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『蒼林堂古書店へようこそ』

『蒼林堂古書店へようこそ』
乾くるみ
徳間文庫、2010/5/15、¥660(TSUTAYA)

林雅賀(まさよし)39歳の経営する蒼林堂古書店には毎週日曜になると、高校の同窓生大村龍夫、高校一年生の柴田五葉、24歳の小学校教員茅原しのぶがやってくる。100円以上の売買をした客にはコーヒー一杯のサービスがあるので、奥のカウンターでおしゃべりをして時間をつぶす。

14章それぞれに小さな謎解きがあり、そして全章を通読することで一つの大きな謎が明かされる。謎解き自体はそれほど複雑怪奇ではなく、ミステリーというほどでもないが、各章で紹介されるミステリー小説が少々マニアックで、ミステリーオタクなら響くところがあるのだろう。

最終章の書名で恋文にするというアイデアは非常にロマンチックだが、今時そこまでわかるような教養のある若い女性なんているんでしょうか、と思った。まぁ、まったりロマンチックが本書の魅力だから、そこをつっこむのは野暮になるのだろうけれど。

●「柴田くんの言うこと、わかりますよ」とマスターが割り込んできた。「人生って、たいてい同じことの繰り返しで、行動がパターン化してきますよね。そこに適度な変化が加わるにしても、それもまたメタレベルの日常に組み込まれてしまう。そういう無間地獄的なところがあって、たとえばサラリーマンや学生の通勤通学には、土日の休みが変化をつけてくれるけど、でもその休みも含んだ《一週間》
というパッケージが、また繰り返されている。その一週間のパターンに今度は夏休みとか正月休みとかが変化をつけてくれるんだけど、その全体が今度は《一年間》というパッケージで、また毎年繰り返されることになる。日曜日にしても夏休みにしても、単にそれぞれの周期が違うだけで、結局はメタレベルのパターンに最初から組み込まれてるんだよね。そのパターンの外側にある、受験だとか転勤だとか、あるいは脱サラとか、そういった生活環境の大きな変化にしても、また新たな繰り返しの、だから新たな日常の入口になっているだけで、非日常へと繋がっているわけではない。そういうことにふと気づいてしまう瞬間って、あるよね」(p.82-83)

☆終わりなき日常を生きろ。

●「ミステリに限らず、小説ってーーいや、小説以外でもそうか、映画とかマンガとかも含めて、だから物語って、そういう人生の単調さをカバーする意味合いがあるんだよね。実人生に不足しがちな、冒険だとかスリルだとか、そういう成分を、想像力で補う、そのための装置っていうか。リフレッシュのための装置。ミステリはその中でも特に、スリルやサスペンスの成分が多かったり、謎解きの知的興奮が味わえたりするし、あとミステリの場合、単に読み捨てるだけじゃなくて、作品同士がネットワークを形成してるんだよね。だから単なる時間つぶしじゃなくて、読んだ作品が自分の中でコレクションされていく。そういう蓄積性があるんだよね。だから僕もミステリを好んで読むようになったんだと、そんなふうに自己分析してるんだけど」
「ただその《蓄積》の部分が、初心者からすると、何か敷居が高いように見えちゃったりするところがあって」と大村が指摘すると、
「そうなんだよね」とマスターは渋い顔をしてみせる。(p.84)

☆事実は小説より奇なり、ではないけれど、以前はミステリもよく読んだが、最近はノンフィクションの方が面白いと感じるようになった。トシか。

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