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『リーダーシップ』

『リーダーシップ』
山内昌之
新潮新書、2011/10/20、¥714(ジュンク堂新宿)

新聞その他複数の書評欄で推薦されていたので購入。

過去の偉人のリーダーシップを紐解き、翻って政権交代後民主党政権の首相にその才が欠けている、ということを延々と述べた本。歴史を紐解いていて自分に役立つと思える部分もあるが、本書の主旨は民主党の批判にあって政治に関わる話が主なので、政治家以外の人間にはあまり役に立たない事例が多い。
「第二部偉人のリーダーシップ」として吉田松陰、山口多聞、織田信長・松永久秀を取り上げていて、著者がこれらの人物に強く肩入れしていることが伺える。

民主党を批判するのは結構だが、だから何、という印象。今更「鳩山がだめだ」「菅がだめだ」と言ったところで、それはすでに周知の事だし、事態が好転するわけでもないので、不毛な議論だろう。「野田新首相に期待する」と述べているが、それも特に根拠のある主張にはなっていない。

●西郷隆盛は、[略] 無教会派キリスト者の内村鑑三でさえ日本史でいちばん偉大な人物と讃えたほどの人物である。維新後の西郷は経済改革について無能だったかもしれず、内政についても木戸孝允や大久保利通の方が精通していたに相違ない。また、国家の平和的安定をはかる点では、公家の三条実美や岩倉具視でさえ西郷よりも有能だったかもしれない。内村も語るように、新たな明治国家はこの人々の全員がいなくては、実現できなかったともいえる。しかし、西郷がいなければ、明治革命そのものが可能だったかといえば答えは否ではなかろうか。まさに、木戸や三条を欠いたとしても、革命は上首尾ではないにせよ、たぶん実現を見ていたという内村の見方は正しい。「必要だったのは、すべてを始動させる原動力であり、運動を作り出し、『天』の全能の法にもとづき運動の方向を定める精神でありました(『代表的日本人』)[略]
 数多くの悲劇や犠牲を出した欧米の近代革命と比べると、最小限の流血によって近代社会へ飛躍した日本の経験は、おそらく西郷がいなければ不可能だったに違いない。
 西郷の偉大さは、犠牲者を最小にしながら効果の大きい革命を実現した点にあるのだ。(p.52-53)

●「不相応な好運は知恵のない者には不幸に陥る契機ともなる」とは、古代ギリシアの哲学者プルタルコスの言である。やや酷な言い方になるが、2009年の衆院選挙で308議席もの多数を獲得した民主党政権の動きを見ていると、思いがけない幸運に本来の力量や才覚が追いつかない不幸を感じてしまう。(p.54)

●痩我慢の説による挑発には勝も榎本も驚くほど寡黙であった。口数が少ないのも、時にはリーダーに必要な脂質である。福沢の多弁さは政治家でなく評論家の質なのだ。それでも福沢は聡い人間である。「痩我慢の説」を10年後に発表したのは、どこか内心で忸怩たる思いがあったせいでもあろうか。公表は福沢の死の一ヶ月前であり、勝はその二年前に逝去していた。そして、すでに政界から引退していた榎本は七年後の静かな死を向島で待つだけの身だったのである。(p.66)

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