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『難解な本を読む技術』

『難解な本を読む技術』
高田明典
光文社新書、2009/5/20、¥861(BO¥400)

難解な「思想」の本を読む技術、と言っていい本だが、ごく普通にちょっと難しい本の読み方の本としても読める。基本的な考え方は、とにかく選書に時間を使え、ということと、ノートを贅沢に使って書き込んでいけ、ということ。読む意味のない本を読んで時間を無駄にすることほど人生の無駄遣いはない、という考え方に徹している。そして、選んだ本は通読と詳細読み、と二回読むことを求める。佐藤優や小宮一慶の三回読みより一回少ないが、著者の詳細読みは相当深く読むことを要求しているので、考え方としては同じと考えてよい。本書後半では例としてデリダ、フロイト、フーコー、ラカン、ドゥルーズなど普通に読んだらわからんだろう、という著者の代表的著作を取り上げ、読み方のヒントを読者に示している。
思想書に取りかかる前に、再読しておきたい本。

●本書では、とりあえず、「予備調査ー選書ー通読ー詳細読み」の四つの段階を想定しています。[略]
それぞれの段階にどれだけの時間がかかるのかは、本の難易度にもより、また、読者の本読みの速度によっても変わるので一概には言えませんが、300ページ程度で難易度が中くらいの書籍の場合を考えてみるならば、「予備調査と選書」に少なくとも約3時間、通読に4時間、詳細読みに10時間、という感じになると思われます。つまり、合計で17時間ですので、一日2時間を読書にあてた場合、およそ一週間程度かかることになります。(p.32)

●例外はありますが、有名書店の「棚」は、とてもよくできていて、眺めているだけでその分野の全体像がおぼろげながら見えてきたりします。棚見に習熟してくると、一瞥しただけで「この棚はヒドい」、もしくは「この棚は素晴らしい」ということがわかったりもするようになります。

●私たちの時間は限られています。「読むべきでない本」を読んでしまうことによる時間の損失は、私たちが思っている以上に甚大です。それは、単にその本を読むのに要した時間だけではなく、その本の悪い影響から脱するために必要となる時間も含まれるからです。ソフトウェアエンジニアの世界でよく言われる格言に、「ゴミが入ればゴミが出る」というものがあります。どんなによく出来たシステムであっても、間違ったデータが入力されれば、間違った結果が出る、という意味です。私たちの思考や精神の仕組みも同じです。頭にはできるだけ「ゴミをいれないようにする」ことが肝要なのであり、いったんゴミが入ってしまったら、それを排除するために多大な労力と時間が必要になってしまいます。「ダメな本なら読まない方がいい」というのでは不十分で、「ダメな本を読むのは、百害あって一利なし」です。ダメな本による影響で、回復不可能なダメージを受けている人がたくさんいます。「本を選ぶのに選びすぎるということはない」というほうが圧倒的に正しいと言えます。(p.47)

☆自分は一応ダメだと思っても最後まで目を通す方なので、著者とは少し考え方が違うが、言っていることはよく理解できる。

●一回目と二回目以降で、同じような読み方をするのは効率的ではありません。基本的な方法としては、一度目には通読をし、その本の全体のおおまかな地図を頭の中に作り、その地図の具体的な表現として「読書ノート」に見出しを作っていくことをお勧めします。こうすることによって、二度目以降の読みをしっかりしたものにすることができます。(p.53)

●フーコーの著作は、ある考え方の正当性を主張するものではなく、様々な概念や思考、論理を提示し、読者が自己決定することを要求するものであり、「開いている本」の典型です。開いている本を読む目的は、知識を得ることではなく、読者自身が自らの思考によって何らかの帰結を紡ぎだすことです。このタイプの本からは、何らかの結論や主張を得ることはできません。(p.97)

●複数の大学に勤務し、多くの大学の教員と親交してきた経験からすると、大学の難易度の違いや、老舗大学であるか否かなどは、そこに所属する教員・研究者の質とは、ほぼ何の関係もないと言えます。[略] しかし、研究者は基本的に質問に答えるのが好きですし、教員とは「質問に答える商売」ですから、相手さえ間違えなければ、必ずよい結果を得ることができます。さらに言えば、質問をするというのは、その相手を判断するための最もよい方法です。(pp.102-103)

●一般に「わかっている」とは、その「わかっている」ことを「使っている」人間のことです。「できる(使っている)人間しか、答えることはできない」というのは、質問する時の鉄則です。たとえば、英語を日常的に使っていない人間に、英語に関する質問をするのは愚の骨頂です。[略] 蛇足ですが、「使える」「できる」「作れる」ということと、「教えられる」ということのあいだにも、ずいぶん大きな開きがあり、「使える」からといって「教えられる」わけではありません。しかし、当然ですが「使えない」「使っていない」「できない」「作れない」人間は、絶対に教えられません。この判定は比較的簡単です。「使える」人間は、使っているところを必ず見せびらかして自慢します。「こうやるんだよ!」と「やってみせる」わけですね。「やってみせない」人間は、できないか、自信がないかのいずれかで、どちらにしても教えられるレベルをはるかに下回っています。[略] 大学以外の世界にも優秀な人間はたくさん存在しています。その判定基準は、上記の通りです。「できる人間ほど、やっているところを見せる」というのが鉄則です。(pp.103-104)

●効率よく「情報収集」するためには、目次や小見出しやちょっとした表現から「無駄である」「害になる」「必要ない」ということを感じ取り、「読まない」という選択をすることがとても重要となります。私たちに与えられている時間は限られているわけですから、どうしてもそのような方法を採らざるを得ないでしょう。(p.110)

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