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『リアルのゆくえ──おたく/オタクはどう生きるか』

『リアルのゆくえ──おたく/オタクはどう生きるか』
東浩紀、大塚 英志
講談社現代新書、2008/8/20、¥903(BO¥400)

東と大塚の対談をまとめた本。それぞれの考え方があまりにもかけはなれていて、対談とはいいながら、ひたすらすれ違う。大塚は「批評家としての責任を明らかにせよ」「主体を重視せよ」と一貫して問いかけるが、東は「好きだからやってるだけだし、責任とか関係ないし」「主体なんかないし」といった逃げを打つだけで、これが延々と繰り返される。業を煮やした大塚が、時には人格攻撃の領域にまで踏み込むほど、東の批評家としての姿勢、公共性に対する姿勢はひたすらに無責任を貫く。それぞれに興味深い議論はあるが、対談本にする意味があったのか、はなはだ疑問。

[東] 話を大きくすれば、20世紀の半ばぐらいに、ひとは無意味なものでも感動できてしまうのだ、文化とは結局のところ脳の生理的反応のことなのだ、というパンドラの箱が開かれたんだと思います。たとえばいままで宗教的な悟りだと考えていたものが、ドラッグによっても実現可能だと分かってしまう。日本のオタク系文化もアメリカのハリウッド映画も、規模や見え方こそ違うけれどその基本的な変化は共有していて、オタクであれば萌え要素の組み合わせと物語の定型によって、ハリウッドであれば視聴覚的な刺激と物語の定型によって、かつて「感動」と呼ばれていたもののかなりの部分まで置き換えることができる、そういう信念のもとに動いている文化ですよね。それがいいか悪いかの判断はともかく、21世紀もますますそんな時代になることは間違いないでしょう。(p.54)

[大塚] 占領軍の連中は図書館でワイマール憲法から何からリサーチしてきて、そのエッセンスをまとめて、いわば究極の憲法を作ろうともしていた。それが日本国憲法の基調にあるので、決定的な無国籍性と普遍性をいまの憲法は持っている。(p.72)

[大塚] 『ガンダム』はガンプラファンが気がつこうが気がつくまいがパレスチナの話を昔からずっとやってる。なんで北部同盟だかタリバーンだかにシャーっていう人がいるのかって、そこで気がつく子はやっと気がつく。(p.156)

[大塚] あさりよしとおがまんが版の解説で、『エヴァ』はビルドゥングスロマンとしてよいのではないかと書いていて、ぼくもある時点まではそうだと思っていたわけ。ところがある瞬間に庵野は自分の中に主題が発生してしまったことに対して、驚いたのか怯えたのかわからないけど、主題に必死に抵抗していった。それでひたすら破綻していって、ぼくが映画版の最後をあきれながらだけど評価するのは、結局最後までシンジはエヴァに乗らないわけだよね。ロボットに乗って、責任を引き受けるという少年の成長の結末を庵野は身体を張って拒否した。その主題からの身体を張った逃亡ぶりは『エヴァ』の真の主題だと思う。(p.169)

東 その点では、大塚さんとぼくで考えが違うということですね。
大塚 だから違うから話すわけでしょう。さっきから思うけれど「違う」でスルーすべきではない。(p.283)

[東] そもそも、ポストモダニズムというのは、政治的には本質的に現状肯定しかできないロジックのはずです。なぜなら、それはあらゆる理念を脱構築するからです。それなのに、なぜかポストモダニズムがアイデンティティ・ポリティクスとかカルチュラル・スタディーズと結びついて、左翼のラジカルな議論がポストモダニズムによって支えられるようになってしまった。でも、それは本当は無理なんです。どうしてそんな無理をして政治化しなくてはいけないのか。むしろポストモダニズムの言説の毒というのは、政治性や主体性の議論を無効にするところにあるのではないか、その毒をもっとちゃんと引き受けた方がいいんじゃないの、というのがぼくの批評のスタート地点にあります。むろん、それをすべて忘れて「公共的な言論人」のふりをすることはできる。多くのポストモダニストがそれを選んでいる。でも、それこそが無責任なのではないか。(pp.292-293)

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