« 『下町ロケット』 | トップページ | 『顔に降りかかる雨』 »

『偉大なる、しゅららぼん』

『偉大なる、しゅららぼん』
万城目学
集英社、2011/4/26、¥1,700(平安堂軽井沢)

滋賀県に広がる琵琶湖のほとりに、水を通じて不思議な力を使う「湖の民」が住んでいる。日出家は人の心を操り、棗(なつめ)家は人の体を操る。日出家はその力を使い石走市の名士となったが、棗家は滅亡寸前である。日出浩介は、しきたりに従い高校入学時に日出本家に下宿し、力を使うための修行をすることとなる。城に住む日出家には当主淡九郎、白馬にのった清子、弟で当主の息子淡十郎が住み、学校に通うのに舟にのって行く。高校には棗の息子広海や、昔の城主速瀬校長、その娘などが登場する。前半は本作の世界を紹介するための説明が多いが、校長が存在感を増すや万城目ワールド全開で、日出棗両家存亡の危機に立たされることになる。

『プリンセストヨトミ』で少し設定や話の展開に無理を感じたが、本作ではもともと「湖の民」が存在する前提の世界になっているので、すんなりと話についていくことができた。著者インタビューで万城目も言っている通り、あまり構成をきっちり考えず、作品に荒っぽさを取り戻すことには成功している気がする。設定に無理があるとすれば、種明かしの部分でそれほど危険だと分かっているなら、もっと根本的な対策をとっておくべきではなかったか、あるいは普通は取っておくだろう、と思うところが放置されていたこと。まあ、そのあたりは難しく考えずにファンタジーとして捉えるのが本書の読み方というものだろう。

話の筋を追うのはもちろん楽しいが、読了後再度読み返して部分部分の登場人物の会話や描写を楽しむことができる本。たとえば、「今でもときどき、冷やごはんにコーラをかけて食べてみたらうまかった、とか、比叡山の山の端にUFOを見てしまった、小さな窓が見えた、少し回転していた、とか[略]」(p.21)のような、奇想天外な描写が出てくる。冷やごはんにコーラをかけて食べるなどと想像すらしないようなことがさらっと出てくるところが万城目ワールドの真骨頂かもしれない。

●[棗] 「偶然は三度重ならないからな」(p.434)

|

« 『下町ロケット』 | トップページ | 『顔に降りかかる雨』 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/40886/52532928

この記事へのトラックバック一覧です: 『偉大なる、しゅららぼん』:

« 『下町ロケット』 | トップページ | 『顔に降りかかる雨』 »