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『野蛮人の図書室』

『野蛮人の図書室』
佐藤優
講談社、2011/11/29、¥1,365(丸善日本橋)

佐藤の視点による読書案内。『週刊プレイボーイ』の連載を再構成したもの。

●手塚の場合、マンガは文学であるというプライドを持っていた。したがって、マンガを用いて特定の政治的主張を展開したり、社会的弱者を蔑視するような言説を展開することはなかった。しかし、マンガ家にもいさまざまな人がいる。評論やノンフィクション作品で展開すればボロがすぐに出てくるような内容でも、マンガが感情移入しやすい媒体であることを最大限に活用すれば、乱暴な言説で人々を煽ることも可能だ。現にそれを商売にしている政治マンガ家もいる。(p.87)

●大多数の人々は1984年に生きているのだが、ごく一部の人たちが1Q84年に生きている。そして1Q84年に生きている人たちには夜空に月が2ふ見えるのだ。
 人生において、やり直しがきかない瞬間がある。親と大喧嘩をして家を飛び出してしまう。恋人がいるのに別の彼女とセックスしてしまう。ペットの犬を飼いきれなくなったので保健所に預けて処分してもらう。飲みに行ったカネを架空伝票で会社につけ回す。普通と異なることをすると、その瞬間から世界が別に見えるようになる。
 『1Q84』によってさまざまな人生を代理経験することができる。この小説を読むと人生が確実に豊かになる。(P.91)

●『ポトスライムの舟』津村記久子
 ナガセの身辺の小さな物語がいくつも重なり、人生はそれほどよくもなければ悪くもないという雰囲気が伝わってくる。(P.94)

●『坂の上の雲』司馬遼太郎
 学問は本来、真理を追究するためのものだ。それがここでは就職の手段となっている。そして、よい成績をとってよい就職をすれば、経済的に苦労しないという俗物根性がここで褒め称えられている。こういう史跡でいくら勉強をしても、受験に合格する力はついても、物事を判断するために役立つ教養は身につかない。(P.105)

●『統帥綱領』大橋武夫
 戦前の日本陸軍に『統帥綱領』という軍事機密文書があった。一般の兵士や下士官はもとより、大多数の将校もこの文書について知らされることはなかった。陸軍大学校を卒業し、高級指揮官になる者だけが読むことを許可された文書である。[略]
 戦前の日本陸軍というと、非合理的な精神主義の権化だったという印象があるがそれは間違いだ。『統帥綱領』や『統帥参考』には、21世紀のリーダーシップ論としても十分通用する内容が含まれている。(PP.144-147)

●『日本の戦争』田原総一朗、『日本のいちばん長い日』半藤一利
 あの戦争で日本国家と日本人を守るために多くの人々が命を捧げた。この人たちの犠牲の上に立って今日の日本の繁栄があることを忘れてはならない。評者は終戦記念日の前後に靖国神社を必ず参拝し、英霊に対して「どうもありがとうございます」と手を合わせている。[略]
 いずれにせよ、負け戦は絶対にしてはいけないというのがあの戦争の教訓だ。(PP.168-171)

●『竹島問題を理解するための10のポイント』外務省
 領土は国家の礎である。自国の領土を実効支配することができない国家は一人前とはいえない。日本の場合、竹島が韓国によって、北方領土(歯舞諸島、色丹島、国後島、択捉島)がロシアによって不法占拠されている。この状況を解決しない限り、日本は一人前の国家とならない。(P.172)

●『ウェルカムトゥパールハーバー』西木正明
[佐藤] 特にすばらしいのは、あらゆる偏見を除去するために膨大な文献資料を使っていることでしょう。「米英は一体だった」「日独伊は一体だった」という現代の常識は大間違いで、当時は各国が虚々実々の駆け引きをし、その結果として日本は開戦に引きずり込まれていった。(P.284)
[西木] 関に日本に"一発撃たせる"必要があった。これ自体は前々から言われていたことですがね。まず仕掛けたのは1940年11月11日にサンフランシスコから日本に向かったカソリックの神父、ジェームズ・ドラウト。この神父の訪日が謀略の始まりであったことを明確に示した本は初めてじゃないかと、かすかな自負はあります。(PP.285-286)
[西木] 今も昔も、日本は「力関係による変節」というものに非常に鈍感なんです。変わりゆく国際関係の中でずっと同じ事をやるっていう間違いをどれだけ繰り返してきたかわからない。条約だって、必要以上に必死になって守ろうとするでしょ。(P.288)
[佐藤] 当時、松岡はデタラメな奴というイメージがあったのは、むしろ彼がやろうとした国際的スタンダードの外交交渉に日本人がついていけなかったんですよ。(P.289)

●本書を読んでいただければ、取り上げたテーマに関する基礎知識が身につく。本書に取り上げたテーマ以外で知りたい問題がでてきたら、大型書店に行くことを勧める。そこで書店員に入門書、概説書としてどの本を読んだらよいか紹介してもらう。そして本の内容についての書評(ブックリビュー)を書いてみる。こういう作業を積み重ねれば、読者の知識は一年間で飛躍的に向上し、野蛮人から脱出することができる。(P.297)

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