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『「本屋」は死なない』

『「本屋」は死なない』
石橋毅史
新潮社、2011/10/30、¥1,785(L)

 元出版社勤務の著者が、全国でカリスマ書店員と言われる数人をインタビューし、TSUTAYAに代表されるただ本を並べるだけの倉庫としての書店と、棚を作り客とコミュニケーションをする書店について考察し、本屋の行く末について考える。とはいっても、いかにして「書店員」のいる本屋が今後どのように存在できるか、といった方向に考えていて、あまり論理的な裏付けのある話になってはいない。著者の中ではカリスマ書店員がいる書店が理想で、TSUTAYAや蔵書数を誇るだけの大型書店は悪だという先入観があるために、いくらインタビューを重ねてもバラ色の未来像は浮かんでこない。結果として、ところどころ面白い話は出てくるにせよ、本としては「全国でその筋の人には有名なカリスマ書店員の話を聞きました」、というだけの本になってしまっているのが残念。

伊藤清彦の推薦する南相馬市立中央図書館は一度見てみたい。

●大型書店には毎日、大量の新刊が入荷する。そのひとつひとつを売場のどこに並べるかを決めるには、ろくに読みもしないのに内容がわかっているという特殊な能力が必要になる。ずっと以前、[ひぐらし文庫・原田真弓]にコツを聞くとそれはこういうものだった。
 タイトルと装丁を見る。目次を見る。キーワードだけに注目して、立ったまま、または歩きながら三十秒読む。それだけでわかる。わからない本は商品として弱いと判断するしかない。例外は常にあって、三十秒ではわからないけど引っかかりを覚えた本は、あとでちゃんと読んでみる。[略] 毎朝、必ずやるのはその三十秒の繰り返し。自分の持ち場の箱を開けてから十分、十五分でそれを終わらせる。(p.13)

●新風舎の商売は詐欺的だという批判が常にあったのは事実だ。[略] だが新風舎の経営が傾いた要因は、詐欺的商法だという批判から客を失ったせいではなく、同業他社とのダンピング競争に陥って収益のバランスを崩し、自転車操業に陥ったためである。[略] 倒産までの数年間の新風舎は、文章といくつかの写真を載せて作るような一般的な自費出版本であれば、百万円をわずかに超える金額か、場合によってはそれ以下の値段で請け負うことが多かった。(p.56)

●伊藤[清彦、元さわやか書店店員] のように次々と日の当たらない本を売れ筋に仕立てることを得意とする一書店員の成果を、取次や出版社はPOSデータを通じてすぐにキャッチし、全国的な販売につなげる手法を確立しつつある。(p.130)

●「小説ひとつとっても、多くの書店員はせいぜい千冊から二千冊、ヘタしたら数百冊かそれ以下の読書しか積み重なっていない。田口[幹人さわやか書店店員] は、数千どころか万単位の読書体験から『安政五年の大脱走』に目をかけている。パソコンや携帯の画面上でみれば、田口と他の書店員が一緒に『いい本だ』『売りましょう』と言い合っているよ。でも、二人は同じではない。読書量の違いは、インターネットにちょっと書くものを見ていればわかる。田口は突出していると思うが、彼一人だと断言はしないよ。僕よりずっと年下でも、これは半端じゃなく読んできたろうなとわかる書店員もいる」(伊藤、p.140)

●ミスしたときに、自分にシラけちゃだめ。そこからいくらでも立て直せるんだから。(定有堂書店・奈良俊行、p.172)

● [元リブロの今泉正光は] 休日も、全然休まなかったみたいだよね。chしゃに合ったり、担当した分野を理解するために専門家のところへ通って勉強したり。それと売上スリップを家に持ち帰って仕分けして、分析する。おそらく大変な量だったと思う。話をきくたびに、俺はそこまでやってるか、って自分に問うようにしてた。
 伊藤が今泉を尊敬する理由は、行為の量にあった。純粋な努力と情熱に優るものはないという極めてシンプルな教訓がそこにはある。(p.236)

● 本屋同士でつながんのはもうやめたほうがいい。他の商売の奴とのほうが広がるよ。あと仕事のきついって話は、もうナシにしたほうがいい。労働ってのは、きつけりゃきついほど意味がある。きつい労働からしか得るもんはないんだよ。(ちくさ正文館・古田一晴、pp.246-247)

● 本屋のひとってみんな、この本は面白いですよって、内容の話をするじゃないですか。インターネット上でもみんなそれを語っているし、おすすめの本は、と雑誌で聞かれたりもして。これを続けている限り、本屋が本を売る理由って、どんどん弱くなっていっちゃうと思うんです。
 ガワの部分、そこを含めて本を語ることを意識しないといけないんじゃないか。紙を束ねていて、文字の美しさとか表紙のデザインがあって、手触りや重さがあって、そういう製本されたモノとして紹介する。文章のすばらしさはもちろん重要なんだけど、製本された状態をひとつの総合芸術として紹介しなきゃいけないんです、私たち本屋は。(原田、p.257)

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