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『フェイスブック 若き天才の野望』

『フェイスブック』
デビッド・カークパトリック、滑川海彦他 (翻訳)
日経BP社、2011/1/17、¥1,890(L)

マーク・ザッカーバーグがハーバード大学在学中にフェイスブックのアイデアを形にしてから世界にユーザーを広げていくまでの様子を描く。類書と違い、 ザッカーバーグの許可の下書かれた本であり、フェイスブック社員等関係者のインタビューもかなり詳細に描き込まれている。

読んで思ったのは、『グーグル秘録』もそうだが、やはりアメリカの西海岸でIT企業が狭い範囲で切磋琢磨する環境があって初めてフェイスブックのような企業が生まれるのだろうということ。言い古されているけれど、日本ではいいアイデアがあって熱意があってもそれをビジネスとして生かす仕組みがここまで整っていない。また、人材が揃っているのもアメリカの強みだとわかる。まだ起業したてのころ、ワシントンポストのCEOドン・グレアムをメンターのようにして指導を仰いだり、グーグルの副社長だったシェリルサンドバーグを引き抜いてCOOにしたことがフェイスブックが拡大した一つの大きな要因になっている。

大学生のサークルのノリだったころから会社が大きくなり、サンドバーグの入社を期に、昔の仲間が退社していく様子は、どの企業でも起こることとはいえ、寂しさを感じさせた。特に、アップルで言えばウォズニアックにあたるだろうCTOモスコヴィッツの退社がザッカーバーグに与えた影響は大きかっただろうと想像できる。

あと、フェイスブックが他の類似サービスより普及した大きな要因の一つが、「ハーバード大学発」というブランドだったことは間違いないだろう。ブランドをうまく使ったザッカーバーグの戦略勝ちだと思った。

最初はページ数の多さに読むのをためらったが、覚悟を決めて約500ページを3.5Hで読んだ。多分最近では最速だと思うが、最後の方は頭が痛くなってきた。自分の年齢を感じた。で、ブログ書くのに1H。後で振り返るためとはいえ、もう少し効率良く書かないと挫折する。

●[初期のCEO] ショーン・パーカーは言う。
「企業のリーダーたるものは、頭の中に決断が枝分かれのツリーになって入っていなければならない。もしこれが起きればこっちへ行く。しかし別のことが起きれば、別のこの方向に行く、という具合にね。マークは本能的にそういうことができた」(p.67)

●多くの学生がメールのアドレス帳を使わなくなった。ザ・フェイスブック[フェイスブックに社名変更する前の旧社名] なら相手に連絡するのに単に名前を打ち込むだけでよかったからだ。(p.127)

●[ザッカーバーグの手帳の] 表題には「変化の書〔易経の英訳名〕」とあり、世界を変えたければまず自分が変わらねばならないーマハトマ・ガニー」と引用が記されていた。中を開くと、ザッカーバーグの美しい筆記体で、数年のうちに彼がザ・フェイスブックに追加しようと考えているさまざまな機能が詳細に記入されていた。後に、ニュースフィード、一般ユーザーへの公開、サードーパーティーの開発したアプリケーションが作動するようなプラットフォームとして結実するアイデアがすべてこの手帳にあった。読んだことのある人間によると、一部は「意識の流れ」派の文学のような独白だったという。(p.195)

●[ザッカーバーグ]のプレゼンは恐ろしくシンプルだった。時には1枚のスライドにポイントがたった1行、「目標:利用時間を増大させる」などと書いてあることもあった。(p.240)

●師であるマーク・アンドリーセンはザッカーバーグを「働かない人間がいたら、ためらわず更迭するのはCEOの仕事だ」と励ました。(p.242)

●ニュースフィードはフェイスブックにとって単なる変化以上のものだった。それは、人と人との間で情報が交換される方法に、重要な変化が訪れる前兆だった。それは、コミュニケーションの「普通の」方法を逆さまにした。今まで自分に関する情報を誰かに伝えたい時には、自らプロセスを始める、すなわち電話をかけたり、手紙やメールを送ったり、あるいはインスタントメッセージを使って会話するなど、相手に何かを「送る」必要があった。
 ところがニュースフィードはこのプロセスを逆転させた。誰かに自分に関する通知を送る代わりに、フェイスブックで自分について何かを書くだけで、その情報に興味を持ちそうな友だち宛にフェイスブックが送ってくれる。誰に送るかは、過去に相手が何に興味を持ったかに基づいてフェイスブックが計算する。そして自分のフェイスブックホームページを見ているこうした情報の受け手たちは、この新しい自動化された形のコミュニケーションによって、同時に多くの人たちと、最小限の労力で連絡を取り合うことが出来るようになった。ニュースフィードが世界を小さくしたのである。
 フェイスブックがつくったのは、実質的に友人の情報を「定期購読」する手段だったのだ。(p.281)

●「仕事上の友達や同僚と、それ以外の知り合いとで異なるイメージを見せる時代は、もうすぐ終わる」
と彼は言う。彼にはいくつか主張があった。
「2種類のアイデンティティーを持つことは、不誠実さの見本だ」
 ザッカーバーグが道徳家のように言う。しかし、実利的な面を挙げてこうも言った。
「現代社会の透明性は、ひとりがふたつのアイデンティティーを持つことを許さない」
 言い換えれば、自分のプライベートを仕事情報と隔離したいと思っても、個人情報がインターネットのあちこちに広がっているから無理だということだ。(p.290)

●「われわれのビジネスの本質は何なのか」[シェリルサンドバーグ](p.377)

●グーグルーサンドバーグの古巣であり、紛れもなくインターネット広告の王者ーは、ユーザーが欲しいとすでに決めているものを探す手助けをする。これに対してフェイスブックは、ユーザーは何が欲しいかを決める手助けをする。(p.379)

●ドン・タプスコットは『ウィキノミクス』(日経BP社刊)でビジネス協業の新しい形態について、『デジタルネイティブが世界を変える』(翔泳社刊)で、若者とテクノロジーについて書いた著作家だが、こう説明する。
「ソーシャルネットワーキングはソーシャルプロダクションになりつつある。これは友達との関係を変えただけではなく、イノベーションを起こし、製品やサービスを創造するために社会が能力を統合する方法を変えつつある」(p.389)

●キャンパスでは、米国内ほぼすべての高校や大学にフェイスブックが浸透した結果、従来の学校印刷メディアー新聞や卒業アルバムーの重要性は著しく衰えた。(p.429)

●「しかし非常に深遠な違いだと私[ピーター・シール] が思うのは、グーグルがその根本で、このグローバル化プロセスが終わった後、世界の中心はコンピュータになり、すべてをコンピュータが行うようになると信じていることだ。おそらく、グーグルがソーシャルネットワーキング現象で機会を逸した理由の一つがそれだろう。グーグルをけなすつもりはまったくないが、グーグルモデルでは情報が、世界の情報を体系化することが、もっとも重要なのだから」
「フェイスブックモデルは根本的に異なる。完全なグローバル化に関して私が最重要だと思っていることの中に、有る意味で人類はテクノロジーを支配するものであり、その逆ではないということがある。会社の価値は、経済的、政治的、文化的ー何の価値であれー一番大切なのは人であるという考えに端を発している。世界中の人たちが自らを組織化するのを手伝うことが一番大切なことだ」(p.474)

●フェイスブックのここ数年来の注目語が「ダサい奴になるな(Don't be lame)」だ。[製品担当副社長] クリス・コックスによるとその意味は、もっと金を儲けるためだけや、みんながやれと言うからというだけの理由で何かをするな、ということだという。これはグーグルの「邪悪になるな(Don't be evil)」と対照をなすフェイスブックのモットーだ。(p.483)

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