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『ビブリア古書堂の事件手帖』

『ビブリア古書堂の事件手帖―栞子さんと奇妙な客人たち』
三上延
メディアワークス文庫、2011/3/25、¥620

北鎌倉駅前にある古本屋ビブリア古書堂の店主篠川栞子と、ひょんなことから店員となった主人公五浦大輔を軸にした、古本を巡るいくつかの物語。

ライトノベルレーベルで出ているが、SF的設定はない。夏目漱石『それから』、小山清『落穂拾ひ・聖アンデルセン』、クジミン『論理学入門』、太宰治『晩年』の古本を巡るエピソードがつづられ、全体を通して一つのミステリーが解決される、という筋立てになっている。
北鎌倉という場所の設定からか、とても穏やかにストーリーは進み、最後の謎解きも、けっしてギスギスしたものになっていない。良作。

読んでみたい本:
『書物の出現』リュシアン・フェーヴル&アンリ=ジャン・マルタン、ちくま学芸文庫(p.103)
『落穂拾ひ・聖アンデルセン』小山清

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『万能鑑定士Qの事件簿VII』

『万能鑑定士Qの事件簿VII』
松岡圭祐
角川文庫、2010/12/25、¥540(L)

凛田莉子シリーズ第7弾。「プラダを着た悪魔」の設定をそのままなぞったような出版社に第二秘書として潜入し、社長の脱税疑惑を探る。同時に、金の延べ棒が合金に変わってしまうという逆錬金術の謎も同時に追う。この主題とは別に、「プラダ」の設定をぱくったことを自己言及的にさらにパロディにした、小説の盗作を題材にした事件が間に挟まれる。

内容が詰め込まれて、しかも入り組んでいるわりに、最後にしっかりまとまっているあたり、安心して読める。

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『R.O.D 4』

『R.O.D 4』
倉田英之
集英社スーパーダッシュ文庫、2001/7/25、¥ 540(L)

大英図書館特殊工作部は、ジェントルメンの指令によりグーテンベルグ・ペーパー移送作戦を展開。解読するために数百年幽閉されていたファウストを解放。大英図書館の敵、読仙社登場。

このあたりからいきなり話が大きくなってくる。大英図書館がヨーロッパベース、読仙社が東洋ベースなのに、日本が大英図書館系なのは少し疑問。まあ、難しく考える本じゃないしよしとする。

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「言霊の祈り」(日経新聞2011/3/24、p.32)

小池真理子が日経新聞の「文化」欄に書いた小論。
震災を受けて作家として考えたこと、被災地の友人からのメールに書かれていたこと。

なぜ私たちは本を読むのか、そのメールを読んで深く考えさせられる。
本、それも紙の本を読むことが人間の証となる瞬間がある。
人は本を読む。どんなときでも、そこに本がある限り。

震災後、やっと連絡がとれるようになった仙台の友から、私の携帯に長いメールがきた。想いの丈を吐き出すようなメールだった。 『電子書籍って何だろうね。停電してたら何の役にも立たないじゃない。やっと電気が通じたけど、テレビは怖くて、これ以上、観たくない。本が読みたい。紙に印刷されたものが読みたい。お願い、本屋さんをなくさないようにして!このうえ、私たちから本まで奪わないで!』 彼女は読書家で、常に本を読みあさっている。震災で出版関係の機能も滞っている、という私からのメールに対する返信だった。(日経新聞2011/3/24、p.32)

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『R.O.D 3』

『R.O.D 3』
倉田英之
集英社スーパーダッシュ文庫、2001/3/23、¥540(L)

読子・リードマンシリーズ第三弾。
大英図書館特殊工作部見習いウェンディイアハートの話。読子が無人島に流される話。

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『R.O.D 2』

『R.O.D 2』
倉田英之
集英社スーパーダッシュ文庫、2000/10/25、¥540(L)

読子・リードマンシリーズ第二弾。国内最大の書店バベルブックスがテロリストに乗っ取られる。

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『R.O.D』

『R.O.D』
倉田英之
集英社スーパーダッシュ文庫、2000/7/14、¥520(L)

大英図書館の秘密エージェントでザ・ペーパーと呼ばれる読子リードマンは、女子高生作家菫川ねねねの在籍する都立垣根沢高校に産休教員の代わりに赴任する。読子はねねねのファンで、一目会うためだけに同校に赴任したが、そこでねねねの誘拐事件に遭遇し、解決するために後を追う。

紙を武器に変えてた戦う特殊能力の持ち主で、ビブリオマニアという設定の主人公で、本への愛があふれている。読子がエージェントになった経緯の一端は明らかにされるが、まだ何かありそうな感じ。

本が好き。 死ぬほど好き。

ページをめくると漂ってくる、かぐわしいインクの香り。
試行錯誤を繰り返して高められた印刷技術は、まさに芸術。
純白の紙は、文字たちが美しく円舞曲を踊るステージ。
そしてそれらが織りなす、幾億もの物語。
叡知、欲望、苦悩、歓喜、憎悪、悲嘆、驚愕、人間の中にある全ての情熱が、そこには記されている。
手の中におさまる紙の束に、本物の宇宙をもしのぐ無限が眠っている。
私たちは、ページを開くだけで、その無限に飛びこんでいける。
心を包みこむ喜びの波。陶酔に身を委ねながらも、目は紙面から一時たりと離れない。話すことができない。
いつしか私はこの世界と別れ、紙とインクの中へと沈んで・・・。

本が好き。
大好き。(pp.10-11)


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Berkshire Hathaway Shareholder Letter 2010

Berkshire Hathaway Shareholder Letters 2010

2010年のハイライトはBurlington Northern Santa Fe (BNSF)の買収。
鉄道は環境に優しく、社会に利益をもたらす。。

When traffic travels by rail, society benefits.

2011年は80億ドルを資本支出(買収)に使う予定、うち20億ドルはアメリカ。
不確実性という言葉に惑わされるな。

The prophets of doom have overlooked the all-important factor that is certain: Human potential
is far from exhausted, and the American system for unleashing that potential – a system that has worked wonders for over two centuries despite frequent interruptions for recessions and even a Civil War – remains alive and effective.

Berkshireの本質的価値を構成する3要素
1. 株・債券・現金同等物への投資
2. 投資・保険引受以外の収益:Berkshireの株価は長期的に投資と収益に比例する。

Over time, you can expect our stock price to move in rough tandem with Berkshire’s investments and earnings. Market price and intrinsic value often follow very different paths – sometimes for extended periods – but eventually they meet.

3. 留保収益が将来生む利益(留保1ドルあたり収益)

Berkshireはプロセスより人を信じる。

Our trust is in people rather than process. A “hire well, manage little” code suits both them and me.

会社の文化は自己増殖する。常に注意を怠らないこと。

Cultures self-propagate. Winston Churchill once said, “You shape your houses and then they shape you.” That wisdom applies to businesses as well. Bureaucratic procedures beget more bureaucracy, and imperial corporate palaces induce imperious behavior. (As one wag put it, “You know you’re no longer CEO when you get in the back seat of your car and it doesn’t move.”) At Berkshire’s “World Headquarters” our annual rent is $270,212. Moreover, the home-office investment in furniture, art, Coke dispenser, lunch room, high-tech equipment – you name it – totals $301,363. As long as Charlie and I treat your money as if it were our own, Berkshire’s managers are likely to be careful with it as well.

「資産の半分を失ったのに、妻がまだ残っている」というジョークが流行った。

As one investor said in 2009: “This is worse than divorce. I’ve lost half my net worth – and I still have my wife.”

2010年にput売で$647milプレミアムを受け取り、反対売買で$425mil支払った。結果$222milの利益を実現し、かつ金利のかからない$647milを3年間使うことができる。

「純利益」はBerkshireには意味がない。

it is almost always meaningless at Berkshire.
Regardless of how our businesses might be doing, Charlie and I could – quite legally – cause net income in any given period to be almost any number we would like.

ブラックショールズ式はオプションに不適当な価格をつける。本当の価格はBS式より安いはず。

As a p.s., I can’t resist pointing out just how capricious reported net income can be. Had our equity puts had atermination date of June 30, 2010, we would have been required to pay $6.4 billion to our counterparties at that date. Security prices then generally rose in the next quarter, a move that brought the corresponding figure down to $5.8 billion on September 30th. Yet the Black-Scholes formula that we use in valuing these contracts required us to increase our balance-sheet liability during this period from $8.9 billion to $9.6 billion, a change that, after the effect of tax accruals, reduced our net income for the quarter by $455 million.
Both Charlie and I believe that Black-Scholes produces wildly inappropriate values when applied to long-dated options. We set out one absurd example in these pages two years ago. More tangibly, we put our money where our mouth was by entering into our equity put contracts. By doing so, we implicitly asserted that the Black-Scholes calculations used by our counterparties or their customers were faulty.
We continue, nevertheless, to use that formula in presenting our financial statements. Black-Scholes is the accepted standard for option valuation – almost all leading business schools teach it – and we would be accused of shoddy accounting if we deviated from it. Moreover, we would present our auditors with an insurmountable problem were we to do that: They have clients who are our counterparties and who use Black-Scholes values for the same contracts we hold. It would be impossible for our auditors to attest to the accuracy of both their values and ours were the two far apart.
Part of the appeal of Black-Scholes to auditors and regulators is that it produces a precise number. Charlie and I can’t supply one of those. We believe the true liability of our contracts to be far lower than that calculated by Black-Scholes, but we can’t come up with an exact figure – anymore than we can come up with a precise value for GEICO, BNSF, or for Berkshire Hathaway itself. Our inability to pinpoint a number doesn’t bother us: We would rather be approximately right than precisely wrong.

企業の生き残りのためには流動性を確保すること。

[My grandfather] Ernest never went to business school – he never in fact finished high school – but he understood the importance of liquidity as a condition for assured survival.

「みんなやっている」は理由にならない。

Sometimes your associates will say “Everybody else is doing it.” This rationale is almost always a bad one if it is the main justification for a business action. It is totally unacceptable when evaluating a moral decision. Whenever somebody offers that phrase as a rationale, in effect they are saying that they can’t come up with a good reason. If anyone gives this explanation, tell them to try using it with a reporter or a judge and see how far it gets them.

規則よりも、マネジメントがどのように振る舞うかが、事業の発展に大きく影響する。

Your attitude on such matters, expressed by behavior as well as words, will be the most important factor in how the culture of your business develops. Culture, more than rule books, determines how an organization behaves.

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『思想地図β vol.1 』

『思想地図β vol.1』
東浩紀、宇野常寛、速水健朗、北田暁大、鈴木 謙介、他
コンテクチュアズ、2010/12/21、¥2,415

東と北田の『東京から考える』の記憶があったので、気の迷いでつい買ったが、量が多くて消化不良。

巻頭特集で、非実在青少年を巡る東京都の規制問題について、猪瀬直樹、村上隆、東が対談する。猪瀬は「区別陳列しろといっているだけだ」と主張するが、それはすでに自主規制によって実現していて、それがこの問題の本質ではない。なぜ大手出版社が軒並み条例に反対しているのかといえば、東京都条例の条文が恣意的でどのようにでも拡大解釈できることが言論の自由に関わる問題で、それこそが本質のはずなのに、その点については東、村上も十分に追究しない。そのため、最後まで議論が噛み合わず、猪瀬にうまく逃げられている。その上、二人とも東京都の事業参加の誘いを嬉しそうに受けている。「それってどうなのよ」という感想。

第一特集は、ショッピングモーライゼーションと題して、ショッピングモールから消費社会の実情を考えるという企画。北田と東(とその他)の対談が読んでいて一番面白かった。色々な意味で北田と東は対照的で、自分は北田の考えの方がわかりやすかった。東は、なんだか読者に「リア充っぷり」を見せつけているだけの気がした。インチキな読み方だから、本当のところはどうなのかはわからないのだけれど。また、宇野常寛の「郊外文学論」は、面白く読んだ。

第二特集は、パターンサイエンスの話だが、まったくチンプンカンプンで、字面は追ったが頭には入らなかった。

[東] 2001年の9.11以降のセキュリティ化をどうとらえるかは、現代の思想にとって重要な問題です。そこで、いってしまえばリベラリズムはセキュリティの論理の前で敗北した。セキュリティが台頭してきてわかったのは、リベラリズムの枠の中で考えられてきた寛容、オープンネスが、現実にはいかに貧しく非力だったかと言うことです。空港がその象徴です。空港はユニバーサルな交通の場です。ポストモダン思想でもそのイメージは重視されていた。しかし実際にはそのような交通の場、柄谷行人さん風邪にいえば「交通空間」という場は、強いセキュリティの下でしか機能しない。9.11はまさにその点を突いた。だからいま、公共性にセキュリティを対置させることには意味がない。他者への全面的な寛容を主張します、しかしセキュリティには反対です、という思想はもう成立しない。(p.72)

[森川嘉一郎] 非常に抽象化すると、現実の都市がウェブを模倣し始めているということでしょうか。(p.84)

加えて、私たちは「逃走」することもでない。なぜならばもはや「逃走」すべきものが無いのだから。(宇野、p.105)

もちろん、われわれ人間の意識は同時にそれほど多くの作業を行うことができないとも言われており、どこまでパラレル化が可能化については議論のあるところだろう。[略] ともあれ、人間側の特性はともかくとしても、システムの方では、多くの同時進行する世界を用意することができることは事実である。
さて、ここで言う世界とはコンピュータの中だけではない。テレイグジスタンスという技術は、VRのその先にロボットなどの現実世界のアクチュエータを配置し、現実世界における遍在を可能にしようという者である。原理的にはアクチュエータの置かれた数だけの同事態権ができることになる。(廣瀬通孝、p.124)

廣瀬の「二十一世紀と時間技術」からの引用だが、この部分を読んでいて「攻殻機動隊 SSS」を思い浮かべた。少佐がネットに潜り、他人の人格と並列を繰り返すうち、自分の気づかない別人格がネットで自律的に行動を始める、という設定だが、現実でもそれと同じようなことがすでに実現しつつあることが述べられている。

本書中にある面白そうな本:
 『趣都の誕生 萌える都市アキハバラ』森川嘉一郎、幻冬舎文庫

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『グーグル秘録』

『グーグル秘録』
ケン・オーレッタ、土方 奈美 (翻訳)
文藝春秋、2010/5/14、¥1,995(L)

Avantiで推薦されていたので読んだ。
グーグルの創業から2009年までの動向を、IT業界のみならず伝統的TV・広告業界などの対応も交えて描いた本。世界の全てを検索することを目的とするグーグルは、世界を破壊的な速度で均質化する。その実態を明らかにすることで、IT業界のみならず、伝統メディアまで含めた世界がどのような道を歩むのかを分析する。

13週間にわたり、グーグル幹部・社員や関連業界のキーパーソンへ数多くのインタビューを重ね、客観的な事実とインタビュー内容をうまく織り交ぜて書かれている。著者の問題意識もさることながら、これだけの取材能力のあるアメリカのジャーナリズムの強さを感じる。

グーグル社員は自らが邪悪にならないことを社是としているために、社会が自分たちを攻撃するのを理解できない。グーグルのIPO後に「EPIC2014」が作られるのを見て、彼らがナイーブにショックを受けた(p.190)という事実は、彼らがいかに社会をわかっていないかを示している。始末に負えないのは、自分たちの影響力が、伝統的産業を破壊し、そこで生計を営んでいる人々の生活を破壊することに想像が及ばないということだ。それは、書籍と出版に関するブリンの「お気楽な認識」(p.192)を示すエピソードからも伺える。

新聞社の破綻が相次ぐことによって組織的につっこんだ取材が必要な報道は危機にさらされ、出版社は利益が圧迫されてまじめな作家を支えることができなくなるだろう。テレビ局はコストのかからないリアリティ・ショーやぶっつけ本番の生番組ばかりを流すようになり、ケーブルニュースは取材不足をキャスターのトークでおぎなうようになるだろう。"コミュニティ"や"プライバシー"といった言葉の定義が見直され、市民が情報を読んだり、加工したりする方法が変化し、伝統的なメディアのビジネスモデルの多くはグーグルのようなネット企業によって再構築されていく。こうしたことを考慮すると、グーグルという企業をきちんと知っておくことはきわめて重要だ。(p.12)

グーグラーは"すべて"を疑う。「創業者たちは常に『なぜ従来のやり方をしなくてはいけないんだ?"[従来の法外なテレビ広告費を顧客に使わせる]魔法をぶち壊し"にして何が悪い?』と問いかけていた」と[マリッサ]メイヤー[副社長]は語る。(p.25)

[元フットボールコーチのビル・] キャンベルは [1984年] アップル入社後、ほんの数ヶ月でセールスだけではなく、マーケティングも担当するようになった。そしてコンサルタントや [略] セールスマンの大半をお払い箱にした。その代わりには、大学を卒業したばかりの若者を採用した。半数は女性で、だれもが成功したいというハングリー誠伸にあふれていた。「コーチの経験から学んだのは、敵より小さくてスピードも遅ければ、おしまいということさ!」(p.132)

検索エンジンの名称はバックラブからグーグルに変えた。十の百乗を意味する、グーゴル(googol)のよくあるスペルミスだ。理由は「きわめてスケールの大きい検索エンジンを構築するという、僕らの目標にふさわしかったから」と[ペイジは] 説明する(実際にはグーゴルと命名したかったのだが、ドメインネームが既に取得されていた)。(p.67)

ラジーヴ・モトワニは2009年に事故死するまで、ブリンと最も親しかった元指導教官だ。モトワニは、二人について最も印象に残っているのは「なぜ?」という質問を繰り返したことだという。「子供のように『なぜ?』と繰り返すことによって、彼らは何度も私の考えを覆してきたんだ」(p.176)

[CEOとして成功する条件] については、元ヤフーCOO [略] ダン・ローゼンスウェイグが優れた指摘をしている。「CEOとして成功するには、エンジニアリング、起業家精神、企業文化、それに優れた経営と言った様々な要素のバランスが大事なんだ」。(pp.181-182)

予定されていた三回の取材のうち、二回目のことだった。[略] ブリンは私をからかった。「誰も本なんて買わないよ。ネットで公開しちゃえば?」。つまり、無料で出版しろというのだ。
「ネットで公開した方が、儲かるかも知れないよ。その方が多くの人に読まれるし、感動を与えられるじゃないか」
「無料の本という試みが成功する保証はないよ」と私は言った。かつてスティーヴン・キングが挑戦したが、見込みがないとあきらめてしまった。ブリンは、「そうかもね」と、ややきまり悪そうに認めた。
ーーグーグルのビジネスモデルから判断すると、君は作家が書籍の中に広告を掲載すれば、収入が入ると思っているのかい?でも出版社が前払い金を払ってくれなければ、作家はどうやって経費を賄うんだ?(私は本書の執筆にあたり、十三週間にわたってグーグル本社とニューヨークを往復し、レンタカーを借り、ホテルに宿泊し、ほぼ毎晩取材協力者の夕食代を負担した)。出版社がなかったら、誰が原稿の編集とそのコストを引き受けるの?内容を精査する弁護士の費用は?潜在的な読者に本の存在を知らせるためのマーケティング・スタッフはだれが雇うんだい?[略]
この会話はブリンとペイジ、そして二人が生み出したダイナミックなグーグルという会社について、ある重要な事実を示している。彼らの論理的な出発点は、伝統メディアのやり方はたいてい非効率的だ、だから変革しなければならない、ということなのだ。(pp.192-193)

[出版物の] 海賊版が横行することへの懸念を具体的に示そうと、[出版協会会長でランダムハウスの上級副社長だったリチャード・] サーノフは自分のアイフォンを取り出した。
「この小さな端末には、五万冊の書籍を簡単にダウンロードして蓄積できる。中規模の書店の在庫にほぼ匹敵する分量だよ」(p.194)

[CBSインタラクティブ社長兼CEOのクインシー・] スミスは [CBSのCEOレス・] ムーンベスの誘いを受ける直前に友人から聞いたたとえ話を引きながら、自分の役割をこう説明する。当時は友人の考えだったものが、今では彼自身の信念となっているようだ。
「伝統メディアは城壁の中に陣取っている。そんな彼らに、求めるものが見つかるという保証もないままに、城から走り出ろと言わないといけないんだ。矢が雨のように降り注ぐ中、川を渡り、湿地を越えて、丘を越えろ、と。『矢は当たらないから大丈夫』なんて請け合うことはできない。何の約束もできない。そんな選択を迫られたら、伝統メディアが場内にとどまるのは当然だ。でも最後にはどうなる?いずれ矢の代わりに石弓が飛んでくるようになって、命からがら逃げる羽目になるんだ」(pp.248-249)

「これほどウォール街と広告主から愛されながら、これほどメディア企業から嫌われる会社はほかにない」とスミスは語る。「メディア企業には、グーグルがプラットフォーム業者であることが分かっていない。そう、グーグルはプラットフォームなんだ。メディアがコンテンツから収益を得るのを助ける存在なんだ」(p.254)

2001年にCEOに就任したセメルが、ヤフーに優れた判断力と人材を持ち込んだのはまちがいない。ただ、やはりある疑問は残る。ヤフーが技術的に後れを取ったのは、CEOが技術を理解できなかったためではないか?スティーブ・ジョブスが解雇された後、アップルが技術的に後退したのも、そのためではないか?(p.307)

ペイジは、自分とブリンの役割は"大きなビジョン"を示すことだと語る。そしてインテルのゴードン・ムーアの提唱した"ムーアの法則"[略]の話を引き合いに出す。ムーアの法則は一見、技術的イノベーションに関する洞察のようでいて、実際には経営の在り方を示すものだというのだ。
「ムーアの法則は普遍的ルールのように思われがちだけど、本当は経営革新の話なんだ。『我々はコンピュータの半導体の性能を、十八か月ごとに倍増させる。それを実現する態勢を整えようじゃないか』という決意表明だ。インテルはその実現に数十億ドルを投資した。指針としてのムーアの法則がなければ、進化はそれほどのスピードで進まず、もっと場当たり的だったはずだ」
性能を二倍にするという経営者のプレッシャーが、それを確実なものとしたのだ。(p.309)

[iPodが出たての]頃、ウォークマンはともかくも携帯音楽プレーヤーとして支配的な地位を占めていた。私は当時CEOだった出井伸之に尋ねたことがある。
「アイポッドに脅威を感じるか?」
出井はまるでジャケットについた糸くずでも払うかのように否定した。
ーーソニーやデルはものづくりを知っている。アップルは知らない。1〜2年のうちに、アップルは音楽産業から手を引くはずだ、と。(p.348)

モルガン・スタンレーのメリー・ミーカー[Mary Meeker]は2008年12月のレポートで、伝統メディアを震撼させるようなデータを示した。「噛み合わないメディア消費と広告支出」と題した図では、広告支出の配分が、消費者のメディア利用の状況と一致していないことを浮き彫りにした。
例えばメディア利用のうち、消費者が新聞を読むのに使う時間は7%だが、広告支出の20%が新聞に使われている。対照的にインターネットには25%の時間が使われているが、広告支出に占める割合は8%にすぎない。
広告はある時点で、恐らく劇的に、伝統メディアから離れていくだろう。米国にとって1930年代以来最悪の不況を割り引くかはともかく、変化は猛烈な勢いで伝統メディアに押し寄せている。(p.396)

[Neil Postmanは"Amusing Ourselves to Death"で] 人間にとって最も恐ろしい脅威は、[略] オルダス・ハクスリーの『すばらしい新世界』に描かれていると指摘した。[略]
「教養のある人々ですら誤解しているが、ハクスリーとオーウェルは同じ脅威を予言しているのではない。オーウェルは我々が外部からの強制的な抑圧に屈すると警告した。だがハクスリーは、人々から自立性や成熟や歴史を奪うのに、"ビッグブラザー"など必要ないと考えた。人々は抑圧を喜ぶようになり、考える能力を奪うような技術をありがたがるようになるという。オーウェルは我々から情報を奪う者を恐れた。ハクスリーはあまりにも多くの情報を与えることで、我々を受動的で自己中心的にしてしまう者を恐れたのだ」(p.407)

彼ら[グーグル社幹部]の協力なくして、この物語を執筆することはできなかっただろう。私は何週間にもわたってマウンテンビューのグーグル・キャンパスに滞在し、CEOエリック・シュミットに対する11回のインタビューを含めて、合計150回のグーグル社員へのインタビューを行った。[略] わずか一人の副社長を除き、サーゲイ・ブリン、ラリー・ペイジのほかグーグル取締役など、取材を希望した相手にはほぼ全員、複数回インタビューをする機会を得た。古参社員の一人であるデビッド・クレーンは、上司の許可を得てほとんどのインタビューを設定し、同席したが、途中で妨害したり口を挟んだりするようなことは一度もなかった。[略] 出版前に本書に目を通したグーグル社員はいない。すべてを明らかにするリスクを進んで受け入れてくれたグーグルに感謝している。またグーグル関係者以外でインタビューに応じてくれた、約150人の方々にも感謝している。その多くは伝統メディアの幹部だ。(pp.511-512)

本書中にある面白そうな本:
 "Amusing Ourselves to Death" Neil Postman
 『伽藍とバザール』エリック・レイモンド、光芒社、1999

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『謎解きはディナーのあとで』

『謎解きはディナーのあとで』
東川篤哉
小学館、2010/9/2、¥1,575

本屋大賞候補作ということで、平積みになっていたのと、話題作だと聞いたので買ってみた。

国立署の刑事宝生麗子は、実は大財閥宝生グループのお嬢様。彼女が事件の謎に悩んでつい話しかけるのは専属執事で運転手の影山。影山は麗子から事件の概要を聞いただけで謎を解いてしまう。

という設定で、謎解き自体は複雑ではなく、現実の世界では捜査をしっかりすれば謎解きの不要な事件が並ぶのでリアリティはない。

本書はむしろお嬢様と執事の掛け合いを楽しむ小説で、それにノれれば、違和感なく読める。
宣伝文句の「この程度の真相がお判りにならないとは、お嬢様はアホでいらっしゃいますか」という執事のセリフが本書の特徴をよく表している。


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『ビジネスマンのための「読書力」養成講座』

『ビジネスマンのための「読書力」養成講座』
小宮一慶
ディスカヴァー・トゥエンティワン、2008/9/15、¥1,050(BO¥500)

「小宮流頭をよくする読書法」と副題のついた、読書法の本。目的別に読書の仕方を5つに分け、それぞれの読み方を解説する。中でも、熟読を強調しているところが特徴的。

1. 速読:求める情報を素早く探すために、要点を素早く把握する。
2. 通読:楽しみのためにするレベル1の通読
3. 通読:論点を整理し、考えながら読んでいくレベル2の通読。線を引いたりするが、レファレンスなどを参照しながらではなく、その本で完結する読み方。
4. 熟読:ほかの本を参照したり、ネットで関連情報をとりながら丁寧に読む。これが頭を鍛える読書法。
5. 重読(再読):自己啓発的な本を、何度も読み返す。

熟読が重要なことはわかるが、なかなかそれだけの時間を確保するのが難しく、実戦は難しいと感じる。ただ、他書を参照しながら読むというのは、意識的にはしていなかったので、今後の参考になった。

たとえば、わたしはビジネス書を読む際には、「お客さま第一」という視点をベースにして読んでいます。[略 ]わたしは企業を発展させる考え方の基本は「お客さま第一」だと信じています。[略] しかしこれはあくまでも仮説です。その「お客さま第一」という仮説に照らして、本の内容がそれに合っているかをチェックしながら読んでいくのです。[略] それ以外にも、成功している会社は、「キャッシュフロー経営」を行っているという仮説も持っています。成功するリーダーについては「指揮官先頭」の仮説を持っています。[略] もちろん、これらのほかにも、多くの仮説を持っています。ビジネス書を読むときにはそうした自分の仮説が正しいのかどうか、自分の仮説と照らし合わせて、著者の言わんとしていることをチェックしています。(pp.78-79)

自分で仮説を持ってそれを検証する読み方をすることで、自分の知識や姿勢の修正を常に図ることが、独善的にならないために重要だということを指摘している。

[通読レベル2で読む本で] わたしがいまもバイブルとしているのが、『抄訳マネジメント』(ダイヤモンド社 1975)です。[略] この抄訳をさらに簡単にした『エッセンシャル版 マネジメント』というのもありますが、わたしは『抄訳』のほうをお勧めします。[略] わたしの場合は、先にもお話ししたように、「お客さま第一」などの仮説を持って読みます。さらには、「IT」、「規制緩和」、「少子高齢化(人口動態の変化)」、「知識社会」などの観点からの土ラッカーの社会状況に対する洞察を参考にしています。(pp.116-117)

著者はドラッカーがマクロミクロ双方を同時に捉えていると述べ、読者もその双方についてのインプットを持たないと、ドラッカーの本を理解できないことを指摘している。

経営コンサルタントとして独立したとき、ひとつ心に決めたのが、「成功したければ成功者に学ぶ」ということでした。[略] 失敗の反対は必ずしも成功ではない、ということに、あるとき、気づいたのです。「失敗の反対は、別の失敗」という例をたくさん見てきたのです (企業を多く見ていると、ダメな企業は、経営者の姿勢、戦略などさまざまな理由でダメですが、成功している企業は、一様に、お客さま、従業員さん、お金を、この順番で大切にしているようにわたしには思えます)。つまり、失敗にはいろいろなパターンがありますが、成功はワンパターンです。[略] だったら、成功者の本質をストレートに知ったほうが早い。そう思ったわけです。(p.119)

著者の成功に対する考え方はシンプルでわかりやすい。そして、成功を学ぶために著者は、『抄訳マネジメント』と松下幸之助の『道をひらく』『実戦経営哲学』を重読したことを述べている。

自然科学といのは、自然界に存在する「絶対の法則を見つけ出そうとするということです。[略] それに対して、社会科学というのは、人の営みを対象にしますから、実は「絶対」なんてありえないわけです。[社会科学が求めるのは] 「かくあるべし」という「規範」です。多くの人が幸せになるためにはどうすればいいかという規範を求めるのが社会科学です。(p.122)

どうも、世の中全般に、「むずかしいのはいけないことだ」というような風潮があるように思います。[略] 一般の人にはそれでよいかもしれませんが、やはりビジネスリーダーや政治のリーダーなどを目指す人たちは、学者ではなくても、ある一定レベルを読みこなす、それによってある一定レベルの知的ベースや論理的思考力を持つ努力をするべきだと思います。(pp.148-149)

熟読では、必ずしも、本の最初から最後まで全部をよまなくてもいい。[略]
知りたいことだけをきっちり論理立てて読む。[略]
多くのことと関連づけながら読んでいく ということです。まとめますと、
1. 自分の専門分野や興味のある分野のものを、必要なところだけ、
2. 多くのことと関連づけながら、きっちり論理立てて読んでいく。
これが、頭をよくする最強の読書法「熟読」です。(pp.159-160)

わたしの経験では、こうした熟読レベルで、ふさわしい本を一冊読み込めば、
おおよそ30時間で、だいたいのことがある一定レベル(専門家レベル)に達します。(p.172)

著者は、何か新しいことを学ぼうとするときに、まず、その分野の第一人者が書いた入門書を通読で読み、少し難しい専門書を熟読した後、「専門書が理解できたら、また入門書を読」む(p.174) 読書法を勧めている。入門書が省略した難しいところを、行間にそれを読む込むことができるようになるからだという。これは、今まで試みたことがないので、機会があれば試してみたい。

重読は、頭をというより心を磨くほん。いわば座右の書ですから、自宅の机において、心が欲したときにいつでも開きます。夜寝る前に5分くらい毎晩読みます。(p.205)

なんというか、熟読した本というのは、わたしにとっては成果物みたいなものなのです。自分の本につくり上げるというか、読み上げるという意識があるのです。
ですから、丁寧に線を引くし、色も、もちろん三色ボールペンで、重要度の度合いというより、そのときの感性で、[略] 引いていきます。(p.207)

読書力を高めるうえで最後のヒントは、書くことです。書くためには読むことが必要ですが、書くことによって、また、読む力が格段に高まります。(p.222)

インプットは、アウトプットをともなうことによって、飛躍的に上がります。間違いありません。(p.224)

著者推薦書のうち面白そうなもの:
通読レベル2 
 『戦略の本質』
 『会計学入門』(桜井久勝、日経文庫版、2006)
熟読:
 『菜根譚』(守屋洋訳、ディスカバー21、2007)
 『道をひらく』(松下幸之助)
 『論語の活字』(安岡正篤、プレジデント社、1987)

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『成功したければ、自分の写真を机の上に飾れ!』

『成功したければ、自分の写真を机の上に飾れ!―あなたが「成功体質」になれない本当の理由』
植西聰
実業之日本社、2008/4/30、¥1,470

タイトルに釣られて買って、そのまま3年近く読まなかった本。タイトルの意味は、自分の写真を眺めながら仕事をしたくないようでは成功しない、自分を肯定して、写真を眺めながら仕事をするようになろう、ということで、ポジティブシンキング系の内容。本書には「宇宙銀行に徳を積む」という表現が出てくるが、「情けは人のためならず」を言い換えたもので、特に目新しさはない。
よくある自己啓発本の一つではあるが、人間として当たり前のことを書いてあるので、今までの自分の生活を振り返る一助にはなった。

あなたがもし、自分のことが大嫌いで、「自分の写真をいつも眺めながら仕事なんてしたくない」とおっしゃるなら、きっと成功は難しいでしょう。自分のこれまでの生き方を受け入れることができず、過去の写真を見ると気持ちが暗くなるような人では、到底成功を手にすることはできません。[略] 成功している人たちは、自分自身や、自分の人生に対する考え方について、共通の考え方を持っています。(p.004)

「成功者になる資格は誰にでもあるけれど、その資格を生かして成果を手にするためには、それ相応の覚悟と努力が必要」ということです。[略] あなた自身が、毎日の過ごし方、心の持ち方、言葉遣い、他人に対する態度など、いろいろな要素を変えていくことができれば、やがて成功は訪れます。[略] 成功したいなら、そういう地味な努力をコツコツと続けて、自分を成長させる必要があるのです。(pp.013-014)

成功したかったら、人に喜ばれることをしましょう。望みをかなえたいなら、まずは宇宙銀行に徳をたくさん積み立てましょう。(p.017)

人間は誰でも、自分の話を聞いてほしいと思う者です。そして、話している途中で「そうだね」、「よかったね」と、共感したり、認めてもらえたりすると、とても嬉しい気持ちになります。ですから、誰かと話すときは、きちんと耳を傾けて、共感してあげましょう。(p.075)

[自慢話ばかりする人は]、常に周りの人に自分のすごさをアピールしておかないと自尊心が満たされないので、自慢話を繰り返すのです。周りの人に、「すごいですね」と言ってもらうことでしか、自分の価値を見出せない劣等感を持っている人、つまり自己評価が低い人なのです。[略] 「能ある鷹は爪を隠す」という諺があるように、本当に自信がある人というのは、自慢をしないものです。実際の成功者たちは謙虚な人が多いのです。(pp.078-079)

成功者の机の上には、友達と一緒に微笑む自分や、家族とくつろいでいる自分の写真が飾られていることがよくあります。それは、自分と、自分の周りにいる人たちが好きだからできることです。[略] あなたも、机の上に、最高に楽しそうな笑顔の自分の写真を飾りましょう。その写真を見るたびに、嬉しくなるような写真です。そうすれば、あなたの心には、どんどんプラスのエネルギーが増えていくのです。(p.099)

お金がほしいなら、まずは、今あるお金に感謝することから始めましょう。(p.144)

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『日経新聞の数字がわかる本 』

『日経新聞の数字がわかる本 「景気指標」から経済が見える』
小宮一慶
日経BP社、2009/8/6、¥1,575

著者の「数字力養成講座」によって、経済統計の定点観測続けることの重要性に気づかされたが、今ひとつ日経新聞の景気指標欄に出てくる数字の意味がわからなかったこともあり、購入。

本書は、タイトル通り、日経新聞景気指標欄の読み方を解説している。数字個々の意味をつかむこともさることながら、それらを関連づけて自分なりの仮説を持って経済を見ることの重要性を改めて教えられた。

この数字どうしや記事と関連づけて読むという読み方を長く続けてきたおかがで、私は、経済だけでなく、本職(経営コンサルタント)としての会計の数字の読み方も強くなりました。(数字と減少を見るという点では、経済も会計も同じで、どちらも継続的な訓練でその能力は格段に上がると思っています。[略])(p.004)

本書の目的は「景気指標」を読み解くだけではありません。それを通じて経済を読み解く力を高めることです。[略] 数字が本当に読めるようになれば、経済も企業も生き物のように見えてくるのです。(p.005)

粗鋼生産高は、年間でだいたい1億トンが損益分岐点だと私は思っています。鉄のような装置産業は、損益分岐点を越えると、とても儲かります。(p.058)

広告費は削られるのも早いですが、回復するのも早くて、企業の業績が上向きはじめると比較的早い段階で広告予算が増え始めます。過去のデータを見る限り、名目GDPとほぼパラレルで動いてきました。名目GDPが回復しはじめると広告扱い高も増えはじめるというのが、私の見方です。(p.060)

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『偏愛マップ』

『偏愛マップ―キラいな人がいなくなる コミュニケーション・メソッド』
斎藤孝
NTT出版、2004/3/27、¥900(BO¥105)

一時期流行ったのを覚えていて、ブックオフで¥105になったら読んでみようと思っていた。

「「偏愛マップ」とは、その名の通り「偏って愛するもの」を一枚の紙に書き込んだマップ」(p.6)のことで、これを使えば、初対面でも苦手な相手でも会話がはずむ、というコミュニケーションツールだという。
著者によればこのマップに書くのは、一般的に好きなものではなく、「偏って愛するもの」「ホントに好きなもの」でなければならない。そして、自分の偏愛マップを手にして話をすれば、初対面の相手とも共通の趣味や話題を見つけるのが容易で、話がはずむ、という仕掛けである。

見たところ、偏愛マップは、趣味をキーワードに展開したマインドマップのバリエーションのようで、特に目新しさは感じなかった。また、著者は自分で書くことが重要と言っている一方で、岡本太郎や向田邦子の偏愛マップを描いてみせる。彼らの人となりを一目で理解する図を描くのに便利だということはわかるが、それが彼らの偏愛かどうかは、著者自身の定義により、彼ら自身にしかわからないことだから、偏愛マップとは呼べないだろう。

本書の内容は最初の7ページに書き尽くされている。

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『電子出版の構図』

『電子出版の構図―実体のない書物の行方』
植村八潮
印刷学会出版部、2010/7/9、¥2,100(L)

以前、電子書籍に関する著者の講演を聞いたので読んでみた。
業界雑誌である『印刷雑誌』に1999年から2010年まで掲載された記事をまとめたもので、本書用に書き下ろされたものではないため、タイトルに沿って一貫した構成にはなっていない。従って、「構図」とはいいながら、現在の電子出版を巡る状況の俯瞰図といったものではなく、この10年間の電子書籍・電子出版の歴史といった趣になっている。ただ、著者自身出版編集者でなので、電子書籍の特性に対する深い洞察は、大変参考になった。

著者の最も重要な主張は、ユーザーはパッケージに対価を支払うのであって、コンテンツには支払わない、というものだ。この考えに従えば、電子書籍のコンテンツでビジネスをするのは難しいということになる。実際、アマゾンは電子書籍売上よりもキンドル売上によって利益を上げていること(p.267)が指摘される。

EPIC2014についての記事があり(p.158)、2005年頃だったのか、と久しぶりに思い出した。当時の予測はグーグルゾンだったが、今となってはfacebookやtwitterなどむしろビッグブラザーから離れる方向に時代が進んでいるのを見ると、未来予測の難しさを実証していると言えるだろう。

新しいメディアが登場すると必ず世代区分が生まれる。物心ついたときに、そのメディアがあったか、否かである。2歳半の子供にとってクレヨンを使うのとマウスのドローイングに違いはない。一方、評価や批判から入るのが旧世代である。インターネットに対して、ちょっとヒステリックな批判と賛同を耳にするが、大概が未知のものに出会ったときの旧世代の「興奮した」反応である。90年代のインターネットは、きっと50年代のテレビがもたらした興奮と混乱に匹敵するのだろう。(p.28)

本の値段は、よく「紙刷り製本」と言われる。文字通り、紙代、組版印刷代、製本代を印刷部数で割った値段が基本である。『情報様式論』の中で、マーク・ポスターは「消費者達は書籍の製造に対して支払っていたのであって、公共図書館でただで利用できるその中の情報には支払わない」「情報はそれが出荷されるパッケージと分離できないものであり、このパッケージに価格票がついていたのである」(岩波書店)と書いている。
作り手はパッケージングの費用から価格設定し、読者もパッケージにお金を払っている。[略] 読書体験に値段が付けられないように、コンテンツに値段はつかないのである。(p.50)

一方、『コンピュータ音楽』の訳者たちは、高くてもいいからデジタルデータがほしいと言う。彼らは時に、「所有する本」ではなく、「使用する情報」を専門書に求めているのである。電子書籍に向いた分野と言える。(p.66)

鉛活字を複雑に組み上げ、長短様々なインテルがその間を正確に支えている。整然と並ぶ活字群を見ていると、手の技だけでなく、長い年月の間に築かれた活字組版の技術に感嘆する。最後に凧糸で縛り上げ印刷機で紙にインクが転写されると、紙の上に残るのは文字が伝える世界だけである。もはや読者の前には重厚な鉛活字も複雑な組版技術もない。読むときは意識しないと書いたが、だからこそ完成度の高い技術であると言ってよい。
コンピュータ用語にトランスペアレントという言葉がある。ソフトやハードの存在が利用者から見えない、気づかれない、つまり文字通り透明になっているという意味である。[略] 技術の完成度が高いため存在が気づかれない、とも言える。(pp.74-75)

時計のデジタル化で先行した日本は世界市場を制覇し、勢い余って行き着いたところが低価格化という不毛の地であった。量を追わなかったヨーロッパの時計メーカーが今、脚光を浴びている。メジャーになって苦しむのか、希少性でマニアの満足の中に生きるのか。どちらが正解かわからない。ただ一つ言えるのは、デジタル化は進化ではなく淘汰なのだ。(pp.108-109)

一頃、騒がれたマルチメディアの先にやってきたのは文字の時代だったのである。では、その文字文化は、印刷時代と変わらなかったのか。
ノーだ。インターネットはギャランティ型ではなく、ベストエフォート型であると言われる。[略] 重要なのはもはや信頼性ではない。インタラクティブであること、品質よりもオンデマンドであること。読者は同時に執筆者であり、参加できるメディアが人気を得ているのだ。[略]
文字の信頼性を保証するのは紙に残された領域なのだ。ただし、信頼性が一番重要なものではないくなっていく時代がきている。(p.177)

内藤みかさんに「ケータイ小説を書く際に意識していること」をメールで質問したところ、「読者との心理的距離を非常に近くにおいてます。親友のようなつもりで書いています。メールに類似したノリを意識しています」と返事をくれた。親友へ携帯メールを出すように書く、というのである。(p.196)

日本の複写権管理団体の徴収額は1.5億円にすぎない。一方、欧米では著作権集中処理機構における収入源としては、教育機関が高い比率を占めている。日本複写権センターが行った海外調査によると、英国105億円(新聞は別に37億円)、仏国41億円、米国120億円、人口わずか464万人のノルウェーでも38億円になる。最も古い歴史を持つ出版社オックスブリッジの国、英国では105億円のうち、20.5億円を初等・中等教育機関、26億円を高等教育機関の学校予算で支払っている。
日本は読者を保護するためでなく、経済団体の強い意向により、著作権使用料がきわめて低く抑えられている。欧米では、よりよい教科書・教材製作のための執筆費や編集費が豊富な著作権使用料によって支えられている。結果的に有効な権利処理システムが構築され、現場では他人のよい著作物は積極的に利用されている。そこには著作権を認め対価を支払うことで、新たな著作活動が行われるという、よい循環がある。(pp.200-201)

米国出版業界の現状として、書籍返品コストによる経営圧迫があり、過去の出版物の在庫増も負担となっている。そこに加えて、アマゾンやバーンズ&ノーブルなど大手書店による書籍流通の寡占化が脅威となってきている。日本と異なり米国は大手の取次がなく、版元と書店の直接取引が多い。このため卸正味が個別交渉となり、勢い多量部数を買い付ける大手書店が優位となっている。しかも米国では再販制度がないこともあり、書籍の価格決定権が書店に握られつつあるのだ。そこで電子書籍ならば取次や書店を飛び越して、出版社と読者を直接結ぶことが期待されるのである。(pp.215-216)

もちろんデジタル革命の進展によって印刷出版物の相対的価値はますます下がるし、その市場規模も宿命的にシュリンクしていくだろう。その際、出版の世界で守るべきものは会社組織や産業ではなく、表現の自由であり、人々の知る権利を守る活動なのだ。この活動に関わるからこそ、出版社の存在意義がある。(pp.217-218)

ウェブ情報の多くはリンクによって他のWebサイトに飛んでいくだけである。ひとたび情報の出所を求めてリンクをたどり続けても、情報の自己組織化の海で溺れるだけである。情報源の総量が変わらないのに、引用とリンクによる情報の自己増殖で消費量が増えているだけではないか。水増しされた情報の洪水に飲み込まれているような恐怖である。情報量は増えていない。いささか恐ろしいが現実かもしれない。
本を読むことが知恵や知識に転換できた時代と比較すれば、Web情報が知恵や知識として転換できるシステムを私たちは持ち得ていないのだ。そしてグーグル検索は、ウェブ情報が本来的に持つ自己増殖システムの中心装置であって、決して知識として私たちに届けてくれる装置ではない。(pp.265-266)

キンドルの累計販売台数は300万台といわれている。段階的に値下げしてきたが、現在の販売価格259ドルから類推すると750億円程度の売上である。これを自社サイトで直販しているのである。一方、アマゾンの電子書籍売上は150億円程度である。概算にすぎないが、電子書籍の5倍の売上をキンドル販売で手に入れているのである。電子書籍を「釣り餌」に、儲けているのだ。(pp.267-268)

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