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映画『クローズド・ノート』

映画『クローズド・ノート』
iTunes レンタル
監督:行定勲
出演:沢尻エリカ、伊勢谷友介、竹内結子
   板谷由夏、田中哲司、サエコ
   黄川田将也、永作博美

iTunesのレンタルを初利用。

原作では説得力のあった設定や展開が、監督の趣味なのか必要以上にレトロでファンタジーな感じで、ちょっと説得力に欠ける内容になっていた。

原作ではマンドリンはまあ上手く弾けるはずの香恵が、映画では下手で、これでは隆の個展に呼んでもらうという展開に説得力がない。
万年筆を買うのに試筆しないで決めるのはちょっと変。
全体的にオレンジっぽい映像で、ドルチェビータを意識したのかもしれないが、もっと普通に撮ればいいのに、と思った。
伊吹先生が終業式の日に、ノートの最後のページに隆宛の手紙を書いて破り、紙飛行機にして飛ばしていた。その後先生は家に帰ってないのだから、いったい誰がノートをアパートのクローゼットにしまったのか。その説明がない以上論理的に破綻している。
原作では香恵が伊吹先生の教え子たちに最後まで「後輩」として話を聞いていたのに対し、映画では「本当は伊吹先生には会ったことがない」と暴露し、しかし子どもたちは不審がらずに話をしてくれる。また、原作では小学校の敷地には入っていなかったはずだが、映画では堂々と校庭に入っている。今の時代、そんなことをしたら不審者扱いだと思うのだけれど。。。

『モテキ』の大根監督が、大きなフィクションを信じさせるためには小さなところで嘘をついてはいけない、というようなことを言っていたが、本作はそういったところを手抜いてしまっている感じだったのが残念。

ただ、その点を除けば、時間がゆっくり流れる映画として楽しめた。エリカ様の「別に」がなければもっと評価されただろう。

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『クローズド・ノート』

『クローズド・ノート』
雫井脩介
角川文庫、2008/6/25、¥700(BO¥105)

万年筆が多く取り上げられているというので読んだ。沢尻エリカの「別に」で有名になった原作小説。

教育大学生の堀井香恵は、引っ越したアパートのクローゼットで前の住人が残したノートを見つける。アルバイト先の文房具店で万年筆を売っているなかで、客として来た石飛隆作と親しくなる。自分の生活で親友の彼氏に誘われたりして悩むうち、次第にノートに残された小学校教師真野伊吹の日記を読むようになる。

万年筆は小説の前半に主に取り上げられていて、後半は香恵と隆作、伊吹と隆の二組の恋愛が交錯していく様子が描かれている。推理小説ではないので、ネタはほぼ前半で割れているが、香恵の心の揺らぎの描写がうまく、最後まで一息で読んだ。

●「人類は道具を使うことによって進化したのよ。それへのこだわりがなくなったら人類じゃないわよ」
 人類って…私が試し書きした「人間」くらい大きく出たなぁ…私は加奈子さんの信念がなんとなくユーモラスに感じられておかしかった。(p.96)


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『雑巾がけ: 小沢一郎という試練』

『雑巾がけ: 小沢一郎という試練』
石川知裕
新潮新書、2012/4/20、¥714(有隣堂亀戸)

著者は小沢一郎の公設第一秘書で陸山会の献金疑惑に関係したとして政治資金規正法違反容疑で逮捕された人物。テレビを通してではわからない経歴や考え方などが書かれていて、やはりマスコミの報道を真に受けてはいけないな、と思いながら興味深く読んだ。

小沢一郎が上司としては非常に仕えづらいタイプであること、その下で雑巾がけを何年もすることで培われる経験知の重要性が読む中で伝わってくる。著者は大成する人物ではないかと思わせられた。

●高速道路の開通や公共事業による箱物の記念式典などの挨拶でも、鈴木[宗男] さんの作法は随分勉強になった。挨拶の中に、現役の政治家、首長の名前を織り込む程度のことは誰でもするだろう。しかし実際にその事業を誘致したのは、先代や先々代の首長だということも珍しくない。鈴木さんは挨拶の際に必ず歴代の貢献者の名前を織り込む。それだけではなく、名前を呼んだ際に「ちょっとお立ち下さい」と言って目の前で立って貰って、参列者から見えるようにした上で紹介をする。
 もちろん、全員について憶えているはずがない。移動の車中等で、直前まで鈴木さんが名刺入れや名簿を見ている姿を見たことがある。こういう努力があってこそ、いろいろな伝説を作っているのだな、とつくづく感心したものだ。(p.72)

☆自分の仕事などでも参考にできる部分。

●人と会うのでも同じ。一所懸命汗をかいて一軒一軒回ることは美しいかもしれないが、組織のトップに立った以上は、ポイントとなる相手に時間がかかってもアポイントを取ってきちんと会う。そのほうが効果的なことが多いのである。オセロ・ゲームで目先のポイントではなく、いかに角をとっていくかに注力するのと同じ事だ。(p.74)

☆会う人を最初から選ぶ必要はないが、どのような人物かを認識して会うこと。

●こういう [トラブル] の時に、どう円滑に事を進めるか。第一に、もめごとがあっても「最終的にはこの人が言うのなら仕方がない」と皆が思う人を見定めて、そこに根回しをしておくことだと気づいた。そうすればある程度クレームや反論が出て、皆が鬱憤も晴らした後に、着地点を見いだしてもらえる。きつい現場ではどうしてもフラストレーションがたまるので、それを発散させる必要もある。
 それだけではなく、いかにも文句を言ってきそうな人にも事前に情報を与えておく必要がある。「事前に聞いていない」というだけでクレームは激しくなるからである。逆に言えば、同じ内容であっても「貴方だけに先にお伝えしておきますが」とやっておくだけで、その後のスムーズさがまったく変わってくることがあるのだ。(pp.77-78)

☆人間関係の要諦。実体験に基づいているので説得力がある。

●辞めたいと辞めようの違い
「石川、もう何人も事務所を辞めていった。でも、いいか。『辞めたい』と『辞めよう』とには大きな違いがあるんだ。『辞めたい』でいるうちはそういう気持ちがあるだけだが、『辞めよう』になったら、もう行動になってしまう。こうなったら駄目なんだ。[略] 辞表を書いて辞めていった人たちは、このあと『昔、俺は小沢事務所に居たんだよ』というのが唯一の自慢になる。そんなたそがれた人生を送るんだ。それじゃ駄目だ」[略]
 樋高さんが言いたいのは、「辞めたい」と思っているうちはいいが、「辞めよう」となると徐々に具体的な行動に移るようになってしまう。辞表を書き、次の行き先を探し、さていつ切り出すか…と。そうなっては止まらない。だから「辞めたい」の段階で思いとどまれ、ということだった。(p.87)

☆自分に言い聞かせる言葉でもあるし、辞めようと思っている人に伝えられる言葉でもある。

●選挙運動で最も大切なことは講演会等の組織作りであり、「空中戦」はその次だというのが小沢事務所で学んだことである。「三役をしっかり作っておけばいい」というのも、この考え方の延長にある。(p.133)

☆自分が組織を編成することになったら参考にできる手法。

●スピーチでは感謝の気持ちを忘れない
 ありがたいことに刑事被告人となった後でも、地方で講演などを依頼されることがある。そういうときには必ず、その地域で今何がホットな話題なのかについては必ず予習して、話の中に織り込むようにしている。地域が同じでも聴く人が異なれば、また話題も変えなくてはいけない。農業団体でも建設業界でも同じネタでは話にならない。[略]
 そういう場で話すべきは、主役の政治家が、どれだけ優れた政治家かと言うことと、その人にどれだけお世話になっているか、突き詰めればその二点でいい。(pp.163-164)

☆本来主催者が話したいところに時間を割いて話をさせてくれるのだから、感謝の気持ちを忘れず、主催者を立てること。政治パーティのみならず、あらゆるスピーチの場に通用する。「感謝の気持ち」を忘れずに。

●原則として、相手が怒っているときは一区切りがつくまでは絶対に反論しないこと。これは相手が小沢さんのような人でなくても、共通の原則である。(p.167)

☆つい反論したくなるので、我慢することの大切さを知る。

●読書することの意味をいつも実感させてくれるのが佐藤優さんだ。[略]
佐藤さんにお尋ねすると、大事な本について三回は読むようにしているとのことだった。一回目は速読で概要をつかみ、その後にポイント部分を注意しながら読んでいくという。(pp.181-182)

☆獄中記にも記載があったと思うが、再度確認。

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『第25回関東医科学生オーケストラフェスティバル』

日時:2012/6/23 14:00-16:00
題名:第25回関東医科学生オーケストラフェスティバル
場所:文京シビックホール 大ホール
出演:関東医科学生オーケストラ連盟
曲目:ホルスト / 組曲『惑星』より木星
   チャイコフスキー / バレエ『くるみ割り人形』より抜粋
   ショスタコーヴィチ / 交響曲第5番
   ピアソラ / リベルタンゴ(アンコール)

ふと思い立って、無料で聴けるコンサートを探して行った。生演奏の『革命』を聴いたことがなかったので、どんなものか見てみたかったというのもあった。

関東の医学生が集まって演奏したもので、総勢200人の大所帯だった。100人編成のコンサートというのもあまり聞いたことがないが、アンコールのリベルタンゴは200人全員演奏ということで、舞台上は足の踏み場もないほどだったが、楽しく聴いた。

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映画『メン・イン・ブラック3』

映画『メン・イン・ブラック3』
109シネマズ木場
監督:バリー・ソネンフェルド
出演:ウィル・スミス、トミー・リー・ジョーンズ
   ジョシュ・ブローリン、エマ・トンプソン

MIBシリーズ第3弾。

40年前にKが逮捕した凶悪宇宙人が刑務所を脱獄。Kをなきものにすべくタイムマシーンで40年前にタイムスリップ。それを救うためにJも40年前に。そこには若いKがいて、色々あって二人で地球を守るために協力する。

今回はKとJのそもそもの出会いが語られる。MIBのリーダーエージェントZが亡くなり、後継者にエージェントO・エマトンプソンが登場。また、レディーガガが宇宙人役でカメオ出演。まだ黒人差別の残る1969年をうまく処理していて、変な心配をすることなく楽しめた。

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成毛眞 講演「現代の常識を疑う」

12/06/08
演題:「現代の常識を疑う」
講師:成毛眞
主催:夕学五十講

・早稲田MBAで講座を持っているが、そこで教えることは、「笑わせるプレゼン」
 →プレゼンでは笑わせることが重要なテクニック
  ex. TEDでは必ず笑わせている。
 →嵐山吉兆の社長を読んで話をさせる。「東京出身の従業員でもゆっくり話させると客は京都弁と思う」

・1955年生まれは当たり年

・PC産業は裾野が広い産業 vs. Googleはほとんど波及効果がない

・「プランB」:成功した会社のほとんどは設立趣意に書かれなかった事業で成功している
 「その偶然は幸運ではないんです!」J.D.クランボルツ
  →Five elements =ほとんど子どもに当てはまる
   ・好奇心Curiosity
   ・持続性Persistence
   ・柔軟性Flexibility
   ・楽観性Optimism
   ・冒険心Risk Taking
 「大人げない大人になれ」成毛眞
 「やりたいことをやれ」本田宗一郎
 「やりたいことは全部やれ」大前研一

・過去は買えない。未来の過去を作る。
 ex. 歌舞伎を見ておく。→将来「昔から見ていました」と言えるために。

・極端な金の使い方。神話を作る。
 ex. 給料の半分を本に使う。

・運の総量は決まっている。パチンコも運なのでやらない。

・運・鈍・根

・読書:日本人はむしろ本を読んでいる。
 書籍売上の減少は人口の減少に比例している。
 出版点数が増えているから一点当たり売上が減っているだけ。
 女子高生が本を読み出したのはケータイ小説以降。むしろ本は読まれている。

・おすすめジャンル
 ・海外科学読み物・非常識な人文系:大胆な仮説と検証プロセス
 ・プロの作家によるビジネスケース:時間経過と相互作用 
    ex. 「コンテナ物語」 
      外部性効果を学べる(そのものには価値はないが、その周辺のものに
      価値があって標準化が進む)
 ・時空ごとに一点:古代中世近世・地中海欧州中国

・新聞より雑誌を読め。Foreign Affairs Report、クーリエジャポン

・読書は「仮説の立て方」を学ぶ最良の方法。
 ex. 「ノアの洪水」洪水はあったという仮説を科学的に立証。

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おちまさと 講演「企画を生む『「気づく」技術』塾」

12/06/06
演題:「企画を生む『「気づく」技術』塾」
講師:おちまさと
主催:夕学五十講

・気づき=早押しクイズ。一番しか意味がない
・企画=記憶の複合、人と違うことを記憶し、組み合わせる→気づき
・まさかの創出→Tポイントカードを使った「Tの世界」
・きかく=きづく、かんがえる、くらべる
    違う業界のヒットの要素と比べる
・ヒットは3割
・秋元康「打席に立て。世間は失敗は忘れ、成功だけ覚えている」

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『国家は破綻する――金融危機の800年』

『国家は破綻する――金融危機の800年』
カーメン・M ラインハート、 ケネス・S ロゴフ
日経BP社、2011/3/7、¥4,200(丸善日本橋)

"This time is differnt"という原題が示すように、「今回は違う」と言ってバブルを引き起こし、あるいは借金を膨らませて、金融危機を繰り返してきた人類の歴史をデータに基づいて解き明かす。

膨大な内容で、やっとのことで読み通したが、内容はとてもシンプル。つまり「『今回は違う』というのは間違いだ」ということ。そして、現在日本が置かれている状態、すなわち借金がGDPの二倍に膨れて無事だった国家は歴史上ない、ということ。日本がこの危機を消費税増税によって乗り切ることができるかどうかは不確実だけれど、やらないよりはマシなのだろう、と本書を読んだ後ではそう思わせられる。

●「今回はちがう」シンドロームの本質はごく単純である。この症状は、金融危機はいつかどこかで誰かに起きるもので、いまここで自分の身に降りかかるものではない、という強固な思いこみに根ざしている。われわれは前よりうまくやれる、われわれは賢くなった、われわれは過去の誤りから学んだ。それに、昔のルールはもう当てはまらない、という具合である。だが残念ながら、巨額の債務に依存する経済はきわめて脆い。しらないうちに断崖絶壁を背にして座っているようなもので、偶然が重なって信頼が失われると、あっという間に谷底に転落する。(p.30)

●新興市場国で公的債務総額の対GNP比が高いとき、たとえば100%を上回るようなときにデフォルトを起こすリスクが大きいと言うことは、マクロ経済学者の間では半ば常識である。先進国であっても、債務の定義にもよるが日本のように170%近くに達していれば、問題が多いと考えられる(日本の外貨準備は極めて潤沢だが、その点を考慮するにしても、純債務がGNP比94%というのはやはりひどく高い)。しかし実際には新興市場国のデフォルトは、大概サムGNP比率がもっと低いときに起きている。(p.61)

●この世の中に新しいものなど存在しない。新しくみえるのは、忘れていたからだ。
                              ーーローズ・ベルタン(p.394)


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『カシコギ』

『カシコギ』
趙昌仁
サンマーク出版、2002/3/20、¥1,680(L)

白血病にかかった息子タウムを持つ詩人の父親チョンは、息子を救うため家を売り、蔵書類を売り、最後には骨髄移植を受けるため、自分の角膜を売って金を作る。日本人ドナー女性ミドリから移植した骨髄は生着し、手術は成功する。しかし、末期の肝臓がんに侵されたことを知ったチョンは、別れてフランスに住んで再婚している妻に息子を託し、チョンを慕う女性ジンヒに見取られて亡くなる。

某掲示板を始めネット上でよく引用される「お前が無駄に過ごした今日は、昨日死んで行った者があれほど生きたいと願った明日」の元ネタが本書だと知り、読んだ。本書では、主人公の言葉ではなく、病室の壁に落書きされた言葉として出てきた。

カシコギとは、トゲウオ科に属し、雄が巣を作り、子供を育てる習性があるという魚で、稚魚が独り立ちしたあと、一年という短い生涯を終える。(p.316)

韓国小説は初めて読んだが、同じジャンルの日本の小説に比べて暗く陰気で湿った雰囲気が終止ただよっていた。そもそも、最後に妻に託すなら最初から息子の養育権を渡し、妻に金を出してもらって治療をすればよかったことで、不必要に男尊女卑の考え方が主人公にあったから回り道をした、ということもできる。

小説中では、妻の描かれ方がとにかくひどくて、冷酷な女性にしか見えず読むに耐えない。しかも、一貫して「彼女」「妻」としか表現されず、作中名前がない唯一の主要人物で、扱いがあまりにも冷たい。逆に妻の立場からすれば、確かにこんな男と一緒に暮らせないと思うだろうし、それが嫌で再婚してフランスに出たのも頷ける。また、チョンを慕う女性ジンヒへの態度も暖かみが感じられない。自分の結婚資金をはたいてチョンを援助するほど慕っているのに、自分の肝臓がんのことも教えようとしない。

本書を、息子を救うために角膜まで売って奔走する父親の小説として読み、親がいかに子供のことを思うか、逆にいかに自分が親不孝であるかを顧みて泣いた。しかし、メタ的な読み方をすれば、韓国の根強い男尊女卑思想、そして本書がヒットしたことからわかるように、それを容認する韓国文化をかいま見る小説といえるだろう。その二重の意味で、興味深く読んだ。

●「あなたが虚しく過ごしたきょうという日は
 きのう死んでいったものが
 あれほど生きたいと願ったあした」
 タウムのベッドサイドの壁に書いてある文章だった。
 誰が、いつ書いたのかはわからない。どれだけの患者がベッドに横になって、その文章を読んだのかもわからない。(p.56)

●(後記)
 長くつきあってきた友人がいました。彼は不治の病の子をもっていました。[略] いつだったか、一度だけ彼が言ったことがあります。
「俺の希望がわかるか?子どものために代われることがあれば代わってやりたい。でも、それがないんだ。それが一番耐え難いことなんだ」
 彼のその言葉が、この小説に没頭した理由でした。(p.314)

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『野蛮人の図書室』

『野蛮人の図書室』
佐藤優
講談社、2011/11/29、¥1,365(丸善日本橋)

佐藤の視点による読書案内。『週刊プレイボーイ』の連載を再構成したもの。

●手塚の場合、マンガは文学であるというプライドを持っていた。したがって、マンガを用いて特定の政治的主張を展開したり、社会的弱者を蔑視するような言説を展開することはなかった。しかし、マンガ家にもいさまざまな人がいる。評論やノンフィクション作品で展開すればボロがすぐに出てくるような内容でも、マンガが感情移入しやすい媒体であることを最大限に活用すれば、乱暴な言説で人々を煽ることも可能だ。現にそれを商売にしている政治マンガ家もいる。(p.87)

●大多数の人々は1984年に生きているのだが、ごく一部の人たちが1Q84年に生きている。そして1Q84年に生きている人たちには夜空に月が2ふ見えるのだ。
 人生において、やり直しがきかない瞬間がある。親と大喧嘩をして家を飛び出してしまう。恋人がいるのに別の彼女とセックスしてしまう。ペットの犬を飼いきれなくなったので保健所に預けて処分してもらう。飲みに行ったカネを架空伝票で会社につけ回す。普通と異なることをすると、その瞬間から世界が別に見えるようになる。
 『1Q84』によってさまざまな人生を代理経験することができる。この小説を読むと人生が確実に豊かになる。(P.91)

●『ポトスライムの舟』津村記久子
 ナガセの身辺の小さな物語がいくつも重なり、人生はそれほどよくもなければ悪くもないという雰囲気が伝わってくる。(P.94)

●『坂の上の雲』司馬遼太郎
 学問は本来、真理を追究するためのものだ。それがここでは就職の手段となっている。そして、よい成績をとってよい就職をすれば、経済的に苦労しないという俗物根性がここで褒め称えられている。こういう史跡でいくら勉強をしても、受験に合格する力はついても、物事を判断するために役立つ教養は身につかない。(P.105)

●『統帥綱領』大橋武夫
 戦前の日本陸軍に『統帥綱領』という軍事機密文書があった。一般の兵士や下士官はもとより、大多数の将校もこの文書について知らされることはなかった。陸軍大学校を卒業し、高級指揮官になる者だけが読むことを許可された文書である。[略]
 戦前の日本陸軍というと、非合理的な精神主義の権化だったという印象があるがそれは間違いだ。『統帥綱領』や『統帥参考』には、21世紀のリーダーシップ論としても十分通用する内容が含まれている。(PP.144-147)

●『日本の戦争』田原総一朗、『日本のいちばん長い日』半藤一利
 あの戦争で日本国家と日本人を守るために多くの人々が命を捧げた。この人たちの犠牲の上に立って今日の日本の繁栄があることを忘れてはならない。評者は終戦記念日の前後に靖国神社を必ず参拝し、英霊に対して「どうもありがとうございます」と手を合わせている。[略]
 いずれにせよ、負け戦は絶対にしてはいけないというのがあの戦争の教訓だ。(PP.168-171)

●『竹島問題を理解するための10のポイント』外務省
 領土は国家の礎である。自国の領土を実効支配することができない国家は一人前とはいえない。日本の場合、竹島が韓国によって、北方領土(歯舞諸島、色丹島、国後島、択捉島)がロシアによって不法占拠されている。この状況を解決しない限り、日本は一人前の国家とならない。(P.172)

●『ウェルカムトゥパールハーバー』西木正明
[佐藤] 特にすばらしいのは、あらゆる偏見を除去するために膨大な文献資料を使っていることでしょう。「米英は一体だった」「日独伊は一体だった」という現代の常識は大間違いで、当時は各国が虚々実々の駆け引きをし、その結果として日本は開戦に引きずり込まれていった。(P.284)
[西木] 関に日本に"一発撃たせる"必要があった。これ自体は前々から言われていたことですがね。まず仕掛けたのは1940年11月11日にサンフランシスコから日本に向かったカソリックの神父、ジェームズ・ドラウト。この神父の訪日が謀略の始まりであったことを明確に示した本は初めてじゃないかと、かすかな自負はあります。(PP.285-286)
[西木] 今も昔も、日本は「力関係による変節」というものに非常に鈍感なんです。変わりゆく国際関係の中でずっと同じ事をやるっていう間違いをどれだけ繰り返してきたかわからない。条約だって、必要以上に必死になって守ろうとするでしょ。(P.288)
[佐藤] 当時、松岡はデタラメな奴というイメージがあったのは、むしろ彼がやろうとした国際的スタンダードの外交交渉に日本人がついていけなかったんですよ。(P.289)

●本書を読んでいただければ、取り上げたテーマに関する基礎知識が身につく。本書に取り上げたテーマ以外で知りたい問題がでてきたら、大型書店に行くことを勧める。そこで書店員に入門書、概説書としてどの本を読んだらよいか紹介してもらう。そして本の内容についての書評(ブックリビュー)を書いてみる。こういう作業を積み重ねれば、読者の知識は一年間で飛躍的に向上し、野蛮人から脱出することができる。(P.297)

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『テレビは見てはいけない』

『テレビは見てはいけない』
苫米地英人
PHP新書、2009/09/29、¥735(BO¥350)

一言で言うと、テレビは最高の洗脳装置だから、見てはいけない、という本。

●人間は、カレーを食べれば「辛い!」と思ったり、恋人と楽しい時間を過ごしているときは「幸せだなあ」と感じるといったように、つねに意識の中で「表現」しています。これを心の内部の表現という意味で「内部表現」と呼びます。[略]
 人間は脳の進化の結果、物理的な空間饒辺かだけでなく、自分の心の中の変化においてもホメオスタシス [恒常性維持機能=温度や湿度といった外部の環境変化が起こっても、生命を同一の状態に維持するために自動的に体が反応すること] が働くようになっているのです。
 洗脳という行為を一言で説明するなら、人間の内部表現を書き換えることによって、「ホメオスタシスの状態を変える」こと。(pp.25-26)

●テレビは私たちの心の中に、臨場感を感じる空間をつくりだします。そしてその空間に、映像と音声を介して絶え間なく情報を書き込んでいく。その情報が私たちの内部表現に変化をもたらし、自分が感じている空間の認識を変えさせて、結果的に自分自身をも変化させてしまう。
 だからこそいまの世の中でヘア、テレビが最高の洗脳装置なのです。(p.28)

●では私たちは、どのようにテレビというメディアと向き合えばよいのでしょうか。
 一言で言えば、「多面的な視点をもつ」ことです。
 一つのニュースを見たら、つねにその反対側の考え方を探してみましょう。そして「なぜこのようなニュースが報道されたのか?」との視点をもつようにする。[略]
 可能ならば、番組の担当ディレクターはだれか。その人はどんな番組をこれまでつくってきたのか。[略] こういったことにも目を向けてみる。すると、簡単には情報操作に引っかからなくなるはずです。[略] そのような立体的・複眼的な視点で番組を見る週間がつくと、世の中の見方自体が立体的・複眼的になってきます。テレビを視聴するときにかぎらず、生活のあらゆる側面、目の前で起きている出来事すべてに応用できるものの見方が養われるのです。(pp.64-65)

●じつは英語の問題は、私がテレビ局の人と話すたびに必ず議論になるテーマの一つでもあります。
 「日本のテレビは、日本語で日本人に向けたコンテンツしか放映していない。それはいったいどういうわけなのだ」
 このように質問すると、彼らから「それは、日本人が日本のことにしか興味がないからです」との答えが返ってくる。それは全く違います。彼ら自身がテレビ放送を通じて、そういう日本人をつくりだそうとしているのです。
 世界的に見たときに、リアルタイムで起きているたいへん重要度の高い問題について、日本人の多くは知らずに過ごしている。それはテレビ局が、愚にもつかないくだらない番組を放映し続けているからです。日本人が外国に興味がないというなら、それはテレビ局の社員が海外に対して無知だからにほかなりません。(pp.76-77)

●ルー・タイスがつくりあげたプログラムは、一言で言えば、「いかに高い自己イメージを構築するか」という思考の技術になります。徹底して自己のイメージを高く保ち、その自分にそぐわない行動をとることを不快に感じる自我を構築する。
 いいかえれば、すべての行動を「have to」(やらなければならない)から「want to」(やりたい)に変えること。それがルー・タイス・プログラムの根本です。
 さきほどのタイガー・ウッズの場面では、通常であれば、やはり相手の失敗を祈るのがふつうでしょう。しかし、ウッズの自意識は、相手の失敗を願うような自分を許さないのです。
 「世界最高のゴルファー」である自分にふさわしいライバルであれば、この程度のパットは決めて当然だ—。このように考えるのです。

●人間はいま大切なものしか見ようとしない
 知らないものは見えない。そのうえ知っているものであっても、そのときのリアルタイムで重要性の高いものしか目に入らないようにできています。[略] たとえば年収300万円がコンフォートゾーンにある人にとっては、年収600万円の稼ぎ方・使い方が見えません。600万円という金額はリアリティがないため、見えなくなっているのです。もし人間が、自分が存在する世界をすべて認識できたら、脳がパンクしてしまいます。[略] だから人間は、自分にとっての重要性を基準に世界を分類し、重要度が高いものしかみえないようにできているのです。自分の安住するコンフォートゾーンから外れたところにあるものは、重要度が低いために見えなくなっている。
 コンフォートゾーンをズラす意味はそこにあります。コンフォートゾーンをズラすことで、いままで見えなかったスコトーマ [=心理的盲点] を見ることが可能になるのです。(pp.130-31)

▲現状の外側に成功イメージ(コンフォートゾーン)をおき、未来から現在に向かって時間が流れていると想定する。(p.140)


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『「超」入門 失敗の本質 日本軍と現代日本に共通する23の組織的ジレンマ』

『「超」入門 失敗の本質 日本軍と現代日本に共通する23の組織的ジレンマ』
鈴木博毅
ダイヤモンド社、2012/04/05、¥1,575(丸善日本橋)

第二次世界大戦における日本軍の組織論を分析した『失敗の本質』の解説書。名著として定評があり、本来は原著を読むべきだが、あまりに重厚で手に取るのがためらわれてきた。そこをうまくマーケティング的に押さえた解説書。内容云々より、まずは本書を出版した著者と出版社の着眼点に感心した。

本書では『失敗の本質』で失敗例として分析された6つの作戦をもとに、7つの敗因を抽出し、それがいかに現代の日本にも受け継がれてしまっているか、という点を描き出す。したがって、原著の単純な簡略版ということではないので、その点注意して読む必要がある。

7つの敗因
1. 戦略性:戦略的に有効な戦闘だけ勝利することを目標にする。
2. 思考法:ゲームのルールを変えたものが勝つ。
3. イノベーション:有効な新たな指標を見つける。
4. 型の伝承:型や外見を伝承するのではなく、成功の本質を見極める。
5. 組織運営:上意下達ではなく現場力を活用しフィードバックする組織にする。
6. リーダーシップ:トップの行動力が組織の利益に直結する。
7. メンタリティ:「空気」に流される日本

●戦略とは「目標達成につながる勝利」を選ぶこと。[略]戦略のミスは戦術でカバーできない(pp.40-41)

●戦略とは「追いかける指標」のことであり、戦略決定とは「追いかける指標を決める」ことである(p.48)

●『失敗の本質』からかいま見える、現代日本企業の弱点
 ・前提条件が崩れると、新しい戦略を策定できない
 ・新しい概念を創造し、それを活用するという学習法のなさ
 ・目標のための組織ではなく、組織のための目標をつくりがち
 ・異質性や異端を排除しようとする集団文化(pp.79-80)

●「創造的破壊」とは、従来の指標とは大きく異なる「劇的な変化」を意味する。
 1. ヒトによる創造的破壊
  「米軍は重要な戦略発想の核心を、ダイナミックな指揮官・参謀の人事により実行した。
 2. 技術による創造的破壊
  [略] 一連の技術革新が米軍の大艦巨砲主義から航空主兵への転換を可能とする基盤となった。
 3. 運用方法による創造的破壊
  既存の技術を「運用する方法」を大きく変化させて、それまでの勝者を敗者に追い込む。
  (pp.83-84)

●イノベーションを創造する三ステップ
 ステップ1:戦場の勝敗を支配している「既存の指標」を発見する
 ステップ2:的が使いこなしている指標を「無効化」する
 ステップ3:支配的だった指標を凌駕する「新たな指標」で戦う(p.107)

●チャンスを潰す人の三つの特徴
 1. 自分が信じたいことを補強してくれる事実だけを見る
 2. 他人の能力を信じず、理解する姿勢がない
 3. 階級の上gを超えて、他者の視点を活用することを知らない(p.186)
 →リーダーとは「新たな指標」を見抜ける人物(p.187)

●リスクを隠すことで、損害は劇的に増えていく
 『失敗の本質』で分析された日本軍のように、コンティンジェンシー・プランのない状態が招く二つの悲劇とは、
 1. 損害を劇的に増やす
 2. 新たな損害を自ら生み出す
ということでしょう。(p.228)

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『最後の一日 12月18日』

『最後の一日 12月18日―さよならが胸に染みる10の物語 』
リンダブックス編集部
リンダブックス、2011/11/3、¥600(TSUTAYA東大島)

とにかく泣きたいときに読む本。
死んでしまった母からの手紙、街の小さな書店の最後の一日、出産で記憶を失った妻、などベタな話を十篇収めてある。

特に、冒頭の死んでしまった母との絵はがきによる文通の話は、ベタベタだけれども、だからこそ覿面に泣ける。

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『続ける力―仕事・勉強で成功する王道』

『続ける力―仕事・勉強で成功する王道』
伊藤真
幻冬舎新書、2008/03/30、¥756(八重洲BC)

司法試験の受験塾を主宰する著者が、その経験からいかに物事を継続するか、について述べた本。技術的なことも書かれているが、最終的には「やりたいことをやる」と書かれているように、意志の力、という結論になっている。

●人間には「原則」に戻ろうとする習性があり、例外が続くのを気持ち悪く感じます。[略] したがって、何か新しいことを始める場合には、「それを生活の原則にする」という、意識の組み換えが必要なのです。[略]「原則になる」とは、いいかえれば「習慣になる」ということです。[略]
 新しく始めることを、「それをやらないほうが落ち着かない」という状態にまでもっていければ、目標の五割は達成したも同然です。(pp.28-30)

●スランプに陥りそうなときには、「部分的な問題を全体視しない」「短期的な問題を永続化しない」という二つのポイントを、ぜひ自分に言い聞かせてほしいと思います。そのような内容をノートやカードに書いておいて、最近元気がないなと思ったときに、見るようにするのも効果的です。(p.61)

●すべての短期合格者に共通するのが、「基本を大切にして繰り返し勉強する」という点です。[略]
 短期合格者の勉強法を見ていると、ほとんどの人がかなり早い段階で実際の試験問題を解く訓練を始めています。それにより、本番の試験ではいかに基本的なことが繰り返し出題されているかを知り、基本の反復が本番での高得点に直結することを、日々、実感しているのです。
 基本練習の効果を実感できれば、飽きを感じることも少なくなります。
 これは、司法試験以外の試験の、過去問の勉強についてもいえることです。
 過去問は本番直前に、試験の傾向を知ったり、ヤマをはったりするためにやるものと考えている人もいます。しかし、勉強を初めてできるだけ早い段階で実際に解いてみることが、最も効果の高い過去問の勉強法です。(pp.80-82)

●一度勉強しただけでは覚えてくれない脳も、同じ事を何度も繰り返してインプットされれば、「こんなに何度も入ってくるのだから忘れてはいけない重要な情報なのだろう」と判断してくれる。いわば、情報の重要性を脳に「錯覚」させるのです。(p.123)

●暗記すべき勉強の内容に興味を持てば持つほど、記憶はしやすいと言うことになります。これは、脳科学を知らない人でも、経験的にうなずける話です。[略]
 また、楽しいことに限らず、覚えようとしている内容を喜怒哀楽の感情とからめるのも、記憶力を高めるのに有効だといわれています。(pp.124-125)

●私は、迷ったときはいつも、自分がワクワクするほうを選ぶことに決めています。
 二者択一を迫られたときの判断基準として、「よりリスクが小さい方を選ぶ」という考え方もあります。[略] リスクが小さい方を選ぶというのは消去法の選択です。自分の人生を消去法で選ぶのはイヤだという思いもありました。
 リスクの小さい方を選ぶという生き方ができないなら、主観的に自分が楽しい方を選べばいい。そこで私は、「うまくいったときに、よりワクワクするほうはどちらかで選ぶことにしたのです。(pp.153)


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『人は自分が期待するほど、自分を見ていてはくれないが、がっかりするほど見ていなくはない』

『人は自分が期待するほど、自分を見ていてはくれないが、がっかりするほど見ていなくはない』
見城徹、藤田晋
講談社、2012/4/12、¥1,365(丸善日本橋)

『憂鬱でなければ仕事じゃない』に続く、見城•藤田の二人による往復書簡本。前作はどちらかというと仕事についての話が多かったが、本作は人生について真正面から語る。
見城の透徹した思想は前作に引き続き心を貫く鋭さだが、それに負けずしっかりと応答のできる藤田は、さすがと思わせる。前作に続き、よい本を見つけた。

見城がさだまさしを聴かなければならなくなり、それまでの食わず嫌いが百八十度変わったのを読み、自分も聴こうと思う。まずは「風に立つライオン」から。

●[藤田] 人生の価値は、死の瞬間にしか決まらない。それを決めるのは他人ではなく、自分なのだ。そう思っていれば、少々のことでは気持ちは揺るがないはずだ。(p.216)


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