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『下町ロケット』

『下町ロケット』
池井戸潤
小学館、2010/11/24、¥1,785(丸善日本橋)

直木賞受賞作。

小型エンジン製造で独自の技術を持つ佃製作所。佃航平はロケット技術者だったが、打ち上げ失敗の責任を取り研究者の道をあきらめ、父の経営する下町の中小企業(とは言っても売上100億社員200人規模)の経営者となる。今すぐには用途がはっきりしない水素エンジン部品の特許を持ち、それがないとロケットを飛ばすことができない大企業があの手この手で佃に迫る。

佃製作所が特許を持つはずの小型エンジンに大手上場企業ナカシマ工業に特許侵害で訴えられ、顧客離れ、資金繰り、と追いつめられて行く前半とロケットエンジン部品の特許を巡る帝国重工との駆け引きが描かれる後半の大まかに言って二部構成。中小に特許訴訟を仕掛け、資金繰りに詰まって倒産するのを待つのが常套手段のナカシマのモデルは多分松下、プライドがやたら高い帝国重工のモデルは多分三菱重工と、現実で言えば中小企業が戦うにはかなり辛い展開だが、それを不自然に見せない著者の描写はさすがと言ったところ。『空飛ぶタイヤ』を読んだ時も思ったが、著者は中小企業にとても優しい目線を送っている。資金繰りの辛さなど、自分の経験を思い出して涙した。想像できる結末ではあっても、最後のページをめくったときの感動は色あせず、「夢を忘れるな」というメッセージを直球で投げられた感じがした。

本書は、ビジネス娯楽小説としてよく描けていて、単に経営者からの経営という視点からのみならず、若手社員の鬱屈ややる気といった視点や、現実だけでなく夢を追うことの大切さを思い出させてくれるという視点からなど、様々な読み方ができる小説。

●こんな状況の中にあって、去る者も入れば、神谷のように親身になってくれる者もいる。数少ない支援者を信じられなくなったら、その先にあるのは、ただひとつーー破綻だ。(p.151)

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