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『万能鑑定士Qの推理劇I』

『万能鑑定士Qの推理劇I』
松岡圭祐
角川文庫、2011/12/25、¥540(L)

凜田莉子新シリーズ。

怪しい宝石鑑定イベントへの招待状を受け取った莉子は警察の依頼によりそのイベントに潜入する。
宝石の偽鑑定を権威づけるためのイベントであったが、表面上公正を演出するため、前回無関係の蓮木愛実を優勝させた。しかし愛実の実力が優れているため、今回も優勝が見込まれるため、偽造グループは彼女の権威を失墜させるためにあるトリックを仕組む。莉子はその仕組みを暴き、愛実を救うため奮闘する。

イミテーションを本物と鑑定させ、目を曇らせるというのは『モナ・リザ』の時に莉子が引っかかった手口。今回はそれが愛実に仕掛けられている。なので、トリック自体は使い回しで新しさはない。
新シリーズと言うことでラテラルシンキングの添乗員がちらっと登場。

●「ヨード液を数滴デンプンに垂らせば青インクっぽくなるけど、数週間も経てば化学反応で消えて白紙になる」(p.261)

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『柳井正の希望を持とう』

『柳井正の希望を持とう』
柳井正
朝日新書、2011/06/30、¥735(BO¥350)

東日本大震災後の希望を失った日本に向けて、今こそ「希望を持つ」ことが大事だ、と主張する本。内容は、直接には柳井の来し方行く末を語った朝日新聞の連載を新書にまとめたもの。その中で、希望を持つ重要性を読み解いていく。

柳井を一人のロールモデルとして、リーダーとしての理想の到達点として読んだ。


●ジェニーン氏は「現実の延長線上をゴールにしてはいけない」と強調する。最終的な目標を明示してその実現のための方法を規定し、組織全体で実行していくことが「ほんとうの経営」だと言っている。(p.73)

●クロック氏は飲食業界の人ではありません。それなのにマクドナルドの可能性を見抜いて、事業を立ち上げた。ベンチャー経営者の鑑のような人であり、彼の自伝のなかから渡しは商売の真髄ともいうべき言葉を見つけることができた。
「Be daring(勇気を持って)、Be first(誰よりも先に)、Be different(人と違ったことをする)」
 私はこの文句を手帳に書き付け、何度も読み返したものだ。(p.75)

●「これを買ってください。これは絶対にいいものです」
 そう断言できる商品は売れる。逆に「これはどうかな」と少しでもためらいを感じて開発した商品の売れ行きは鈍い。お客様は売り手より賢い。売り手の逡巡などたちまち見抜いてしまう。ですから、絶対にだますことはできない。(pp.87-88)

●人間相手の取引の鉄則は、まず自分が約束を守ること。その代わり、相手にもちゃんと約束を守ってもらう。何度も約束を破る人とは取引をやめるしかないだろう。
 そして、約束を破る人は考えや行動をすぐにあらためることはない。そういった場合、こちらが弱い立場であっても理不尽なことが続いたら、正当性を主張し、それでもダメなら見限ることだ。(p.93)

●親父の言葉のうち、ふたつの言葉が今も頭の隅に残っている。
 ひとつは「金儲けは一枚一枚、お札を積むことだ」。
 どさっとお金が入ってくることがあったら、どさっと出て行く。商売にホームランはない。コツコツお金を稼ぐことが結局は儲かる。
 もうひとつは「商売人は金がなくても、持っているようにふるまえ」。
 よく「金がない。金がない」と言いながら商売している人がいるけれど、商売は信用だ。相手はちゃんと見ている。「金がない」とこぼしてばかりいる人間を信頼するビジネスマンはいない。別に派手な金の使い方をしろというわけじゃないが、金がないことを周囲に吹聴することはない。(p.94)

●経営者にとってドラッカーは避けて通れないビジネス書の古典だろう。
 『マネジメント』『現代の経営』、そして『イノベーションと企業家精神』。
 どの著作にも、実際にイノベーションをやるための手法が克明に書いてあるので、ビジネスに携わる人、働きながら起業を志す人には必読の本だ。(p.120)

●ではまず何を意識改革するべきか。それは今一度「経営とは実行である」という真理を肝に銘じることだ。評論は経営者の仕事ではない。経営とは不断の実行そのものであり、経営者を目指す人もそのことを肝に銘じなければならない。(p.164)

●日本の経営者の多くは、個人の「努力」や目標達成の「プロセス」に対して、過大評価しているように思えてならない。それは、経営者を見ていると、「何が何でも結果を出せ」という執念が感じられないからだ。
 しかし、ビジネスはシビアなものだ。経営者の評価は「結果を出したか出さなかったか」で決まる。厳しさを背負って、目標を見つめるからこそ、ブレない経営になるのだと思う。(p.166)

●悩みを忘れるためには単純なことかもしれないが、ぐっすり眠ることだ。[略]
 悩むのはいい。しかし、いったん、ベッドに入ったら悩むんだ。悩みたいのなら、起きて机の前に座り、メモ用紙に悩みを書き付ける。眠いのに、そんなことまでやって悶々と悩んでみたいという人は少数じゃないでしょうか。
 悩むことほど不健康なことはない。眠るときはしっかりと眠る。悩み、不安を翌日まで持ち越さないことは大切だ。(p.204)

●リーダーが心すべきなのは、「危機は思いもよらない時にやってくる」と自覚して、自分なりに行動原則を作っておくことだ。
 たとえば、私ならば、危機に際して、次のように考え、行動すると昔から決めている。
 まずは、経営者として先頭に立つ。何かが起こったら、率先して情報を収集し、できるだけ早く対応策を決断し、具体的な行動に落とし込む。そしてその決断に沿って、各現場のリーダーが権限を持って、刻々と変化する現実に対応していく態勢を整える。この一連の動きを実行できるのは、組織においてはトップしかいない。(p.209)


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『代官山 オトナTSUTAYA計画』

『代官山 オトナTSUTAYA計画』
増田宗昭
復刊ドットコム、2011/5/24、¥1000

2011/12に開業した代官山蔦屋書店のコンセプトについてCCC社長が語った本。
代官山で目指したものは、団塊の世代=プレミアエイジがライフスタイルを実践できる複合商業施設。若い世代がそのライフスタイルに憧れて集うような場所、というもの。

単に代官山店の話にとどまるものではなく、増田の経営思想を知るのによい本。

●僕は顧客価値って言葉をよく使うんだけど、顧客価値ってつまりは、その人が楽しいとか、元気が出るとか、幸せを感じるとか、そういうようなものなんだよね、[略] そうしたときに、情報って言うのかな、何かを知って元気になるとか、見て楽しいとか、そういう部分が強まってきていると思う。しかも情報には2種類あって、ひとつは過去のアーカイブ、過去のものを見て得られる情報と、もうひとつは今、伝わってくる情報。整理すると、最初はモノで人は幸せを感じて、次には過去情報とかバーチャルな情報で幸せになったけれど、今、人が幸せになれるのはライブな情報、今まさにこのようにしゃべっている感じとか、女の人から好きだよってメールが来たときの気持ちとかね。昔もらった手紙ではなくて、今来るメールっていうふうに変わってきているんじゃないかと思う。なぜライブって価値があるのかっていうと、ライブって限界があるじゃない。例えば僕の24時間の中で起こっていることしかライブっていわないし、僕が今日打てるメールって限りがあるし。その限界性にこそ、みんな無意識に価値を感じているのかもしれない。(pp.99-100)

●何かの企画を立てようとするとき、徹底的にシンプルに考えてみる。これもひとつの重要な方法論だ。[略]
 例えば、ビジネスを考えるときもそうだ。ビジネスというものには、つまるところふたつの要素しかないと私は思っている。そのひとつは顧客であり、もうひとつは商品だ。顧客に大して商品を提供する—これがビジネスの本質だ。それ以外は枝葉末節にすぎない。ということは、ここで企画を立てる際に必要なのは、1)どんな顧客に大してビジネスを行うか 2)どんな商品をその顧客に大して用意するか 3)その顧客と商品をどういう方法で結びつけるか、という3点でしかない。(p.113)

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『生き残るメディア 死ぬメディア 出版・映像ビジネスのゆくえ』

『生き残るメディア 死ぬメディア 出版・映像ビジネスのゆくえ』
まつもとあつし
アスキー新書、2010/12/10、¥780(BO¥350)

大きく電子書籍・テレビ=ネット・SNSの三章に分けて状況を説明する。2年前の本だが、シャープのガラパゴスが有望株として取り上げられているなど、すでに内容に古さが見られる部分があり、ネットを巡る業界の流れの速さを実感する。

●コンテンツを「[ゴールドラッシュの]金(Gold)」とすれば、メディアはそれを乗せて走るインフラだ。そしてIT時代のインフラは、プラットフォームとして、様々な補完事業者との連携で発展していく。フォーマットといういわば、インフラに合うコンテンツの形を制限することによる差別化も、この段階では大きな差別化要素にはなるだろう。
 しかしながら、電子書籍フォーマット「EPUB」が事実上の標準(デファクト)規格になる日も遠くなさそうだ。[略] そこではプラットフォーム運営や対応の巧拙が、競争の優劣を分ける。(p.264)

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金環日食

今朝雲が切れてちょうど見えた。

120521


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『甘粕正彦 乱心の曠野』

『甘粕正彦 乱心の曠野』
佐野眞一
新潮文庫、2010/10、¥820(BO¥350)

1923年9月1日に発生した関東大震災の混乱に乗じて憲兵が無政府主義者大杉栄他二名を殺害した。いわゆる「大杉事件」の犯人として軍籍を剥奪された甘粕正彦憲兵大意が、それを契機にしてどのような経緯を経て満州にわたったか、そしてどのように満映の理事長となり終戦時青酸カリを服毒して自殺するに至ったのか、を初出資料も含めて描かれる。

人一倍天皇に忠誠を尽くし、軍人以上に軍人らしかった甘粕が、軍籍を剥奪されたことで非常に捻れた人格を持つに至り、満州事変に始まる満州国設立の謀略面を担うことになった過程や、今まで単に傲慢で残酷に描かれがちだった甘粕の内面を深く追求している。

本書は大杉事件の犯人が甘粕ではなかったとはっきり指摘しているが、言わば中間管理職だった甘粕が軍上層部にうまく使われてしまった様子が、現在の原発を巡る責任を電力会社にのみ押しつけようとする現政権と重なって、結局日本人は変わらないな、と思わされた。

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