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『「マエストロ、それは、ムリですよ・・・」 -飯森範親と山形交響楽団の挑戦-』

『「マエストロ、それは、ムリですよ・・・」 -飯森範親と山形交響楽団の挑戦-』
飯森 範親 (監修) 、松井伸幸(取材・構成)
ヤマハミュージックメディア、2009/7/20、¥1,680(L)

 山形交響楽団「山響」に、飯森が客演し、常任指揮者を経て音楽監督になるまでの過程をノンフィクション的に描いている。

 山形市という小都市でぱっとしなかった山響の良さを引き出すため、就任時に飯森はマニフェストを出し、その実行を通じて「東京の真似をしても仕方ない。山形でしか聴けない音楽を目指すべきだ」(p.46)という明確なビジョンを形にしていく。「顧客満足」という言葉こそ出てこないが、本書に通底するメッセージはまさに「顧客満足の追求」そのものであり、山響はその成功例として描かれている。
したがって、本書は単に音楽監督の話としてだけではなく、「音楽家は、サービス業です」(p.54)と言い切る飯森をモデルとしたリーダー論、経営書として読むことができるし、むしろそのように読まれるように構成されている。飯森を持ち上げすぎている感はなきにしもあらずだけれど。

●聴衆に満足してもらうためには何が必要か。
 聴衆は、山響に何を求めているのか。
 これら多くの問題から逃げずに真正面から解決にあたること、そういった気持ちを持ち続けること。
 それが、飯森がマニフェストに込めた狙いだったのである。(p.47)

●飯森の行動を取材して感じるのは、粘り強いと言うことだ。
 1パーセントでも可能性がある限り「NO」とは言わない。逆に様々な角度から見つめ直して工夫したり、考え方を切り替えて提案を実現に持ち込もうとする。(p.54)

●飯森は、決して人の悪口を言わない。
 これは、尊敬する母親からの教えでもある。悪口を言うことで、マイナス効果が周囲にもたらされることをよくわかっている。
 他にも、飯森が子供の頃から実戦していることがある。
「ありがとう」という言葉を頻繁に使うことだ。
「何に対しても『ありがとう』と思うんです。嬉しいときはもちろん、嫌な思いをしても『ありがとう』と思います。反省しなさいというこことだろうし、その足踏みが次のステップへの布石になるかもしれないでしょ」
 平たく言えば『プラス思考』ということになるのだろう。(p.67)

●飯森は、「指揮者は楽団員に決して弱いところを見せてはならない」と考えている。
 以前、飯森は、風邪気味でマスクをつけたまま練習を始めたことがある。すると、何だかカサカサした音が聞こえてきた。"オケに風邪が移った"のだ。
 目に映る指揮者の姿は、楽団員のマインドに響く。
 太った指揮者と痩せた指揮者が同じオーケストラでタクトを振れば、全く違う音が鳴るものである。客席の聴衆だって、違う演奏だと感じ取るだろう。
 指揮者の何気ないため息やあくび一つで、会場の空気は一変する。
 オケのやる気と集中力が削がれてしまうのだ。
 このあたりは、人前で話す際やビジネスシーンにも応用できる教訓に違いない。(pp.133-134)

●「[『おくりびと』の] 話が来た時点で断るのは簡単でした。でも、この映画に何かを感じて、撮影が成り立つ可能性は低かったけどどうにか実現して、最後はアカデミー賞というご褒美までいただけた。やっぱり、1%でも可能性があったら『NO』と言っちゃいけませんね」(p.141)

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