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『どこから行っても遠い町 』

『どこから行っても遠い町 』
川上弘美
新潮社、2011/8/28、¥540

どこにでもありそうな商店街で、どこにでもいそうな人たちの日常を描く。魚春の主人平蔵と源さんのところで買い物をする塾講師唐木妙子の話から始まり、一編ごとに少しずつ登場人物を移しながらそれぞれの物語が語られ、最後に平蔵の亡くなった妻春田真紀の物語で終わる。

一編ごとに少しずつ登場人物をずらす小説は、林真理子の『みんなの秘密』や佐藤泰志の『海炭市叙景』でも見覚えがあるので新奇な感じはしなかった。『みんなの秘密』よりは毒が少なく、『海炭市叙景』の絶望的な暗さよりはもっとぼわっとした空気感といった印象。

商店街の人物の物語を一巡させて最後の一編が死者である春田真紀の視点からの話になっており、編中でも「あたし、春田真紀という女が、今でもこうして生きているのは、平蔵さんと源二さんの記憶の中に、まだあたしがいるからです」(p.302)と語らせるように、袖を振り合い、何らかの関係を持ち、記憶に残ること、それが人間が人間でいること、ということを言いたいのだろうかと推察はした。ただ、本書自体を読み終わって『センセイの鞄』のような余韻はなく、結局何の話だっただろうか、と思い出せないくらい淡い印象の小説だった。

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