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『思想地図β vol.1 』

『思想地図β vol.1』
東浩紀、宇野常寛、速水健朗、北田暁大、鈴木 謙介、他
コンテクチュアズ、2010/12/21、¥2,415

東と北田の『東京から考える』の記憶があったので、気の迷いでつい買ったが、量が多くて消化不良。

巻頭特集で、非実在青少年を巡る東京都の規制問題について、猪瀬直樹、村上隆、東が対談する。猪瀬は「区別陳列しろといっているだけだ」と主張するが、それはすでに自主規制によって実現していて、それがこの問題の本質ではない。なぜ大手出版社が軒並み条例に反対しているのかといえば、東京都条例の条文が恣意的でどのようにでも拡大解釈できることが言論の自由に関わる問題で、それこそが本質のはずなのに、その点については東、村上も十分に追究しない。そのため、最後まで議論が噛み合わず、猪瀬にうまく逃げられている。その上、二人とも東京都の事業参加の誘いを嬉しそうに受けている。「それってどうなのよ」という感想。

第一特集は、ショッピングモーライゼーションと題して、ショッピングモールから消費社会の実情を考えるという企画。北田と東(とその他)の対談が読んでいて一番面白かった。色々な意味で北田と東は対照的で、自分は北田の考えの方がわかりやすかった。東は、なんだか読者に「リア充っぷり」を見せつけているだけの気がした。インチキな読み方だから、本当のところはどうなのかはわからないのだけれど。また、宇野常寛の「郊外文学論」は、面白く読んだ。

第二特集は、パターンサイエンスの話だが、まったくチンプンカンプンで、字面は追ったが頭には入らなかった。

[東] 2001年の9.11以降のセキュリティ化をどうとらえるかは、現代の思想にとって重要な問題です。そこで、いってしまえばリベラリズムはセキュリティの論理の前で敗北した。セキュリティが台頭してきてわかったのは、リベラリズムの枠の中で考えられてきた寛容、オープンネスが、現実にはいかに貧しく非力だったかと言うことです。空港がその象徴です。空港はユニバーサルな交通の場です。ポストモダン思想でもそのイメージは重視されていた。しかし実際にはそのような交通の場、柄谷行人さん風邪にいえば「交通空間」という場は、強いセキュリティの下でしか機能しない。9.11はまさにその点を突いた。だからいま、公共性にセキュリティを対置させることには意味がない。他者への全面的な寛容を主張します、しかしセキュリティには反対です、という思想はもう成立しない。(p.72)

[森川嘉一郎] 非常に抽象化すると、現実の都市がウェブを模倣し始めているということでしょうか。(p.84)

加えて、私たちは「逃走」することもでない。なぜならばもはや「逃走」すべきものが無いのだから。(宇野、p.105)

もちろん、われわれ人間の意識は同時にそれほど多くの作業を行うことができないとも言われており、どこまでパラレル化が可能化については議論のあるところだろう。[略] ともあれ、人間側の特性はともかくとしても、システムの方では、多くの同時進行する世界を用意することができることは事実である。
さて、ここで言う世界とはコンピュータの中だけではない。テレイグジスタンスという技術は、VRのその先にロボットなどの現実世界のアクチュエータを配置し、現実世界における遍在を可能にしようという者である。原理的にはアクチュエータの置かれた数だけの同事態権ができることになる。(廣瀬通孝、p.124)

廣瀬の「二十一世紀と時間技術」からの引用だが、この部分を読んでいて「攻殻機動隊 SSS」を思い浮かべた。少佐がネットに潜り、他人の人格と並列を繰り返すうち、自分の気づかない別人格がネットで自律的に行動を始める、という設定だが、現実でもそれと同じようなことがすでに実現しつつあることが述べられている。

本書中にある面白そうな本:
 『趣都の誕生 萌える都市アキハバラ』森川嘉一郎、幻冬舎文庫

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