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『読書の技法 誰でも本物の知識が身につく熟読術・速読術「超」入門』

『読書の技法 誰でも本物の知識が身につく熟読術・速読術「超」入門』
佐藤優
東洋経済新報社、2012/8/9、¥1,575(丸善日本橋)

書店平積みで目立っていたので購入。

佐藤の読書法は『獄中記』で触れられている通り3回読みが基本。本書はそれをより詳しく説明して月500冊の読書法を公開し、併せて、仕事に生かすための一般教養として高校の教科書・参考書をどのように読むか、ケーススタディとして紹介している。

読書を熟読・速読・超速読にわけ、超速読によって選書している。読書法の本を見るときに、一番興味があるのは選書の方法で、佐藤は一応中まで目を通す(途中でやめることもある)派と言える。

読書が職業の一部である佐藤の手法はすべてを参考にすることはできないが、消しても良いように鉛筆で線引きやコメント記入をするというのは齋藤孝の三色ボールペンとは違っていて、一つの参考になる。ただ、自分は本を汚して読むというのは、色々な著者が推薦しているとはいえ、頭で分かっても体が拒絶することが多い。

あと、佐藤は小説や漫画についても、単なる娯楽としてではなく、社会を映す鏡として読もうとしているが、これは少し堅苦しすぎるのではないかと思った。

いずれにせよ、本書の読書法を本当にトレースできたら、あっという間に教養人になれるだろう。自分にはできそうもないけれど。

●「受験勉強が現実の社会生活の役に立たない」という認識は間違っている。社会人が大学受験のレベルで必要とされる知識を消化できていないため、記憶に定着していないことが問題なのであって、受験勉強の内容は、いずれも社会人になってからも役に立つものだ。(p.8)

☆自分の知る限り、高校レベルの教科書・参考書の重要性を説いたのは佐藤が初めて。言われてみればその通りとしか言いようがない。

●正しい方法論を確立するために重要になるのは、時間という制約要因について、恒に頭に入れておくことだ。たとえば、[略] 複数の外国語を習得した経験がない人がゼロからロシア語に取り組んだ場合、新聞を読む語学力をつけるのに700〜1000時間かかる。数学や外国語の学習は、身体で覚えなくてはならない部分があるので、毎日10時間、集中的に学習するというような手法で集中的に学習するというような手法での学力向上には限界がある。毎日2時間の学習を1年から1年半続けるのは社会人にとって相当のコストだ。その時間、他の勉強や仕事に取り組むことによって期待される成果との機会費用について考える必要がある。 [略] 正しい方法論には捨てる技法も含まれる。(pp.9-10)

☆「読まない」「やらない」ことを決めることの重要性。これがなかなかできない。

●速読術とは、熟読術の裏返しの概念にすぎない。熟読術を身につけないで速読術を体得することは不可能である。(p.49)

☆言われてみればその通り。が、3回読みは自分でもほとんどしたことがないので、佐藤の水準で理解しているわけではない。

●読者が知りたいと思う分野の基本書は、3冊もしくは5冊購入するべきである。
 1冊の基本書だけに頼ると、学説が偏っていた場合、後でそれに気づいて知識を矯正するのには時間と手間がかかる。ちょうど我流で、最初に間違った平泳ぎの仕方を覚えると、後でそれを直すのが大変なのと同じである。(p.54)

☆有益な忠告。ディベートしていた時は無意識に実践していた。言語化はしていなかったので社会人になってから明示的には実践できなかった。

●基礎知識をつける場合、あまり上級の応用知識をつけようと欲張らないことだ。[略]
 それから、最新学説を追う必要もない。最新学説が学会で市民権を得るのに10年くらいかかり、それが入門書に反映されるのにさらに10年くらいかかる。したがって、入門書で得られる知識は20年くらい前のものであるが、それはそれでいいと腹を括ることだ。(pp.56-57)

☆どこで切るか、時間の重要性について考えさせられる。

●重要なことは、知識の断片ではなく、自分の中にある知識を用いて、現実の出来事を説明できるようになることだ。そうでなくては、本物の知識が身についたとは言えない。(p.58)

☆知識のための知識ではだめということ。知識と教養の差。

● 最初に、これら3冊の基本書のどれから読み始めるかをきめなくてはならない。それにはまず、それぞれの本の真ん中くらいのページを開いて読んでみる。[略] 真ん中くらいというのは、実はその本のいちばん弱い部分なのである。あえて、この一番弱い部分をつまみ食いすることで、その本の水準を知るのである。(p.60)

☆初めて聞く考え方。一理ある。

●熟読法の要諦は、同じ本を3回読むことである。
 基本書は、最低3回読む。第1回目は線を引きながらの通読、第2回目はノートに重要箇所の抜き書き、そして最後に再度通読する。
 第1回目の通読を漫然と行ってはならない。実はいい加減な仮読みの手法で、一度本を読んでしまうと、その後、重要事項がきちんと頭に入らなくなってしまう。(p.63)

☆熟読の重要性。結構いい加減によんでわかったつもりになっているので、もう少し丁寧に読みたい。

●出世する上で重要なのは、自分の生活習慣から他人に嫌われるような要因を少しでも除去することである。そのためには自分がやられて嫌なことを他者に対してしないということが基本だ。(p.64)

☆処世訓。

●確かに政治エリートが自己の権力基盤を強化するためにナショナリズムを利用することがある。しかし、逆に外交に効果を出すために、いったん高揚したナショナリズムを沈静化させることはほぼ不可能だ。この点について、『民族とナショナリズム』を読むとその連関がわかる。(p.73)

☆現在の日韓関係における李昭博大統領がまさにこのケースに相当するのではないか。今後両国関係を沈静化させられるかどうか疑問。(現時点で李大統領が天皇謝罪を要求し、野田首相が不快感を示したところ)

●筆者自身、ノートは1冊に集約し、読んだ本の抜き書きやコメントに加えて、語学の練習問題の解答から仕事のスケジュール、簡単な日記(何を食べたか、誰と会ったか)まで、すべて時系列で記すようにしている。後で読み返せるようにできるだけ厚いノート1冊に、「記録」「学習」「仕事」のすべてを集約するのが、筆者にはいちばん効率的である。(p.102)

☆一冊主義者。自分はあまりうまくいかなかった。

●しかし、アフガニスタンのカルザイ政権は、アフガニスタンの有力部族を抑えることができない。アフガニスタンでは、ケシ(アヘンの原料)の栽培が横行している。そして、ターリバーン勢力が再び力をつけている。国内復興は進んでいない。オバマ政権がアフガニスタンに本格的な介入を行っても、事態が急速に好転するとは思えない。(p.130)

☆19世紀の中国におけるアヘン戦争、20世紀の満州におけるアヘン戦争(日中戦争)、に続きアフガニスタンが21世紀のアヘン戦争の現場になるだろうか。

●国際政治について語る際に絶対に記憶しておかなくてはならない基礎知識が、近代国際政治の枠組みを創った1648年のウェストファリア条約だ。(p.132)

☆佐藤の著書には必ずと言っていいほど言及される条約。

●そこで、自分が専門とする分野の本、あるいはインテリジェンスの観点から役に立つ本について、A4判1枚程度(文字数で400字×3〜4枚)のレジュメを作ってくる。慣れると30分でレジュメを1枚作る
ことができる。[専門知識を持つ人々が集まって行う書評会合の] 1回の会合で、一人で最低2冊の本についてレジュメを作るようにする。(p.264)

☆読書会・書評会の開催の参考になる。組織維持に力を使わないため、20〜30冊終わったら一度解散すべし、という忠告も面白い。

●筆者の印象に残っている一例を挙げれば、デヴィッド・W・モラー『詐欺師入門 騙しの天才たち その華麗なる手口』(光文社)についてあるキャリア職員が書評をした。
 一休の詐欺師は、騙した相手に「だまされた」という認識を持たせず、かえって感謝されるという。この技法が情報収集やロビー活動に使えるのではないかというのだ。実際この本に書かれている内容を少し変形して、情報収集活動に使ってみたら、確かに効果があった。(p.264)

☆そのうち読みたい。

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