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『ストーリーメーカー 創作のための物語論』

『ストーリーメーカー 創作のための物語論』
大塚英志
アスキー新書、2008/10/10、¥790(ジュンク堂新宿)

 書中の30の質問に答えて行けば誰でも物語が作れる、という惹句の本。
 著者も述べているように30の質問に答えることはある程度労力を要する作業なので、「誰でも」できるかどうかは疑問が残るが、実際に大学の講義で使用しているメソッドを新書にまとめたものなので、適切な指導があればおそらく物語を作ることは可能だろう。
 ただ、本書の価値はそちらよりもむしろ物語論の解説にあると考えるのが適当。プロップの『昔話の形態学』やボグラーの『神話の法則』等を引き、すべからく物語は決まった構造に帰納することができ、そうであるならばその構造を演繹することで物語を作ることができるし、村上春樹や中上健次は多分にその手法で小説を書いた、というのが本書の主旨である。特に、最近は政治の世界でも物語論に従ったシナリオで国民が熱狂した例があることなどを述べており、非常に説得力のある内容だった。
 もちろんすべての小説や映画が大塚のいう物語論に従っているとは限らないが、一つの考え方としてわかりやすく、一読の価値はある。
 少し残念だったのは、校正漏れが多く、誤字脱字によって読みづらい文や意味の取れない文があったこと。

●現在の日本でそこそこに名の知られているまんが作品の大半が実はハリウッド映画に映画化権が渡っているのは、その「ストーリー」に海外から見た時の価値があるからです。ジャパニメーションと呼ばれる日本のまんが、アニメーションを日本人自身は「萌え」や「オタク」や「コスプレ」としてしかプレゼンテーションできない現状との乖離がここにあります。(p.106)

●『キャラクター小説の作り方』で示したように、イラク戦争という根拠なき戦争に対して人々から批判的能力を奪ったのは、あの戦争がハリウッド映画の文法通りに進行していった、すなわち、「戦争」を解釈する思考が経済でも思想でもなく「物語論的な因果律」に取って代わっている、という事態でした。ようやく今になってそのつけが回ってきた「小泉改革」においても、それを国民が熱狂的に支持した「郵政選挙」もまた、イラク戦争と全く同じ物語構造をもち、いわば両者は物語論的には「ヴァリアント」であることについては同書の文庫版で示しました。(p.149)

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