝二章

☆元経団連会長土光敏夫氏の座右の銘とのこと。

●疑わば用うるなかれ、用いては疑うなかれ
 疑わしい相手は始めから登用するな。一旦登用したなら疑うな。『通俗編』交際

☆採用でもなんでも。

●孰(たれ)か怨みに任じ、謗(そし)りを分かつを宰相の細行(さいこう)となすと謂わんや
 怨みを身に受け、誹謗を受け止めることも、宰相の重要な職責なのだ。『為政三部書』廟堂忠告

 これは四字熟語にすれば「任怨分謗(にんえんぶんぼう)」となりますが、戦後の首相の指南番として知られた安岡正篤(ひろ)が、政財界の指導者たちに授け続けた言葉として知られています。(P.158)

☆わかってはいるけれど。

●善く兵を用うる者は、先ず測るべからざるを為す
 戦上手は、まずこちらの動きを察知されないようにする。『李衛公問対』上の巻

 [略] 敵に勝つという場合、情報量で差を付けることは、より正しい判断を導くための基本条件になるわけです。
 この観点では、自社の利益を十倍にしたことで有名なキャノン電子の坂巻久社長から、まさしく正鵠を得た名言をうかがったことがあります。[略]
「交渉ごとで勝ちたいと思ったら、とにかく相手よりたくさん情報をとることですよ。それができれば、交渉事は勝てます。もしそれが無理だったら、交渉自体しなければいい。そうすれば百戦百勝ですよ」(PP.217-218)

☆情報の重要性。

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『継続は、だれも裏切らない』

『継続は、だれも裏切らない』
内藤誼人
PHP研究所、2010/2/27、¥1,260(L)

図書館で目にとまったので読んだ。

「結局、努力をつづけた人の勝ち」と副題にあるように、努力を続ければ成功できる、という本。当たり前のことを言っているだけなので、だからどうした、という感じではあるが、様々な成功秘訣本から切り貼りしたような内容なので、復習の意味では役に立った。著者は一応心理学者なので、それなりに使える部分もあるという印象。

●人と同じ事をしているうちは、「努力」とは呼ばない
 他人と同じ事をやっているうちは、それは「努力」とは呼ばない。他人よりもたくさん努力するからこそ、「人に抜きんでる」ことができるのであって、そこまでいってこそ、初めて努力と呼べるのである。(p.29)

☆見城の「圧倒的な努力」柳井の「100%全力でやりきる」と同意。

●身体を活性化し、やる気を出すには、アドレナリンを分泌させればいいということになるが、それには「赤いもの」を身につけることが効果的である。赤い色を見ると、交感神経の働きが活性化し、エネルギッシュになれるからだ。(p.54)
 なお、本を読むときに、気になる箇所にペンで線を引くときにでも、できればクロではなく赤い色のボールペンを使うとよい。そうすると集中力が高まって、読書力自体がアップするからだ。(p.56)

☆ちょっと根拠が怪しいが、そのうち試す。

●[社会的手抜き現象といって、グループで集まると必ず手を抜いてしまうので] 努力をするときには、他人に頼ってはならない。あくまでも一人でやろう。(p.59)

☆面白い見解。

●[座禅、茶道、剣道などで姿勢をうるさく言われる理由は] 美しさと同時に、脳に刺激を与え、集中させる効果を経験的に認めているからである。集中力、記憶力、持続力が、背筋をぴんと伸ばすことでアップするのだ。[略] だらしない姿勢はラクなように見えて、意外に疲れるのである。逆に、良い姿勢のほうが、むしろ疲れは少ない。(pp.60-61)

☆自分の姿勢はよくないので、改善したい。

●余計な声に惑わされてはいけない。物事を単純に考えれば、自分の目標達成のために、一番大切な「基礎」が何なのかはすぐにわかるはずだ。そしてそれがわかれば、他のやり方などはもうどうでもいいのであって、基本練習を繰り返せばいいのである。(p.84)

☆何ごとも近道はない。

●アリゾナ大学のブレイナード博士によると、他人に言われたことは、自分でも気づかないうちに意識の中に紛れ込んで、暗示効果をもたらすそうである。(p.87)

☆努力していることを人に言うと、余計なことを言う人がいるので、黙っていろ、という項目の話。ただ、これは他にも普段接するニュースや新聞、会う人などにも通用する話なので、何を見るか、誰と話すかについても慎重にならなければならない。

●仕事でもそうで、本業に徹底的に打ち込むからこそ、事業は成功するのである。それなのに「多角経営」などと格好のいいことを言って、あっちをやったり、こっちをやったりしている会社はたいていダメになっていく。(p.99)

☆ひとつのことに集中して取り組め、という話。

●身体をあまり動かさない人は、心も弱くなる。
 体力のない人は、すぐに弱音を口にし、何でもすぐに諦めてしまうのだ。
 だから、もし努力を継続する精神力を養いたいのなら、まずは体力をつけることが先決になってくる。(p.103)

☆養生に留意。

●将来、大物になって大豪邸に住みたいのなら、豪邸を見つけるたびに写真を撮らせてもらうとよい。そうすれば、「いつか、きっと私も!」という気分になれるはずだ。[略] 写真や切り抜きなどを身の回りに置いておけば、たえず目標を意識することができる。(p.130)

☆GMOインターネットの熊谷正寿が実践している手法。

●実のところ、性格を変えるのはそんなに難しくもないのである。楽観的な性格になりたいなら、「陽気に振る舞う」というだけでも、ずいぶんちがってくる。
 たとえば、いつでもニコニコと笑顔を作るようにすると、たとえそれが作り笑いであっても、性格は明るくなっていく。なぜなら、笑顔を作るようにすると、心理的なムードも明るくなってくる、というデータがあるからだ。
 最初は、縁起でも全然かまわないのである。
 明るく、陽気で、元気な人間であるかのような演技をしていると、そのうちに性格も影響を受けるのである。だから、思いっきり陽気な人間を演出しながら毎日の生活を送ってみるとよい。(p.149)

☆「楽しいから笑うのではない、笑うから楽しいのだ」ということ。言うは易く行うは難し。

●アルバータ大学のジュディ・キャメロン博士によると、ご褒美はたしかに人間のやる気を高める効果があるが、「頑張っていない内に与えられたご褒美は、むしろモチベーションを下げる」効果にしかならないという。ご褒美を与えるタイミングを間違えると、逆効果にしかならないのだ。自分で自分にご褒美をあげるときも同様だ。(p.186)

☆今後気をつける。

●[ミネソタ大学のキャサリン・ヴーズ教授の実験によると] 私たちは、お金について意識させられると努力を継続することが、はっきりと示されたのである。したがって、このデータを参考にすると、たえず頭の中を「お金」のことでいっぱいにしておけば、それだけ努力家になれるということが推測できる。
「お金のことを考えるなんて、汚らわしい」などと思わず、お金についてどんどん考えていいのである。自分の努力がお金になると思えば、苦しさも喜びに変わるはずだ。(p.194)

☆確かにそのような気もするが、それでいいのか?

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『「知」の十字路---明治学院大学国際学部付属研究所公開セミナー3 』

『「知」の十字路---明治学院大学国際学部付属研究所公開セミナー3 』
原武史
河出書房新社、2011/5/20、¥2,310(L)

明治学院大学国際学部が主催している公開セミナーをまとめたもの。表紙に書かれた講師が面白そうだったので読んだ。昨年の講演なので比較的新しく、講師がバラエティに富んだ人選なので、楽しく読んだ。
その中で、佐野眞一と佐藤優は特に面白く読んだ。反面、東浩紀は迷路にはまった感じの話で少し残念だった。

●[佐野眞一:] ノンフィクション作家としての清張について話すならば、当然、清張の金字塔とも言うべき「二・二六事件」(『昭和史発掘』文藝春秋、1968、のちに文春文庫)について触れざるを得ませんが、その前に『神々の乱心』について言いますと、「清張というのはすごい男だな」と一読して思いました。(p.25)

☆そのうち読む。

●[佐藤優:] 今、中国では、負の連帯意識によって、中華帝国時代の「漢人」とは異なる「中国人」という近代的な民族が作られています。このとき、我々日本人が「敵のイメージ」にされてしまっているため、日本と中国は、国家という位相では、ぜったいに仲良くならないことを前提として、お互いの関係を組み立てないといけない。(p.54)

☆大変に難しい問題。

●[佐藤:] 原 [武史] 先生は、『大正天皇』(朝日選書、2000)と『昭和天皇』(岩波新書、2008)の中で、宮中で今行われている祭祀のほとんどが近代になって創られた、「創られた伝統」であることを明らかにしています。しかし、この「創られた伝統」は日本に限ったことではありません。先程挙げた『民族とナショナリズム』に書かれていますが、ナショナリズムをめぐって「古からある」と言われる表象の多くが近代になってから創られたものなんです。つまり、原先生の指摘は、普遍的な性格を持っている。(p.56)

☆知らなかったこと。

●[井上章一:] たとえば、料理番組で、中華料理を作っているのに、ガスの炎をいっさい見せない演出になっている映像がある。これはもう、間違いなく東京電力がスポンサーになっています。彼らはガスの炎が見えることをいやがるんです。そしてテレビマンはガスの炎を見せなくても料理の画を美しく撮ります。これはほとんど、スターリン体制の中で、何もできない中で表現にたずさわったソビエトの社会主義リアリズムの作家と同じです。(p.229)

☆スポンサーの絶対権力。

●[井上] 私がもっともみみっちいテーマに挑んだものに『パンツが見える。羞恥心の現代史』(朝日選書、2002)という本があります。(p.231)

☆そのうち読む。

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『史記の風景』

『史記の風景』
宮城谷昌光
新潮文庫、2000/5/1、¥460(L)


産経新聞、『波』と掲載先を変えて3年続いた連載をまとめたもの。『史記』の世界を、その空白を時には資料・時には想像で埋めながら豊かに描く。

この年になると、四書五経など中国古典の素養がないことで自分の思考が薄っぺらく感じられて、学生の時にしっかりやっておけばよかったと後悔する。本書はエッセイだが、自分に素養があればもっと楽しめただろうと少し残念。

●[晋の] 士会が楚軍との決戦をひかえた軍議の席で、楚軍と争うことの不利を説いた。そのなかで、
ーー可を見て進み、難を知りて退くは、軍の善政なり。
と、いった。『春秋左氏伝』にあり『史記』にはないことばである。勝つことができるのであれば進めばよいし、勝つことが困難であれば退けばよい、ということである。(p.73)

☆猪突になりがちなので見習うべき。

●昵近しづらい漢文に親近感をいだかせてくれた書物のひとつに、吉川幸二郎氏の『漢文の話』(筑摩書房)があった。とくに感心させられたのはそのなかの「歴史書の文章」の章にある『史記』の文章の読み方についてのところである。(p.250)

☆たぶん絶版だろうが、機会があれば探す。

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『「砂糖」をやめれば10歳若返る! 』

『「砂糖」をやめれば10歳若返る! 』
白澤卓二
ベスト新書、2012/5/22、¥720(有隣堂亀戸)

食べ物は基本的にあまり精製されていないものがよいが、現代の食生活では中毒になるほど砂糖を摂取している。人間がエネルギーを作る回路は、1) 糖質→グリコーゲン→ブドウ糖、2) たんぱく質→アミノ酸→ブドウ糖、3) 脂質→脂肪酸→ケトン体 の三つあるが、ブドウ糖を使うエネルギーは体に色々な負荷を与えるので、ケトン体回路が良い。で、その回路はブドウ糖がなくなってから働くので、なるべく炭水化物や糖質をとらない生活をしましょう、という内容。

てんかんなどの病気で、昔から絶食すると症状が改善することがわかっていたが、糖質による脳の過剰活動が悪影響を与えていることがわかってきて、ケトン体型のエネルギー産出回路にするのがよい。あるいは、砂糖や油、塩を限りなく動物に与えると麻薬中毒と同じ症状が現れる、といった面白い話や、タバコ会社の戦略で若者の喫煙がマジョリティーとなり、民主主義的に喫煙中毒を発生させていた、など、ディベートの証拠に使えそうな話など、それなりに面白いが、狩猟時代は穀物なんか食べていなかったのだから、食生活から炭水化物と砂糖を完全排除して、タンパク質や野菜などのケトン体型にしろ、というのは今ひとつ説得力に欠ける。

とりあえず、白砂糖やスナック菓子の取りすぎは体に悪いのはわかった。

●私がおすすめするのは、発酵食品です。私は、精製されていない食べ物のなかでもっともバランスがいいものは発酵食品だと思っているからです。
 例えば、塩の代わりに塩麹、砂糖の代わりに麹、ジャムの代わりに麹ジャム。麹は甘いことをご存知でしょうか? 麹を使った甘味料は精製されておらず、天然の菌がつくっているので、アミノ酸のバランスやブドウ糖のバランスが非常にいいのです。(p.179)

☆いずれ試す。

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『国家と神とマルクス―「自由主義的保守主義者」かく語りき』

『国家と神とマルクス―「自由主義的保守主義者」かく語りき』
佐藤優
太陽企画出版、2007/04/18、¥1,680(L)

某2ちゃんねるで良書と書かれていたので。

まだ鈴木宗男事件に関連した裁判の最中まとめられた本。それまでに雑誌等に掲載された文章をまとめたもので、右翼思想史『月刊日本』左翼思想史『情況』など左右両極端なものが一冊に同居していながら違和感を感じさせない不思議な本。
「絶対的なものはある、ただし、それは複数ある」という信念を持つ著者が、それぞれ絶対と信じる国家・神・マルクスについて語っている。

相変わらず重厚な読書量に裏打ちされた筆致で、圧倒されながら読んだ。この頃の佐藤は、柄谷行人、廣松渉、宇野弘蔵を多く根拠にしているように見える。

●[佐藤] それはマスコミ論の本質に関わることだと思うんです。マスコミは媒体なんですよ。読者に関心のあるものなら載せる。もとの話をちょっと拡大しちゃうことはあるが、意図的に誤報や虚報を載せる体質は日本のマスコミにはないと思います。[略] マスコミにそういう[僕や鈴木さんのバッシング]情報を流した人がいて、しかも役所が流している。[略] ここに深刻な問題がある。(p.31)

☆最近の大新聞の虚報・誤報連発を見ると、佐藤のマスコミ観については同意しづらい。

●マルクス主義哲学者の廣松渉さんが「本は読まれなければインクのシミに過ぎない」とすごくシビアなことを言っていました。だから、読まれるような本を作らなくてはいけない。(p.42)

☆そうあってほしい。

●堀江[貴文] 氏の [天皇制を廃止し、大統領制にするという] 国体変更に関する言説を容認する雰囲気が現 [小泉] 政権にある。小泉自民党圧勝の陰で『共和制への誘惑』という種がまかれている(「神皇正統記から現代を読む」(中)堀江貴文の世界観と国体崩壊の危機・『正論』2005年12月号)と警鐘を鳴らした。
 大統領型共和制とはポピュリズムの極致で、権力と権威が一体化することだ。その場合、共和国となった日本は、これまで存在した日本とは国体(国柄)を根本的に異にする国になる。堀江氏は無自覚的に国体変更を伴う革命を提唱し、それに日本国家の生存本能が否を唱えたというのが今回の[堀江に対する] 国策捜査の深淵だと筆者は考える。
 しかし、この国策捜査は同時に日本の危機的状況を反映している。なぜなら国体護持は、司法官僚を含む官僚に委ねるべき性格の問題ではなく、国民の選挙によって選ばれた国権の最高機関の構成員である国会議員が第一義的に担うべき問題だからだ。(pp.60-61)

☆権力と権威が一致しないのが日本の特徴という佐藤の指摘は説得力がある。

●そこで私はこの本に解説をつけ、『日米開戦の真実ー大川周明著「米英東亜侵略史」を読み解く』(小学館、2006年)を上梓しました。幸い半年で四刷、発行部数も45000部で、このカテゴリーの本ではベストセラーといってもよいと思います。

☆ぜひ読みたい本。

●日本はこの風船爆弾を9300発ぐらい送りました。しかし、GHQの太平洋戦争史によるとアメリカに到着したのは二つしかないということになっているのです。これは大嘘で、実際は1000個近くが着いているわけです。しかもアメリカはこの風船爆弾に対して大変なおそれをなしていたわけなのです。どうしてかというと、この風船爆弾に生物・化学兵器がつけられたならば、大変な危害がアメリカに及ぶと懸念したからです。(p.130)

☆歴史は勝者の歴史であることの例証。この指摘を見るまで、自分も風船爆弾は意味がなかったと思っていた。

●戦争に負けたあの状況の中で、誰もがこの敗戦という現実を直視したくない。そのときに、自分の責任ではなく誰かに騙されていたのだということは、とても受け入れやすい言説だと思うのです。そこのところをアメリカは上手く使いました。同時にアメリカがこのような言説を作る過程で、それに協力した日本の情報のプロたちがいたと私はにらんでいます。これはとても残念なことです。(p.131)

☆「原発の事故を直視したくない、だから自分の責任ではなく東電の責任にしてしまえ」という形で繰り返されている。

●[北畠親房の『神皇正統記』における] 「大日本者神國也」というテーゼで表される我々の国・日本では、権力と権威が一緒にならないという国体が保全されてきたし、いまも保全されているし、未来においても保全されていくのです。(p.145)

☆女性天皇論が共和制に結びつく可能性。

●ドイツでは総合大学には神学部がないといけないんです。神学部がないと単科大学になるんです。あると総合大学なんです。法学や経済学はもとより哲学も、我々神学徒から見れば「実学」なんです。これに対して神学は「虚学」なんですよ。虚学と実学があってはじめて総合的な学問になるというのが西欧(カトリック・プロテスタント文化圏)の伝統的発想なんですよ。(p.156)

☆では、福沢先生の言う「虚学」「実学」の区分けはどこにあるのか?

●私や鈴木宗男さんがやられた北方領土問題についても、客観的に歴史データを追跡していただければ明白なんだけど、1945年当時、日本政府は歯舞群島と色丹島の二島返還に限りなく近い立場を取っていました。原喜美恵さんが、1994年にオーストラリア・キャンベラの国立文書館で、1946年に日本政府がGHQを通じてアメリカ政府に対して提出した国後島と択捉島はクリル諸島(千島列島)の一部であるという英文報告書の写しを入手しました(詳しくは和田春樹『北方領土問題ー歴史と未来』朝日新聞社、1999年、pp.192-194を参照願います)。1951年のサンフランシスコ平和条約二条c項で日本政府はクリル諸島(千島列島)を放棄しているのですから、これでは、国後、択捉に対する領土要求ができなくなります。(pp.181-182)

☆1956年日ソ国交回復前には二島返還で手を打つ可能性もあると河野一郎農相が了承を得ていたが、冷戦下のアメリカの恫喝で四島返還に転換し、ナショナリズムを煽って統制が効かなくなったのが現状だ、との説明が続く。非常に説得力があり、なぜ二島返還論が突然出てきたように見えたのかの理由がわかった。他にもナショナリズムが操作不可能になる例をいくつかあげ、アンダーソン「想像の共同体」について疑問を呈している。

●佐藤 私は、日の丸、君が代は日本国家のシンボルとして大いに結婚と考えます。故に法制化には絶対反対です。なぜなら、法律で決めるものは法律で変えられるからです。日の丸や君が代を法制化するという発想自体が誤っていると考えます。国旗、国家というのは日本の伝統に属するもので、文化なのですから、それを法制化すること自体がカテゴリー違いなのです。こういう議論が国旗、国家法制化に対する一番有効な反対論になると思います。(pp.187-188)

☆面白い反対論。

▲潮匡人が憲法を改正せず、しかも一円の予算支出もせずに日本の防衛力増強のための三点セットを提示している。1) 集団的自衛権に関する内閣法制局の解釈を変更し、集団的自衛権を持っているし行使できるとする、2) 周辺事態法に言う、周辺地域に台湾海峡が含まれると明言する、3) 非核三原則の「持ち込ませない」という縛りについて、朝鮮半島有事の際には「持ち込み可」とする。(pp.194-195)

☆憲法改正せずにできること。

●靖国神社に付属する「遊就館」を韓国人や中国人がけしからんと非難するのは、彼らの現在持っている物語からすれば、当然、そうなるのでしょう。しかし、我々がその物語に付き合う必要はない。[略] ロシア人やイスラエル人は、各国家や各民族は固有の歴史や物語を持つ権利があり、それを巡る論争は不毛であると突き放した見方をしています。(p.211)

☆普通に同意できる。

●アメリカとヨーロッパの軋轢については、トム・リードの『ヨーロッパの正体』(新潮社)がよく描いています。(p.219)

☆「ヨーロッパ合衆国」が暗黙の内に温存した人種理論が近いうちに火を噴く、という佐藤の予言は、ユーロ危機として現実となりつつある。


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『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』

『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』
遠藤誉
朝日新聞出版、2012/3/16、¥1,785(丸善日本橋)

2012年10年、中国の胡錦涛体制は10年の任期を終え、習近平体制に移行する。本書は全国13億人を動かす中国共産党政治局常務委員の9人に焦点を当て、次期常務委員の選出の裏側にある熾烈な政治闘争について非常に詳細に述べる。中国の政治闘争は単に次期2012年の常務委員を巡るものだけではなく、次々期2022年の国家主席を巡ってもすでに始まっている、という説明は、中国がいかに長期戦略を重視するかという例で、日本にはなかなか真似できない。

著者は旧満州の長春市で生まれ、八路軍の長期包囲による飢餓から生還し、現在でも中国高官とつながりのある人物。それだけにその分析は的確で説得力がある。朝日から出版されているだけあって、微妙に中国に甘い部分が見られるが、それを理解した上で、時節柄大変興味深く読んだ。

●勝てないときには妥協する以外にない。中国には
「达不到最善,就求次善,不可能僵持,也不可能摊牌」
という処世術がある。つまり、
「最善に達することができなかった場合は次善の策を選ぶ。相対峙して譲らなかったり、手の内を明らかにしたりはしない」
という意味だ。「摊牌」は「手の内を見せる」という意味と共に、トランプなどのお持ち札を並べて「一か八かの勝負をする」という意味もある。それはしないのが中国政治の常套手段だ。
 だからみんな能面か蝋人形のような「不動」の表情を保っている。感情を表に出した者が負けとなる。(pp.76-77)

☆政治闘争だけでなく、普段の態度としても参考になる。つい内心が表に出てしまうから。

▲中国は特に1989年天安門事件以降、「党や国家を批判すること以外なら、何をしても自由」と人民に自由を与えたため、「二奶」[お二号さん] や麻薬常習者の増加を招いた。(p.163あたり)

☆強さの裏には弱さがある。

●概数として全中国2000万の売春婦の総収入は年平均5000億人民元であるという。中国の国内総生産の6%に達するというから、すさまじいビジネス界と言える。しかも、その周辺産業をも含めると総額1兆元(約13兆円)になるとのこと。おそらく世界一の「春院」ではないかと、ネットにはある。(p.173)

☆日本の風俗産業市場規模は2011年で約5兆6千億円。GDPは概ね同じと考えれば、いかに中国の市場規模が大きいかわかる。

●第二の天安門事件を惹起すれば、その時点で社会主義国家・中国は崩壊することを、中国の誰もが知っている。(p222)

☆意外な指摘。

●江沢民の後ろ盾である薄一波は、江沢民に北京閥を落とす策略を教え込んだと聞く。その策略とは
「周りを包囲して攻め落とせ」ということである。
 これは、国共内戦時における毛沢東の戦略に基づいている。武器を持たない毛沢東軍率いる中国共産党軍(当時の俗称、八路軍)は、国民党が占拠する長春を包囲して何十万もの一般庶民を飢餓に追い込む形で、最終標的とする国民党軍を落とした。筆者はそのとき長春で食糧封鎖を受けた側なので、中国共産党指導層のこの手の打ちようが、手に取るように見えてくる。(pp.282-283)

●社会主義思想による引き締めの目的の一つは、「団派の強化」にあるのではないかということである。(p.285)

☆共産党青年団という共通の思想を持つ派閥の強化を目的とし、太子党に対し優位に立つという長期戦略。日本の政治闘争など子どもの遊びに等しい。

●そもそも日本と仲良くした中国の国家指導層はみな、非常に哀れな最期を迎えている。
 天安門事件で失脚した趙紫陽(元国務院総理、中共中央総書記)もその前に降ろされた胡耀邦(元中共中央総書記)も同じだ。二人とも非常に親日的な指導者だった。胡錦涛も前述のように、親日を掲げようとしたが「売国奴」とまで罵られ、非常に慎重になっていったくらい。
 層でなくても日本との間にはさまざまな軋轢がある。領土問題、教科書問題、靖国神社参拝問題等、枚挙にいとまがない。
 親日は中国では「鬼門」なのである。天皇に会えたことが[次期総書記選びに] 有利になる要素はない。(pp.323-324)

☆2009年の習近平常務委員の天皇訪問についての説明。中国の指導者は非常に難しい舵取りを迫られており、表面だけで判断はできないということ。

●アメリカは、中国と電撃友好握手を交わしたように、今度は北朝鮮と電撃的な握手を交わす可能性がなくはないのである。この場合、核交渉は棚上げとなり、6か国協議で主導権を握っていた中国は、梯子をいきなり外される。
 その「懐柔」を、中国は最も恐れている。そうなってしまったら、中国は北朝鮮、韓国、日本と、親米諸国に囲まれることになるからだ。(p.332)

☆自分では気づかなかった、しかし大変鋭い指摘。

●チャイナ・ナインの中にどんなに激しい党内派閥があったとしても、全員が100%一致していることが一つだけある。それは絶対に社会主義国家としての中国を崩壊させてはならないという鉄の理念である。戦争などを仕掛けて、中国の誰が得をするのか。
 日本に「爆買い」に来る中国の富裕層の顔を見るといい。金持ちであることに酔いしれ、自信に満ち満ち、自分の幸せしか考えていない。何億といる若者もみな、マイホームを持ち、マイカーを持ち、幸せな家庭を築いて平和な日々を満喫したいと「突進」している。これが中国の「力」なのだ。(pp.334-335)

☆理屈は通っているが、少し楽観的に過ぎる考えではないか。


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『中国の歴史第11巻 巨龍の胎動(毛沢東VS鄧小平)』

『中国の歴史第11巻 巨龍の胎動(毛沢東VS鄧小平』
天児慧
講談社、2004/11/10、¥2,730(丸善日本橋)

成毛眞が中国近代史を薦めていたので、とりあえず購入。

辛亥革命から鄧小平の改革開放まで。毛沢東と鄧小平の対比に主な視点をおいた本。
近代の中国は人物の毀誉褒貶がはげしく、とりあえず政治闘争をやらせたら日本人は中華民族には勝てないのはわかった。

●現在進行している重大事象の裏側を見ることは難しい。しかし、次の重大局面を創っていくような事態が、実は見えない水面下で既に始まっているという見方は正しい。(p.213)

☆物事の変化を見る時の注意点。

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『ぼくらの祖国』

『ぼくらの祖国』
青山繁晴
扶桑社、2011/12/28、¥1,680(L)

どこかで推薦されていたのを見て読んだ。

タイトル通り、「祖国」とは何か、日本人があえて忘れてきた祖国について、北朝鮮拉致問題、南三陸町で最後まで避難放送を続けた市役所職員、福島第一原発で復旧にあたる職員、硫黄島で今も眠る日本兵の遺骨、調査さえされない日本海側のメタンハイドレートなど著者が取材したトピックを通じて考える本。

「祖国」について子どもに教えるために書いた本、ということで紙面に余裕をもたせ、多くの漢字にルビを振ってある。最初のうち、ちょっと右寄り過ぎか、と思ったが、読むうちに著者の熱意に当てられて最後まで読んだ。著者の青山には両極端の評価があるらしいが、少なくとも現地調査を実施した上で書いているので、その点は評価すべきだろう。

特に硫黄島やメタンハイドレートなど、知らなかったことも多く、「栗林中将の像が写真に写った」といったあたりを冷静に読めば、よい本。硫黄島に行くと帝国軍人がいらっしゃる、というのは他でもよく聞く話だから、全く嘘だ、ともいえないとは思うけれど。

時節柄、隣国との領土問題も緊張の度合いを増し、「祖国」と言うだけで「右翼」とレッテルを貼られてきた時代はそろそろ終わりにすべき時が来ているのではないかとは感じる。

●日本新聞協会に加盟している新聞社•通信社、あるいは民間放送連盟に加盟している放送局に属する記者かNHKの記者であれば、そこまでは誰でもできる。逆に言えば、ふつうに記者クラブに朝、顔を出し、ふつうに昼も夜も過ごしているのであれば、それ以上のことは何もできない。
 新聞•通信の記者であれば、官と民から提供される横書きの発表資料を、縦書きの記事に変えるだけである。テレビ•ラジオの記者であれば、アナウンサーの話し言葉に変えるだけだ。(p.69)

☆ネット上では常々言われていることだが、紙媒体でソースが付くのは重要なこと。

●ひとがひとを誤解してみるとき、それは、その誤解するひとの本性、欲望が露見している。(p.71)

☆「あいつは野心家だ」というなら、自分が野心家だということ。

●国民を護る仕事、分野はセイフティ(安全)とセキュリティ(防護)に分かれる。(p.81)

☆前者は自然災害等、後者はテロ等。

●学徒看護隊は、ひめゆり部隊の名でよく知られている。覚えられている。しかしほんとうは、ひめゆり部隊のほかに学徒看護隊は八つあった。ひめゆり部隊は、沖縄の第一高等女学校と師範学校女子部の生徒達でつくり、たとえば第二高等女学校の生徒は白梅学徒看護隊をつくった。
 正確に言えば、そうした名は戦後にわかりやすく与えられたものだ。それでも九つの看護隊があったことは間違いない。

●東京との硫黄島は「いおうとう」である。[略] しかしアメリカ軍に占領されたという理由だけで、私たちはアメリカ軍が間違って読んだ名前[いおうじま]をそのまま受け容れ、迷うことなく島の名を変えていたのだ。(p.174)

☆最近(2007年)「いおうとう」に名前が戻ったのは知っていたが、これが原因だとは知らなかった。

▲硫黄島戦死将兵21000人のうち、まだ13000人ほどの遺骨が帰国していない。滑走路の下に埋まったままになっている。(p.220あたり)

☆国のために戦った人を敬わないのはどこか間違っていると言わざるを得ない。

●ところが、その[アメリカと戦えば負けると知っていた] 山本[五十六]長官がみずから真っ先がけて、アメリカ•ハワイ州の真珠湾を攻撃して、アメリカと戦争を始めた。なぜか。山本長官が自分を見失ったのではない。もう一度、確認しよう。それは自前の資源がなかったからである。
 輸入に頼らねばならないのに、アメリカをはじめとする連合軍に輸入路を封鎖され、突破口を切り開くしかなかった。
 山本長官は、そのあとに早期の講和にこぎ着けることを祈り、願っていたが、これは山本長官の責任にも帰する読み違いであった。
 アメリカは、頭をたたかれれば、相手を殺害するまで戦う。褒めているのではない。カウボーイはそうしないと生きていけないからでらう。荒野に切り開いた牧場を少しでも襲う気配があれば、撃ち殺しておかねば、牧場は護れない。(p.242)

☆今も昔も資源が日本のネックであることに変わりはない。少なくとも現状は危険をコントロールした上で原発は必要。山本五十六の真珠湾攻撃について押井は「自分がやりたくてやった」ということを書いていたが根拠がなく、この点については青山の方が説得力がある。

●日本が原子力発電に自民党政権も民主党政権も、力点を置いてきたのは、これ[石油メジャー支配]にいくらかは抵抗しようという意味があった。
 原発も、燃やすウランを海外から買わねばならない。だが、ウランは世界中から採れる。石油や天然ガスと比べるとはるかに、アメリカの支配を受けにくい。原子力を準国産エネルギーと呼ぶこともある。そのことは、福島原子力災害があってなお、正答に評価せねばならない。(p.243)

☆エネルギー安全保障。

●実は日本は1968年の当時から、国連に「資源の豊かな国」と名指しされていた。沖縄県石垣市の尖閣諸島の海底に、イラクと同じくらいの原油があると報告されているのだから。(p.259)

☆歴代日本政府は何をしていたのか。

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